次期日本銀行総裁に誰がもっともふさわしいか?

 
市場の注目を一身に集める日銀総裁・副総裁人事が佳境を迎えつつある。一昨日(2月20日)読売新聞では「日銀総裁人事大詰め…4氏に絞り込みか」として、〈1〉岩田一政・日本経済研究センター理事長〈2〉岩田規久男・学習院大教授〈3〉黒田東彦・アジア開発銀行総裁〈4〉伊藤隆敏・東大教授の名前が挙がっている。

更に、昨日(2月21日)毎日新聞では、「日銀総裁後任:岩田一、黒田氏で調整 岩田規氏推す声も」と、3名が候補となっていることが伝えられている。そして、首相が訪米から帰国する来週以降に、日銀総裁・副総裁の人事が決まる模様である。

これらの報道が正しいか筆者には分からないが、仮に読売・毎日新聞の取材どおりならば、4名の候補者に絞られたと言えるだろう。とすれば、これは何を意味するのだろうか?これら4名は、いずれも安倍首相のブレーンである浜田宏一イェール大学名誉教授が著書「アメリカは日本経済の復活を知っている」において、日銀総裁候補として挙げられていた方々である。

これまでの日銀総裁人事は、霞ヶ関・本石町・政治の力学で決まっていた。そうした状況が変わり、金融政策と本来関係がない力学ではなく、安倍首相が信頼する経済専門家のアドバイスに従って、深刻な問題であるデフレを克服するために誰がふさわしいか、という観点から日銀総裁が選ばれるようになった、ということである。

FRBやECBの総裁をみれば、政治力学ではなく、経済学の知見に優れた方が中央銀行総裁になることは世界の常識だが、日本でもそうした真っ当な総裁選びが行われるようになったということかもしれない。金融政策の失敗が繰り返されたため停滞を余儀なくされていた日本経済が復活に転じることが、本当に期待できるようになったと言える。

それでは、これらの4名の候補者の中で、誰が日銀総裁に最もふさわしいだろうか?これらの方々は、若輩者の筆者と比べようもないくらい、経済学や金融政策について優れた知見・学術的な業績をお持ちである。それを重々承知しているが、敢えてこれらの方々の中で、誰が日銀総裁にふさわしいのか、筆者の私見を述べたいと思う。

実は2月15日レポートでも紹介しているのだが、筆者は、この4名の中では、岩田規久男氏が最もふさわしいと考えている。前回レポートで紹介したが、このように考えているのは、時事通信社によるアンケートに答えた市場関係者24名の中で、筆者のみだったようだ。

中央銀行総裁の一番の責任は、物価の安定の実現を通じて、国民の経済的な豊かさを高めることである。しかし、日本は20年近くにわたりデフレという異常な状況が続いており、「物価の番人」である日本銀行が果たすべき責任は果たされなかった。

もちろん、金融政策運営によって物価や経済活動を望ましい姿に戻すのは簡単ではない。経済学の専門的知見に加えて、経済動向を正確に理解し将来をどう見通すかが何より必要になってくる。これまで、日本銀行による2000年、2006年の早すぎる金融引き締め政策は、当時の日本銀行総裁が、デフレ圧力の強さや経済見通しを見誤ったことにあった。

そう考えると、バブル崩壊直後から日本銀行の政策判断の過ちを厳しく批判し続けていた岩田規久男氏がふさわしい、ということになる。1990年代初頭の日本銀行の翁氏との間でマネーサプライ論争が行われていた時、岩田規久男氏は、1992年のマネーサプライの急減をみて、「戦前の大恐慌が訪れるかもしれない」という危機感を抱いたという。
 
もちろん、大恐慌ほど酷い状況とはならなかったが、日本が1990年代半ばから20年近くのデフレと経済停滞に苦しむリスクについて、最も早く見抜いていたのが岩田規久男氏だったことは明らかである。日本銀行が、岩田氏の意見を少しでも取り入れ、その後米FRBなどが日本の失敗を教訓に行った大胆な金融緩和政策を行っていれば、日本がデフレに陥ることを防ぐことができただろう。

バーナンキ連銀議長やドラギECB総裁などと同様に、中央銀行総裁にとって必要なことは、メディアが垂れ流す意味不明な評価基準である組織運営能力などではなく、経済学の知見そして経済・インフレ動向の先行きを、官僚に頼らずしっかり見極める判断力、そして経済の状況変化に対してどう金融政策を運営するかを考える知見である。

安倍首相は、「これまでと違う次元での大胆な金融緩和策」と述べている。アベノミクスを成功させるには、しっかりと金融緩和政策を実現する能力・胆力が求められる。経済学の世界から、これまでの日本銀行の政策について長年批判を貫き、日本経済の正常化のために金融緩和強化を訴えていた岩田規久男氏に、アベノミクスにおける正しい金融政策運営の舵取りを任せることができるのではないか。

日本経済の将来を考え、誰が次期日銀総裁にふさわしいか。日本銀行などの官僚組織の影響下にあるメディアが垂れ流す駄論に騙されず、投資家・一国民として真剣に考えましょう。