「黒田総裁、岩田規副総裁」でマーケットはどう動くか

 
本日(2月25日)の日経新聞1面トップでは「日銀総裁に黒田氏、副総裁に岩田規氏 政府提示へ 副総裁もう一人は中曽氏」と報じられている。この週末に、朝日新聞、産経新聞で、黒田総裁を軸に人事案が調整されているとの記事が先行して報じられており、今朝、日経新聞も副総裁まで踏み込んで報じた格好である。

日経新聞だけではなく、共同通信やNHKも同様の報道を行っており、それなりの取材を踏まえて、これらの報道が相次いでいるのだろう。もちろん、安倍首相の真意は分からないが、マーケットは、黒田総裁、岩田規副総裁、の新日銀体制誕生を想定して動くと予想される。

これまでのレポートでもお伝えしてきたが、多くの市場参加者は、武藤氏、岩田一政氏のいずれかが日銀総裁に望ましく、それを軸とした新日銀執行部を想定していた。ただ、先週末から、黒田総裁説が一部メディアで伝えられ、更には首相のブレーンであるイェール大学浜田宏一氏が推薦していない武藤氏が総裁候補から外れる、と事態は変わっていた。

黒田総裁はある程度は想定されていたし、既にサプライズとは言えないだろう。ただ、黒田氏は直前に総裁候補の最右翼として登場したわけで、海外の投資家などは黒田氏の経歴・考え方をあまり認識していないとみられる。同じ財務省出身者である武藤氏と異なり、黒田氏が日本銀行のこれまでの政策を強く批判していたことは、まだ十分知られていないだろう。

そして、市場にとって驚き(筆者にとっては一安心)は、岩田規久男氏が副総裁としてボードメンバーに入る可能性が高まったことである。日銀の金融政策を長年ウォッチしてきた筆者は、岩田規氏が孤軍奮闘の状況で、バブル崩壊直後から日本銀行を批判してきたことを承知しているが、日本銀行のお気に入りを総裁・副総裁候補と伝える外資系証券のエコノミストなどは、海外の投資家に対して、岩田規久男氏を候補者としてほとんど挙げていなかったと思われる。せいぜい「大穴」扱いだっただろう。

それよりも、武藤氏でなければ、岩田一政氏が、次期日銀総裁候補の本命と説明していたはずである。実際には、既に副総裁を経験している岩田一政氏と、岩田規久男氏では、同じ「イワタ」でも金融政策に対する考え方は相当異なるが、海外の投資家(日本の投資家もそうかもしれないが)は「もう一人のイワタって誰?」という感じだろうか。

もちろん、先週のレポートでも紹介したが、筆者は、岩田規久男氏が日銀総裁にもっともふさわしいと考えており、岩田規総裁がベストの布陣である。ただ、黒田氏も、これまでの日本銀行の金融政策の失政にかなり批判的である。米FRBの金融政策がスタンダードになっている海外投資家にとって、黒田氏、岩田規氏の金融政策の考えは「標準的」であり、日本銀行もようやく「普通の中央銀行」に一歩近づいた、と認識されるだろう。

もちろん、まだ観測報道の段階だし、この人事案が本当だとしても国会ですんなりと任命されるかまだ分からない(5年前の経緯もある)。また、「黒田+岩田規」の体制になっても、本当にFRBと同等あるいはそれ以上の金融緩和政策が実現されるか不透明な部分もある(もう一人の副総裁が重要になる)。つまり、実際にデフレ脱却に明確に強くコミットして、金融緩和が強化されなければアベノミクスは頓挫するリスクがあるということだ。

ただとりあえずは、アベノミクスが第一歩を踏み出す準備が整いつつある、ことをマーケットは好感するだろう。