3月の日銀会合は材料にならず、海外要因に依存か

緩やかなペースのドル高・円安を継続見通し
3月1日が発動期限となる歳出強制削減問題を巡る米政府と議会指導者の協議は不調に終わり、土壇場での発動回避という楽観的なシナリオがもろくも崩れさった。合計850億ドルの歳出強制削減は、2日から10月1日にかけての7ヶ月間をかけて実行に移されることになる。

ただ、マーケットでは昨年末にみられたような危機感は乏しい。米株式相場は年初来高値水準を維持しており、特に投資家のリスク回避の動きは本格化していない。CBOEのボラティリティ指数(恐怖指数)をみても、イタリアの総選挙直後の2月25日には一時19.28に達し、昨年12月31日以来の高値を更新した。しかし、週末の3月1日終値は15.36に留まっており、一定の警戒感こそあるものの、リスク選好性の流れそのものに修正を迫るレベルには至っていないことが窺える。

その背景にあるのは、やはり景気の底固さになるだろう。国際通貨基金(IMF)のマレー報道官は2月28日、米国の歳出強制削減が完全に実施された場合には、4月の「世界経済見通し」で米国と世界全体の成長率予想を下方修正すると指摘している。

しかし、3月1日に発表された2月ISM製造業指数が1年8ヶ月ぶりの高水準に達したことがシンボリックだが、経済指標は今の所悪くない。歳出強制削減が実態経済に影響を及ぼし始めるには数週間から1ヶ月程度の時間的な余裕が残されていることもあり、現段階ではリスク・オンの地合に修正を迫るには至っていない。

次は、3月27日で失効する暫定予算案の取り扱いが焦点になるが、共和党のベイナー下院議長は来週にも新たな法案を採決する意向を示している。マーケットでは、政府機関の閉鎖といった最悪の事態が発生するまでには、民主・共和両党が何らかの合意に至ることは可能との楽観ムードが支配的である。

目先は、米国発のリスク・オフの流れが再開されるリスクに注意が必要であるが、基本的には株価同様にドル/円相場の下落余地も限定されよう。

3月7日には、白川総裁の下での最後の日本銀行・金融政策決定会合が開催されるが、ここでは何も追加政策が打ち出されないのが確実視されている以上、特に材料視されることはないだろう。マーケットの関心は、既に次期総裁の下での最初の会合となる4月に、スピード感をもった政策対応(方針)を打ち出せるか否かに集中している。その意味では、3月中に円サイドの要因からドル安・円高が進むリスクは限定的だろう。

2月26~27日に行われたバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言では、雇用市場見通しの「著しい改善」が実現するまでは緩和政策を継続する方針が示されている。しかぢ、このまま景気見通しの改善傾向が続けば、資産購入の縮小・停止といった議論は避けられない。日米の金融政策スタンスが逆方向に向かっていることも、今後のドル高・円安トレンドを支持している。

イタリアでも、今後の連立政権をどのように組むのかなど不透明感が残るが、やはり最大の焦点は米財政問題になるだろう。この問題がパニック化した際の円高リスクを想定しつつも、ドル買い・円売り方針の継続が基本スタンスになる。

なお、7日には欧州中央銀行(ECB)理事会が控えている。今会合での追加緩和策は想定されていないが、インフレ率の低下と景気回復の遅れから追加緩和の思惑が広がると、ユーロ安・ドル高と言う形で、対円市場でもドル高が進むシナリオが存在することも確認しておきたい。ユーロ/ドル相場は、一応は、1ユーロ=1.30ドル水準でサポートされる形になっているが、ECB理事会の結果次第では完全に同水準を割り込むリスクもある。ドル/円相場は、円よりも海外の環境に強く依存する状況になっている以上、ECB理事会にも注意が必要である。

一方、ドル建て金相場はバーナンキFRB議長の議会証言後の急伸相場を持続することに失敗している。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉報告(2月26日時点)によると、大口投機筋の買いポジションは前週の19万5,870枚から20万1,956枚まで拡大しており、一段と買いを入れる余地は限定されている。相場反発の原動力はショートカバー(買い戻し)に依存せざるをえない状況にある。大口投機筋の売りポジションは前週の9万2,219枚から8万5,357枚まで縮小したとは言え、依然として高いレベルにある。このため、米財政リスクの蒸し返しなどがあれば、更にショートカバーを進める余地は残るが、その際の戻り目途は1,650ドル前後に留まろう。本格的な買い圧力を呼び込むには、財政問題が景気見通しに修正を迫り、金融緩和政策のタカ派(引き締め)見通しを再び後退させる必要があると考えている。

円建て金相場は、緩やかな円高からの支持を受けるとみているが、現在のドル建て金相場の環境を見る限りは、下げ止まることができるか否かというレベルに留まろう。