キプロス・ショック

「預金に対する課税」にリスク回避の動き強まる
先週金曜日、ユーロ圏首脳会合に続いて行われたユーロ圏財務相会合でキプロスに対する支援策が決定されました。キプロスは2012年6月にユーロ圏に対して金融支援を要請していましたが、交渉が難航し、救済策が決定するまで約9か月の月日がかかりました。

キプロスは地中海に浮かぶ小さな島国で、人口わずかに100万人足らずの国です。もともとは観光立国の国でしたが、その後金融業が盛んになりました。というのもキプロスは2004年にEUに加盟するまでタックス・ヘイブン(租税回避地)として有名で、税制上のメリットを求めて多くの海外資本がキプロスで法人を設立していました。

EUに加盟する前後には、EUの規定などに合わせるため法人税の税率を上げるなどしたため、タックス・ヘイブンとしての魅力は弱まりましたが、その後もEU域内では最低水準の税率だったこともあって、多くの海外資本が流入しています。

そんなキプロスですが、世界的な景気後退と欧州の債務危機のい影響で、過剰な公的債務や銀行の過小資本が問題となって、昨年6月にはユーロ圏などに金融支援を要請するようになりました。

今回ユーロ圏財務相会合で決定されたキプロス支援は、100億ユーロ規模ですが、その条件は以下のような内容でした。

1. 法人税の10%→12.5%への引き上げ
2. 資本収入税の引き上げ
3. 劣後債の債務額の削減
4. 国有資産の民間化
5. マネーロンダリングに関する調査

などといった、想定の範囲内の条件の他に

6. 国内の全銀行預金(国外の預金者を含む)への課税(預金の10 万ユーロ以下は6.75%、10 万ユーロを超える預金に9.90%)

という物が含まれていました。

利子などではなく、銀行預金そのものに対する課税というこれまでにない厳しい条件が設けられたことでキプロス国内では多くの国民が反対の意思を示し、土曜日には各銀行のATMに少しでも預金を引き出そうと行列ができました。

しかしほどなくしてATMの現金は底をついた一方、政府は預金の送金や引き出しを制限して預金を封鎖しました。

今後はキプロス議会がユーロ圏の支援条件を受け入れるかどうかの採決をする予定ですが、国民の強い反対の声が上がる中、採決の結果は予断を許さないものとなっています。しかしながら、もしキプロスがユーロ圏の支援条件を受け入れなければ、支援が受けられないこととなって、近い将来キプロスがはデフォルトせざるをえない、と見られています。

キプロス国内の問題とともに、ユーロ圏として「預金に対する課税」というこれまでになかった強い措置が決定されたことから、スペインやイタリアなどでも同様の措置が取られるのでは、との見方が強まれば、そういった国々で預金の引き出しが加速する恐れがあります。そうなれば欧州の金融システム全体に対する不信感が高まることにつながります。

週明けの為替市場では、ユーロが売られるとともに、リスク回避の動きで円買いも強まりました。欧州時間にはいってやや買戻しが優勢となってはいますが、今後もキプロス議会の動きや、イタリア、スペインなどの状況次第では、再びリスク回避の動きが強まる可能性が高いので注意してください。