キプロス情勢の消化が進み、改めて日米金融政策環境が焦点に

ドル建て金相場の下値不安後退で、東京金は5,000円台を窺う
今週初めはキプロス情勢絡みのリスクオフの動きがドル/円相場の上値を圧迫したが、足元では比較的短時間で安値是正の動きが強くなっている。

前週のドル/円相場は96円絡みで膠着気味の展開になったが、週末のユーロ圏財務相会合でキプロス支援の条件に銀行預金課税という通常では考えられない条件が付けられたことが判明したことで、週明け18日の取引では一時93.57円までドル安・円高が進行した。この動きをきっかけに、他の重債務国でも「預金封鎖→預金課税」の動きに対する警戒感が強まれば、銀行システムの健全性が一気に崩壊しかねないためだ。

ただ、ユーロ圏当局者がこうしたマーケットの悲鳴に対して比較的迅速な反応を示していることで、リスク回避の動きがパニック化することは回避されつつある。ユーロ圏当局者の本音としては、支援を行うからには被救済国にも一定の負担を求めるべきとの考えがあった模様だが、預金課税で見込まれる税収は58億ユーロ(約7,170億円)であり、それと引き換えに再び欧州債務危機を蒸し返すことは本意ではない。このため、課税対象の預金金額引き下げといった柔軟な対応を示していることで、マーケットは欧州当局者の危機管理能力に対する信認を取り戻しつつある。

まだこの問題に終止符が打たれたと考えるべきではないが、欧州債市場が比較的落ち着いた反応を示していることを考慮すると、リスクオフの動きが本格展開する流れをメインシナリオとすることは無理があろう。

一方、20日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催が予定されている。声明文レベルでの大きな政策変更はないだろうが、経済見通しで失業率見通しの下方修正があると、改めて米金利上昇圧力が強まる可能性はある。これは、当然に米金利上昇圧力につながることになり、ドルに対してはポジティブ材料となる。ドルサイドからのドル高・円安シナリオにも配慮が必要である。

ただ、今会合ではバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見も予定されており、議長の緩和政策解除に対する慎重姿勢にマーケットがどのような反応を示すのかにも注目したい。基本的には、2月の議会証言と同様の発言内容を想定しているが、少なくとも緩和期待を後退させるような発言は想定しづらい以上、米金利の上昇余地も限定的か。

円サイドでは、日本銀行の正副総裁人事が国会で同意され、20日に新体制がスタートすることになる。次回の日本銀行金融政策決定会合は4月3~4日だが、マーケットでは「スピード感」を示すために3月中にも追加緩和を前倒しで実施するとの観測があり、円を買いづらい地合になっている。

現実問題としては、緩和政策の決定時期を1週間前倒しする効果は大きくなく、むしろ慎重に大胆な金融緩和路線を検討すべきと考えている。ただ、マーケットが「幻想」かもしれない前倒しシナリオに怯えている以上は、ドル/円相場の押し目買い基調は維持されよう。

<ドル建て金は横ばい、円建て金は堅調>
なお、ドル建て金相場は2月の急落に対する戻り圧力が強くなっている。依然として緩和政策への信頼を取り戻したとは言い難い状況であるが、3月8日の米雇用統計後の下落圧力が限定されたことからも確認できるように、2月に広がっていた緩和政策の早期縮小・停止観測は過熱状態だったとの反省が、買い戻し圧力に直結している。

特にキプロス情勢を考慮に入れなくても、1)金上場投資信託(ETF)の売却圧力鈍化、2)CRB商品指数の戻り歩調、3)ドル高圧力の鈍化などが、4)アジア現物需要などが、金相場の下値不安を限定する見通し。このまま1オンス=1,650~1,700ドル水準まで値位置を切り上げるには、より積極的に緩和政策の継続見通しを織り込む必要があると考えているが、少なくとも下値不安は後退していると評価して良いだろう。

東京の円建て金相場に関しては、ドル建て金相場の下値不安後退と円安圧力の双方が支援材料となり、2月13日以来となる1グラム=5,000円台回復が視界に入っている。