「円安」から「ドル高」へ、上昇エンジンスイッチで年後半に110円も

「円安」から「ドル高」へ、上昇エンジンスイッチで年後半に110円も
ドル/円は昨年10月から今年4月まで7カ月連続で上昇しており、5月に入っても上昇が続き、過去最長となる8ヶ月連続の上昇がほぼ間違いない状況となっている。ここまでの上昇幅は25円(77.79円-103.73円)を超えており、率にして約33%もの大幅なドル高・円安が進行した事になる。果たしてここからさらに6円以上上昇して年内に110円を目指す事が可能であろうか?

個人的には、ドル/円上昇のエンジンが「円安」から「ドル高」へ切り替わる事によって年内の110円突破は十分に可能だと考えている。

昨年12月に自民党政権が復活して以降のドル/円の上昇は、明らかに日銀の異次元緩和への期待による「円安」が原動力であった。しかしここにきて、その原動力は米国金融緩和の縮小観測による「ドル高」にシフトしている。特に、1ドル=100円を突破した5月9日前後からは、その傾向を強めている。

日銀は4月4日に、マネタリーベース(資金供給量)を2年で2倍に拡大するという「量的・質的緩和」を導入したが、同時に黒田新総裁は「戦力の逐次投入はしない」「必要な政策はすべて講じた」と発言した。また、4月19日に発表されたG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)声明で「競争的な通貨安競争を回避」する方針が再確認された事などから、円安加速につながる追加金融緩和は見込みにくい。こうした点から、徐々に「円安」エンジンの回転数が下がり始めた感は否めない。もっとも、本邦貿易赤字の定着による為替需給の変化(輸出の円買い超から輸入の円売り超へ)などから、エンジンが逆回転を始める可能性は小さく、基調的な円安は今後も維持されるであろうと考えている。

一方、米国では今年に入り富裕層の実質増税や財政支出の強制削減などがあったにもかかわらず、4月失業率は2008年12月以来の7.5%まで低下するなど、景気失速の兆候は見られず、むしろ順調な回復ぶりを見せている。米国経済はある程度の逆風に耐えられるだけの体力を回復したと見られ、当面は上向きの基調が続くと考えて良いだろう。こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は5月22日の議会証言で「雇用市場の改善が継続すれば、今後数回の(FOMC)会合で資産購入を縮小する可能性がある」と発言している。これは、当面のFOMCのスケジュール(6/18-19、7/30-31、9/17-18、10/29-30、12/17-18)から見て、9月の会合を想定した発言だと思われる。

したがって、それまでに発表される雇用関連の経済指標(最も重要なのはもちろん雇用統計)に改善傾向が続けば、市場は9月の緩和縮小を織り込み始める事になり、その段階で「ドル高」エンジンの回転数が一段と上がる事になろう。FRBが、景気刺激のために市場に供給しているドルの量を減額する事は、その後の「量的緩和停止」から最終的には「利上げ」という金融引き締めサイクルの開始を想起させる可能性が高い。そうなると第4四半期(10-12月期)には1ドル=110円を突破する公算が大きくなる。