今週は株式市場の安定化待ち、円売り再開はその後に

ドル高一服で、ドル建て金価格は下げ止まり
ドル/円相場は5月22日に一時1ドル=103.74円に到達するも、その後は上げ幅を圧縮する展開になり、足元では101円台前半まで値位置を切り下げている。特にドル/円のファンダメンタルズに大きな変化が生じた訳ではないが、日本株の地合が不安定化していることを手掛かりに、短期筋がドル買い・円売りポジションの整理に動いた模様だ。

5月23日には日経平均株価が前日比で1,000円を超える下げ幅を記録するなど、株式市場の地合が不安定化している。その理由としては、1)23日発表の中国製造業購買担当者指数(PMI)が540ポイントを割り込んだこと、2)日本の金利上昇圧力を日本銀行が事実上の静観姿勢にあること、3)米国が量的緩和政策の縮小を模索し始めていることなど、さまざまな要因が指摘されている。

実際の所は一つの要因に絞り込む必要もないだろうが、いずれにしても日本株高・円安に対して過熱感が広がっていたのは間違いなく、短期筋のポジション調整が一斉に膨らんだ模様だ。特に、5月入りしてからは日経平均株価の上昇トレンドラインが大きく切り上がっていたことで、スピード調整が行われた可能性が高い。高頻度取引(HFT)ファンドの影響などで値動きは荒れているが、何か日本株や円相場のファンダメンタルズに大きな変化が生じたことに伴う値動きではない。

日経平均株価は4月のトレンドラインに回帰したに過ぎず、上昇トレンドそのものが大きく崩れた訳ではない。更に3月のトレンドラインに回帰すると1万3,000円台中盤まで調整が膨らむ可能性もあるが、最大でその辺を下値目途に考えておけば十分だろう。

このため、目先は更に株価の不安定な値動きが続く可能性も払拭できないが、これが落ち着きを取り戻せば円安トレンドに回帰する可能性が高い。日本の当局者からは円安の加熱に対する警戒の声も聞かれ始めているが、100円台前半の円安水準を「投機的」と見る向きは少ない。仮に更に株安・円高が進むような事態になれば、6月11日の日本銀行・金融政策決定会合に対する追加緩和プレッシャーが強まるとみている。

一方、ドル相場を取り巻く強気の環境には変化が見られない。5月22日にバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が議会証言を行っているが、「引き続き景気回復が見られ、その改善が持続的だと確信した場合、今後数回の会合で債券購入のペース減速を決定することもあり得る」と発言している。

これは、ニューヨーク連銀のダドリー総裁の「3、4ヶ月すれば景気が財政面での問題を克服するほど完全になっているか否か、より良く分かるようになっているだろう」との発言とも方向性を一致している。これから9月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて景気改善傾向が持続されれば、同会合で量的緩和の規模縮小が合意される可能性が高まっている。

「異例な緩和政策を展開する日本」と「緩和策の出口を模索する米国」との違いは明らかであり、ドル高・円安トレンドが修正を迫られる可能性は低い。今週は株価の沈静化を待つステージになるが、早ければ今週後半にも再びドル買い・円売り圧力が強まろう。

なお、ドル建て金相場は1オンス=1,300ドル台後半で膠着化。ドル高圧力が一服していることが、売り圧力の鈍化を促している。ただ、このまま株式市場が大きな混乱局面を迎えないのであれば、ドル高・金利上昇圧力がドル建て金相場の上値を圧迫する展開が続く見通し。現物市場が投機売りを吸収できる価格水準を模索する形で、改めて下値模索の動きが強まろう。

円建て金価格は、海外安局面では円安からの支援が想定されるため、大きな値動きは想定していない。ボラタイルながらも、ドル建て金相場がドル相場主導の展開となる限り、円建て金価格の明確なトレンド形成は困難な情勢が続くことになる。