日経平均株価の混乱状況さえ収束すれば円安再開へ

ドルの信認回復と、金の信認低下
ドル/円相場は、6月7日の取引で1ドル=94.99円まで値位置を切り下げ、4月4日以来のドル安・円高水準を更新した。ただ、同日に5月米雇用統計が発表された後には改めてドル買い・円売りポジションを構築する動きが強まり、足元では98円台前半まで急伸している。

依然として5月上旬の急激なドル高・円安を相殺した状態にあり、直近高値103.74円(5月22日)を大きく下回った状態には変化がない。ただ、既に安値からは3円以上の切り返しを見せるなど、一方的なドル高・円安傾向にブレーキが掛かり始める兆候も見受けられる。

足元のドル/円相場が反転している原動力は、円安ではなくドル高である。7日発表の5月米雇用統計を受けて、改めて現行の量的緩和政策の規模縮小を巡る議論が活発化しているためだ。非農業部門就業者数は前月比+17.5万人となっており、市場予測+16.3万人と比較すれば想定通りの数値と言えるだろう。

ただ、マーケットはこのペースで雇用改善が続くのであれば、量的緩和第3弾(QE3)の規模縮小の流れには変化がないとの評価を下しており、改めて米金利上昇・ドル高圧力が強くなっている。直ちにQE3の規模を縮小するといった議論にはならないものの、最短で9月米連邦公開市場委員会(QE3)で政策変更が行われる可能性もあり、経済指標(特に雇用関連)の改善傾向が続く限りにおいては、ドルが買われ易い地合には変化がない。

一方、円サイドは依然として不安定な地合が続いている。特に明確な理由はないものの、日経平均株価や日本国債が不安定な値動きを続ける中、株高と連動して売られてきた円に対して買い戻し圧力が強くなっている。

安倍首相の成長戦略には特にサプライズはなく、改めて日本株買い・円売りを促すことには失敗している。「アベノミクス」に対するマーケットの信認が低下する中、日本銀行の追加対応などが求められかねないステージになっている。11日の日本銀行・金融政策決定会合では特に新たな政策対応は想定されていないが、脱デフレへの信認を取り戻す動きを見せるのかにも注目している。

基本的にはこれまでの急激な株高・円安に対する修正局面とみており、ドル高・円安の基調そのものが変わったとは考えていない。日経平均株価は一時的に100日移動平均線を割り込むなど、逆に売られ過ぎ感が強い。日米のインフレ環境、金融政策環境の違いを考慮すれば、ドル高・円安基調そのものに修正を迫ることは難しく、あくまでもスピード調整との理解で良いだろう。アベノミクス失敗といった見方とは、距離をとっておきたい。

一方、ドル建て金相場は改めて戻り売り優勢の展開に。ドルに対する信認回帰の動きと連動して、安全通貨としての金が売られている。欧米株式市場が落ち着きを取り戻し始める中、短期筋のショートカバーは一巡したと見て良いだろう。パニック的な株安を警戒しつつ、需要家の買い支えが本格化する価格水準を模索する形で、値位置を切り下げよう。円建て金は海外安と円安の強弱材料が打ち消しあう展開を想定しているが、やや弱含みの展開か。