猛暑とアベノミクス

気候変動監視レポート2012
今年の日本列島は梅雨明けが早く、7月に入ってから連日記録的な猛暑に襲われている。今年6月にまとめられた気象庁の「気候変動監視レポート2012」によれば、1898年以降、顕著な高温を記録した年は1990年以降に集中し、日中最高気温が35度以上の猛暑日の日数は増加傾向が明瞭だとある。また、最低気温が25度を下回らない熱帯夜の日数の増加は、特に都市部で顕著で、ヒートアイランド現象が見られるという。我々の実感通りだ。

参照:気候変動監視レポート
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/monitor/2012/pdf/ccmr2012_all.pdf

「気候変動監視レポート2012」は、日本の気象のみならず、2012年の世界の天候・異常気象、大気・海洋の特徴や、長期にわたる気候変動、地球環境の変動などを網羅していて、今後の世界を知る上で、大いに参考になるかと思う。

一方、先日国連の世界気象機関は、2000年以降10年間の地球温暖化は、海面レベルの上昇率を前の10年の2倍近い速度とし、世界の気温上昇による死亡者数を20倍にするなど、前例のない規模だと発表した。この10年は北半球、南半球、東半球、西半球、陸地、海水のすべてで温度が上昇した。また、世界の94%国々で最も暑い10年間を記録した。

過去10年間の異常気象の事例としては、2005年に米国を襲ったハリケーン・カトリーナや、2010年のパキスタン洪水、アマゾン川流域の干ばつなどを挙げた。これら異常気象による死者は37万人に上り、1991ー2000年に比べて20%増加した。

また報告書は、1991ー2000年は1981ー90年に比べ平均気温が0.14度高く、さらに2001ー10年はその前の10年間に比べ0.21度高くなっており、温暖化が加速する傾向が続いていると警鐘を鳴らしている。

ちなみに、私が長年「相場」を観察してきたところでは、大旱魃や大洪水で生産が急減し、価格が高騰した農作物は、地球上の他の地域で大幅増産され、数年を待たずして供給過多で値下がりする傾向がある。その意味でも、データで気候変動を知っておくことは、相場見通しに役立つかと思う。また、こうして見ると地域住民が飢える飢饉は、自然災害というより自由経済を阻害した政治的な災害だ。日本における食糧の安定供給も、地球規模で考えたいものだ。
コモディティ価格への温暖化の影響
2012年は世界最大の食糧生産国アメリカ合衆国を、1930年以降で最悪の旱魃が襲った。穀物生産が急減し、穀物価格は急騰、先物価格は7月から9月にかけて軒並み高値をつけた。一方で、価格の急騰を受け、世界各地で穀物生産が急増、2013年はコーンや大豆の生産が過去最大となる見通しとなった。国連食糧農業機関による世界の食糧価格指数は、6月平均211.3ポイントと、前月の213.2から1.0%近く低下した。年末にかけて、2011年につけた過去最高値からみて12%ほど下落する見込み。食糧価格指数は、穀物や油糧種子、乳製品、食肉、砂糖のバスケット価格の月間変動を示したもの。

小麦の世界生産は2013年7月1日から今後の1年間で、過去最大の伸びとなる前年比4.3%増の6億8310万トンになる見込みで、2年前に記録した過去最高水準を約1000万トン下回るところまで回復する見通し。オーストラリアや欧州、米国の小麦生産高が過去2番目の高水準になると予想されているため。豪農業資源経済科学局によると、世界の在庫は200万トン増加し1億7600万トンと、4年ぶりに増加するとみられている。

コーン価格の急騰を受け、2013年はサウスダコタ州からオハイオ州にかけてのコーン・ベルトでの作付が1936年以降で最大となった。米農務省はコーンの収穫高が前年比34.8%増の1453億ブッシェルと過去最高となる見通しだと発表した。また、ブラジルとアルゼンチンの降雨により、合わせたコーン生産が前年比5.9%拡大すると見込まれている。

ブラジル2013年の大豆生産が前年比25%増の8270万トンと、過去最大となる見通しとなった。輸出は2012年の3250万トンから3640万トンに増加する見込み。中国の大豆輸入が10月1日からの1年間で6300万トンと、当初の米農務省の見積もり6900万トンを大幅に下回る見込みとなった。4月の鳥インフルエンザの影響を受け、家畜飼料の需要が減退、世界での在庫が過去最大となる見通し。

2013年の世界の米生産が前年比1.2%増の4億7200万トンと過去最大になる見通しだ。タイ米の在庫は前年比40%増、過去3年ではほぼ倍増の1820万トンになる見込みで、倉庫不足が懸念されている。アジア米の指標価格ベトナム米は、12月までに3年ぶりの安値となる1トン377ドル50セントにまで下落する見通しだ。

全米の肉牛、乳牛の飼育数が2013年1月1日の時点で8930万頭と、前年同日比1.6%減少、1952年以来の低水準となった。1930年以降で最悪の旱魃により飼料価格が高騰したため、飼育数を減らしたもの。2012年12月のピーク時にはボンレス・サーロイン・ステーキの小売価格は1ポンド6.781ドルと、前年から10%上昇した。以降は下落している。欧州では、牛肉製品と偽って馬肉製品を提供することが問題となった。

コーヒーの世界生産が2012年10月1日から2013年9月30日の年度に、前年度比7.3%急増の1億4450万袋に拡大する見通し。世界一の生産国ブラジルの生産は2013年が低収穫年にも関わらず5020万袋と、高収穫年の2012年の5080万袋から僅かの減少に留まる見通しだ。コーヒーの収穫高は1年毎に増減を繰り返す。

コットンの生産量が2013年8月1日から始まる新年度に、1993年以降で最大の落ち込み幅となる前年度比11%減の2320万トンとなる見通しだ。コットン価格が2011年の最高値から6割以上下落したため、コットン農家は値上がりした大豆やコーンなどへの作付に変えた。世界41カ国の作付面積は11年来で最大の減少となる7.7%減の、3158万ヘクタールになる見込み。新年度末の2014年7月にはコットンの在庫が前年度比4.9%減の1590万トンと、4年来で初めて減少する見込みとなった。一方、中国による高品質コットンの需要は増大しており、コットン先物価格は2013年末にかけて大幅上昇する見通し。

米2012年第4四半期の農地リターンが9.56%と、2006年第4四半期以来の高水準となった。農地の値上がりが5.27%、コーンや大豆、小麦といった穀物価格上昇による収入増が4.29%のリターンを産んだ。2012年通年での農地リターンは19%と、2006年以降で最大となった。2011年は15%だった。

2012年末の米中西部の農地価格が前年比16%上昇し、1970年代後半以降で最も大きな上昇率となった。第4四半期だけで7%上昇した。旱魃が穀物価格の上昇に繋がっているため。コーンと大豆の全米一の生産地アイオワ州の農地は20%上昇した。イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州、ウィスコンシン州など、他のシカゴ地区連銀の管轄地域の農地も少なくとも10%以上値を上げている。セントルイス地区連銀総裁はFRBの緩和政策の影響もあるとしている。

以上はブルームバーグやロイターで見かけた記事だ。米国の旱魃の影響が瞬く間に世界の商品需給や価格に影響する。こうして見ると、世界の農業従事者は価格動向に敏感に反応し、十分に肉食系だ。むしろファンドマネージャたち、特に、日本の公的資金運用者の方が草食系かもしれない。
猛暑到来、株価上昇が期待できる関連銘柄は?
連日の猛暑が続くなか、7ー9月の平均気温が1度上昇すると、GDPに占める同期の個人消費が最大4000億円増えると言われている。家電量販店では、電気代の値上がりもあり、省エネに優れたエアコン販売台数が前年比5割増。また、ビールや清涼飲料の売り上げが増加、ビアガーデンの売り上げやプールの入場者数も例年の2倍以上になっているという。

またアベノミクスの影響か、今夏はボーナスが上がっている企業も多く、当初の出だしから見れば、7ー9月期は一段の消費回復が期待できそうだ。

家電量販店では、ビックカメラ が11日の決算発表を受け12日に窓開けの大陽線で急騰、2011年7月以来の高値を更新した。しかし、一日の上げ幅としては上げ過ぎの感がある。ケーズホールディングス 、エディオン 、なども、目先のチャート的にはかなり買われている。ヤマダ電機 には、まだ上げ余地が見られる。上新電機 、ベスト電器 、コジマ などはもたつき加減だが、猛暑と、省エネ家電への需要が続けば、テクニカル的には上値を狙える形になりそうだ。

飲料のアサヒグループホールディングスは、家電量販店各社に対応すると、いい所まで買われてきたグループ。キリンホールディングスはもみ合いからの上抜けが期待できるグループ。伊藤園はまだ上げ余地が見られるグループとなる。新規上場のサントリー食品インターナショナルは、12日のかぶせの大陰線が気になるので、いい所まで買われたかもしれない。

栄養ドリンクでは、大正製薬、エーザイ、第一三共、武田薬品工業のいずれも、テクニカル的にはまだ上げ余地が見られるグループとなる。

猛暑、異常気象関連でいうと、ウェザーニューズなども、まだ上げ余地が見られるグループだといえる。

また、電気代を値上げをした電力会社では、東京電力が、安倍政権が原発再稼働にゴーサインを出したこともあり、テクニカル的にはまだ上げ余地が見られるグループに入れられる。事故処理費用や賠償金を事実上国任せとし、廃棄コストや使用済み核燃料の処理コストも国任せとすれば、事の善悪はともかく、原発は確かに電力会社の収益に貢献するといえるだろう。展開次第では、上値を狙える可能性が高い。

ちなみに、テクニカル分析とは、過去から現時点までの値動きをベースにした現状分析だ。業績発表を含め、今日にでも価格に影響を与える何かが起きれば、まったく違う分析結果となる可能性がある。とはいえ、未曾有の金融緩和に加えて、債券から株式への資金の大移動が起きている現況では、ほとんどすべての株価に上方バイアスがかかっていると見なすことができるだろう。