【サクソバンク】2013 年第 3 四半期マーケット・インサイト ~FX編

嵐の前の静けさ
2013 年第 2 四半期の為替市場について私が予想した主要なテーマは「ボラティリティは当初狭い幅で推移しながら上昇し、次第に振れ幅を拡大させる。結果としてさらなる米ドル高を導き、日本円(JPY)は激しい値動きとなる。また資源国通貨は総じて弱含む」といったものでした。結果について自己採点をしてみると、10 点満点中の 7 点でした。いくつかの不明瞭な点があり、その事については下記にて説明しますが、第 2 四半期では米ドルがさらに上昇しました。資源国通貨については、カナダドル(CAD)とニュージーランドドル(NZD)が断続的に下げた一方、豪ドル(AUD)は大幅に下落しました。円は激しい値動きを予想していましたが、実際にはそこまではひどくなく、せいぜいでバンピー(ガタガタ揺れる程度)でした。

第 3 四半期と第 4 四半期、つまり 2013 年下半期についての予測を見出し風にまとめると、「米ドルの方向性がより鮮明になる」というものです。年初にしっかりした上昇トレンドを見せた米ドルは、第 2 四半期から第 3 四半期初めにかけ、FRB(連邦準備理事会)の動きに大きく左右されました。FRB は量的緩和を縮小する考えを市場に伝えようとしましたが、そのやり方のぎこちなさが逆に市場を苛立たせてしまいました。量的緩和は資産市場に明らかにひずみをもたらしました。第 3 四半期およびその後を予想すると、FRB の長期債購入プログラム、つまり量的緩和策の縮小が予定通りに始まり、米国市場と世界市場の成長の見通しについて懸念が続くものの、ドル高傾向が鮮明になると思われます。

2013 年第 1 四半期を迎える前に、私はその当時の市場について「木は空に届くほどは伸びていない」と述べました。それは婉曲的な言い回しで、市場全体で散見された現状に満足した様子と、非常に低い水準にあるボラティリティについて表現したものでした。その当時、私はボラティリティが上昇していくと予想していました。事実、第 2 四半期に入ってから上昇しましたが、第 3 四半期に入ってから再び急落しました。その動きは火災報知機の誤作動みたいなものではなかったのかと考えています。別の言い方をすれば、嵐の前の静けさであると言い換えることができます。米国の量的緩和の終結(それが穏やかなものになるか否かは別問題です)、FRB 議長の後任人事、9 月のドイツ総選挙などが今後の主要テーマとなることから、先見の明がある投資家は、2013 年末までに為替市場にボラティリティが劇的に復活すると考えているかもしれません。
主要通貨の見通し
【米ドル:再び上昇】
市場は 5 月中旬以降の米ドルの動きに完全に振り回されてきました。FRB の量的緩和の「出口」が浮上したように思われましたが、新しい米国の経済指標が出て、その可能性はやや遠のき、USD/JPY ではドル高という大きなうねりも止まりした。これからを予想すると、米国の景気回復が予定通りに進行して世界的な金融引き締め時代への回帰を先導するか(私はその可能性は低いと見ています)、逆に米国の景気が伸び悩む中でも FRB が長期債買い入れの減少に踏み切るか(量的緩和が資産市場にゆがみを引き起こしている状態に終止符を打つため)のいずれであっても、米ドルにはウィンウィンな状況が待っています。
そのため、FRB は他の中央銀行ほどはハト派路線にこだわらないものと思われます。ただし、忘れてはならないことは FRB 議長の後任人事を巡る動きで市場の不透明感が増すということです。現在、最有力候補であると目されているジャネット・イエレン副議長以外の人が新議長に就任すれば、市場の先行きは劇的に不透明なものになるでしょう。

【ユーロ:独選挙後に控える現実】
ユーロは 2013 年第 2 四半期を通して主要 10 カ国(G10)通貨の中では最も強い通貨の1つで、対 G10 通貨バスケット相場ではほぼ 2 年来の高値をつけました。ECB(欧州中央銀行)の国債買い入れプログラムは、経済規模の小さいメンバー国から小規模の反発が続いたものの、それらの国債の信用回復に貢献してきました。また ECB は FRB や日本銀行と同じような量的緩和策を使った通貨戦争をしかける状況にはありません。EU(欧州連合)全体では、経済規模の小さいメンバーの域内の需要が弱かったために外需に依存した結果、経常収支黒字は増加しました。
今後の動向については 9 月 22 日に予定されるドイツ総選挙の結果を待たなければなりません。選挙の結果次第では、ドイツも EU も、そして ECB も今後の金融機関の自己資本強化策の見直しを迫られることが予想されます。ユーロ相場は引き続き堅調に展開していくと考えていますが、ヨーロッパが抱える問題を最終的に解決するために、ユーロの切り下げにつながるような施策が打ち出される可能性を考慮に入れておく必要があります。

【日本円:ツーウェイリスク】
第 2 四半期のほぼ全体を通して、日銀が 4 月上旬に発表した「異次元」量的緩和策への市場の激しい反応に対して、日銀自身がその影響を最小限に抑えるためにダメージコントロールを行う展開となりました。日銀の新しい金融政策を受けて債券市場は大きく揺れ、2012 年秋以来の「安倍相場」で 70%も高騰していた株価は 20%前後も暴落しました。短期的に見ると、世界の主要国債市場が落ち着きを取り戻せば、日本国債のボラティリティも日銀が制御可能な水準に落ち着いてくると予想しています。ただし、巨額の債務が永続的な問題として残ります。
憲法改正に向けて最も情熱を燃やしている安倍首相が、7 月の参院選挙での圧勝を受けて、憲法改正を主要政治テーマとして持ち出してくるのでしょうか。それとも、雇用形態の柔軟化や財政再建など日本が早急に取り組むべき構造改革を優先するのでしょうか。前者なら円安が進み、後者なら円高が進みます。
日本は 2%のインフレ目標を設定しましたが、実現までは長い道のりという感じです。仮に政府・日銀の期待通りに目標が達成できたとしても、悪性インフレを引き起こすリスクが残ります。最終的には円安に向かう可能性がありますが、市場が日銀の量的緩和が機能していないと判断し、新たな市場のテーマを探す展開となれば、本格的な調整局面を迎えることが予想されます。

【英ポンド:新総裁就任で変化】
BOE(イングランド銀行)の新総裁にカナダ銀行総裁だったマークカーニー氏が就任しました。前任者のマーヴィン・キング時代の BOE は金利政策や資産購入の決定当日でさえ政策声明を発表することが稀でしたが、新総裁なら金利政策の透明化と政策意図の明確な発表が期待できそうです。総裁交代による BOE への期待やイギリス景気の平均への回帰傾向への期待があるものの、財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」の状況には英ポンド(GBP)安が続いているにも関わらず改善が見られません。つまり、イギリスが現状から脱却することはこれからも容易ではないということです。GBP/USD は引き続きポンド安の基調が続くと見ています。

【スイスフラン:ユーロ/スイスフランはレンジ下限変更が近い可能性も】
ユーロ圏の情勢が改善を見せていないことに加えて、ドイツの総選挙を控えて市場が神経質になっていることから、EUR/CHFはレンジの下限から戻りを見せる展開となりました。また、第 2 四半期内にはキャリー・トレードが圧力を受ける場面があったことから、取りあえずは今後の展開を見守るのが良策だと思います。
スイス国立銀行(中央銀行)の政策についても同様に様子見といった印象を受けています。私は 1 ユーロ=1.20 スイスフランの下限を変更する環境が第 3 四半期に熟すると予想しています。ドイツの総選挙の結果がEUと域内の銀行システムの将来について明確な方向性を提示するという前提ですが、総選挙後に考えられるシナリオの多くは EUR/CHF の下限変更を支持する内容となっています。スイスフラン相場が過去 1 年半あまりの最高値に近づいてきたことから、
中央銀行は一気に動く可能性があります。

【資源国通貨:まちまちな動き】
資源国通貨の中で豪ドルのみが第 2 四半期中頃から最も大きな下げとなっています。また豪ドルは、ショートポジションおよびポジションの過多によりスプレッドが拡大しており、そのため過大評価されている資源国通貨の中ではさらなる値下がりリスクが最も少ないと考えています。
ニュージーランドドルは、世界経済の鈍化を受けて景気の反転は不可避であると考えています。全世界的なリスク志向の低迷が流動性の枯渇を招き、ニュージーランドドルは急速に弱含むと考えています。カナダドルはどちらかと言えば豪ドルとニュージーランドドルの中間に位置する動きを見せることが予想されますが、カナダ国内の信用サイクルがピークに達したことによる後遺症に悩まされていることから、過大評価されていることは間違いなさそうです。

【北欧通貨:ローラーコースター状態】
ノルウェー中央銀行は、明らかにタカ派的な金利変更の期待を市場にもたせておきながら、6 月の政策会議ではハト派に寝返るような決定を行い、市場の利上げ期待を裏切りました。市場にとっては全く寝耳に水であったことから、ノルウェークローネ(NOK)はローラーコースターのように乱高下する展開となり、崖っぷちに立たされてしまいました。ノルウェークローネは当面の間、路上パフォーマーのような激しい値動きとなると予想していますが、一方で過大評価されているスウェーデンクローナ(SEK)は、伝統的に景気循環追随型の動きとなると考えています。その意味では、主要国株式市場の動向を注視していれば、スウェーデンクローナが今回の上昇のピークを打ち、値下がりに転じる時期を見極める参考になるかと思います。またスウェーデンでは住宅バブル崩壊の可能性があることも留意しておく必要があります。
第3四半期の取引テーマ
2013 年第 3 四半期の取引テーマは多岐にわたり、幸いにも各々のアイデアの相関性が低いことがいえます。サクソバンクの第 2 四半期のアイデアは「ホームラン」(GBP / NOK / EUR の買い、AUD の売り)と呼べるものから「全くの見込み違い」(USD/CHF の買い)とさまざまな結果となりました。
カナダドルはパリティーから大幅に上昇するときかもしれません。カナダドル安が再び 1 米ドル=1.0600 カナダドルを超えるようだと、その後は大幅に上昇するでしょう。EUR/USD は更なる上昇まで少し時間を要するかもしれません。

【NZD/CAD と NZD/NOK はショート】
ニュージーランドドル高は行き過ぎであると考えています。世界のどの経済もそうですが、平均回帰は避けられません。第 3 四半期後半にはリスクオフの可能性があり、それが起こると高値圏にあり、流動性が低いニュージーランドドルは大きな打撃を受けることになります。

【CHF/JPY はショート】
私たちはドイツ総選挙後にはスイス国立銀行が積極的に行動し、かつ EU 圏の政策見通しもより明確になると考えています。そのため、たとえスイスフランのキャリー・トレードの需要が回復したとしても、CHF/JPY は下落すると予想しています。

【GBP/AUD はロング(押し目買い)】
前四半期の予測の繰り返しになりますが、オーストラリア準備銀行はさらなる政策金利の引き下げを余儀なくされる一方で、イギリスには政策の変化がないと予想しています。7 月後半につけた 1.65 台で慌ててポジションを保有するよりも、1.60 台での押し目買いを待つ方がよいと考えています。

【SEK の売り対 NOK およびG7通貨】
これは SEK/NOK の売りポジションをある数量持ち、同数量のノルウェークローネを均一な割合で構成されたG7の通貨バスケット(米ドル・ユーロ・日本円・英ポンド・豪ドル・カナダドル・スイスフラン)に対して売り注文を出すことを指します。これはスウェーデンクローナの過大評価を狙った戦略です。