【サクソバンク】2013 年第 3 四半期マーケット・インサイト ~商品市場編

ようやく一服状態
2013年に入って以降、需給関係の変化が商品市場に深刻な逆風をもたらしています。ここ何年間か、新興国の経済発展と商品価格の上昇を背景にいくつかの主要商品で生産が増大しましたが、一方で需要は後退したため、価格の低下を招いています。こうした傾向は、ヨーロッパやアメリカにおいては特に農業分野でみることができます。2012年は干ばつでしたが、2013年秋には供給過剰になるという予測から、今季の穀物価格は下落しています。

マクロ経済についても、中国の成長率が下がる一方で、FRB(米連邦準備理事会)の量的緩和の「出口」がいつになるかの推測が高まりを見せるようになったために、産業用金属と貴金属の双方に大きな損失が発生しました。過去数年に比べると現在はよりバランスのとれた値動きをしている産業用金属は、供給過剰の中で需要の後退が見られますが、需要サイドの状況が改善すれば価格をサポートする展開が期待されます。これまで以上に相場が大きく崩れるリスクは限られていると見ています。

エネルギー部門では、アメリカで引き続きシェールガスの増産が続く中で、夏の気候が全般的に穏やかなために需要が減少し、天然ガス価格が下落しました。一方、原油価格は非常に堅調の動きを見せています。最近数週間の主要テーマは、世界の原油市場のベンチマークであるWTI(ウエストテキサスインターミディエート)と北海ブレントとの先物価格のスプレッドが縮小し正常化してきたことです。しかし、全体的には、エネルギー価格に影響を及ぼしかねない世界の紛争地域の緊張、つまり地政学的は問題が続いているため、投機筋はロング(買い持ち)のまま値上がりの機会をうかがっています。そうした値上りは期待できないというのがサクソバンクの予測ですが、中国とアメリカの成長率が低下すれば、価格下落のリスクが大きくなる点には注意が必要です。
原油相場は底固い
世界の石油需給のファンダメンタルズから判断すると、原油価格は今後数カ月間安定的に推移することが予想されます。4月以来、ブレント価格は過去2年間の平均値1バレル=110ドルを下回って推移しています。新興国、中でも中国の景気が後退する中で、原油の供給は十分な水準にあることから、供給の逼迫リスクはさらに薄らいできました。そのことは、今後数カ月間はレンジ相場が続く可能性を示唆しています。

しかし、地政学的な問題の発生リスクを除外することはできません。それに加えて、夏場の定期検査を終えた製油所からの需要増という季節要因から、原油価格は回復傾向を見せています。投機筋はWTIとブレントのいずれについても値上りを予想しています。価格の最大の下値リスクとしては、市場の相場観が何らかの理由で変わり、それにドル高が重なると、ポジション(ロング)の調整売りが続き、最終的に価格の下落につながる可能性があります。これはここ数年何度も繰り返されてきたことです。

アメリカの石油市場は、5年前から始まったシェールガスとオイルサンドの生産増加というインフラ問題をようやく解決しました。WTI原油の集積地・オクラホマ州クッシングの原油在庫問題は、WTIとブレントのスプレッドの大きな拡大をもたらしました。スプレッドはわずか半年間で1バレル=23ドルまで広がったのです。その後、アメリカ国内の原油生産地とクッシングを結ぶパイプラインや鉄道を使った輸送能力の強化が図られ、アメリカ国内でのガソリン需要が増える季節を前に、内陸の生産地に滞留していた原油が沿岸部の精油施設に順調に供給されるようになりました。その結果、WTIのブレントに対するディスカウントは7月にはほぼ解消しました。

WTI(硫黄含有量がより低いためにより良質)がブレントに対して再びプレミアムを取り戻す可能性は限られています。逆に、WTIの輸送費を考慮して、ブレントのWTIに対するプレミアムが再び開いて1バレル=5ドルまで戻すと予想しています。製油所のフル稼働状態は8年も続いており、そのため原油供給を増やされても生産を増やせる状況にありません。つまり、アメリカではそれまでの内陸(生産地)における在庫問題を沿岸部(精油施設)に単に移し替えただけの現象が起きています。そうした事情から、WTIは国内需要を喚起するためにはブレントなどの輸入原油に対抗して価格を下げざるを得なくなります。

目を世界に向けると、需給関係はここ数年では最も健全な水準にあります。それは、新興国の景気が後退気味で原油需要が落ちる一方で、アメリカ、カナダ、ブラジルなどからの供給の増加が見込まれているためです。その結果、大きな余剰生産設備を抱える石油輸出国機構(OPEC)は動くに動けない状態に置かれています。したがって、供給不足が仮に生じる場合でも、価格上昇は限定されたものにとどまると見ています。

ブレントは1バレル=100~114ドルのボックス圏で推移し、その中の高値は第3四半期の前半に見られると予想しています。1バレル=100ドルへの下振れリスクは2013年第4四半期から2014年に初めにかけて高まる可能性があります。

短期的には、想定外の深刻な供給不足の発生があれば、燻ぶり続ける地政学的な懸念と重なり、原油価格を下支えすることも考えられます。WTIとブレントの先物取引では投機的なポジションが積み増されており、アメリカと中国の景気が悪化の兆しを見せれば、ポジションの調整売りが生じると見ています。
貴金属相場は反発の可能性
金と銀の相場は最近数カ月では最低水準まで値下がりをしています。過去7カ月で見ると、銀は3分の1強、金は5分の1強という大幅な値崩れを記録しました。金の場合、12年間連続でプラスのリターンをもたらしましたが、それもついに終わりを迎えました。現在の市場は、売りが売りをさらに加速する事態になるかどうかを注視しています。

機関投資家の金離れは2012年10月に始まり、2013年4月にはその流れが加速しました。上場金融商品(ETP)の保有高は25%も減少し(ブルームバーグ調べ)、7月に価格が戻る場面もありましたが、それまでにヘッジファンドはロングの84%を解消しました。年初には、ほとんどのアナリストは金価格が2013年を通して堅調に推移すると予想していましたが、予想外の下落が始まり、不意を突かれた投資家は相当な損失を被り、金に再びリスクオンする状況にないようです。

貴金属価格の下落を加速させた機関投資家による大量の売りの原因となったのは、アメリカの金利動向でした。インフレ圧力が後退する中で債券価格が下がったことから、実質利回り(金利)は上昇しました。その結果、投資家の間では運用環境が好転した他のアセットクラスに乗り換える動きが強まりました。特に株式市場が好調な推移を見せ、S&P500種株価指数は現在前年比18%のリターンをもたらしています。この先、株式市場にはいくつもの障害物が引き続き存在するものの、特に先進国を中心とする成長見通しが明るいために、同市場への資金の流入が続くと見ています。

今後数カ月間に関して言えば、まず米ドル高傾向が続くと見ています。それは、アメリカの経済成長率がユーロ圏など他より高くなる可能性があるからです。ドル高の見通しは貴金属価格には下振れリスクをもたらします。金相場を支える要因があるとすれば、売りがほぼ一巡したという事実です。そのことによって、今後は金市場にとって良いニュースがあれば、それに反応して値を戻す余地が広がっています。金市場に好ましいニュースとしては、FRBによる量的緩和の縮小ペースがより緩やかなものになること、現在の金利見通しの変更などが考えられます。さらに、金価格がさらに下がって、長期間にわたって1トロイオンス=1200ドル以下にとどまることになれば、金の生産(供給)が減るのは必至で、そのことも金相場にはプラス材料となります。ニューヨーク証券取引所に上場されている金鉱株の指数である「NYSE Arca金鉱株BUGS指数」は2013年に入ってから40%以上も下落していますが、これはこれらの会社の収益機会がそれほど大きく損なわれていることを示しています。

サクソバンク予測チームは、今後数カ月以内に金相場が1トロイオンス=1450ドルまで回復する可能性があると見ています。その理由としては、アジアと新興国の中央銀行からの実需の勢いが引き続き強いことと、上場金融商品(ETP)を通した投資需要の減少がほぼ収まってきたことが挙げられます。また、他のアセットクラスに比べると割安感がある金での運用に踏み切る投資家も出てくることも考えられます。しかし、さらなる値下がりがある場合は、1090ドルまで、つまり過去12年間の価格上昇分の50%を失う水準にまで下落する可能性も除外できません。
まとめ
地政学的な問題や想定外の変動要因が発生する場合を除いて商品相場の先行きを見ると、短期的には相対的に静かな動きが予想されます。金と銀の価格は緩やかな回復の可能性があり、原油価格は何年ぶりかで安定した動きが予想されます。農産品価格は値を下げますが、これは供給増を反映したものです。

楽しいことではありませんが、相場も一息入れる時があります。2013年上半期の金と銀のように大きな変動があった後では、それもよしとする関係者が少なくないのではと思えます。