【サクソバンク】2013 年第 3 四半期マーケット・インサイト ~マクロ経済編

大きな変化はない
2013年第2四半期の世界経済は、世界第1位と第2位の経済大国であるアメリカと中国に支えられて成長はしたものの、鈍い伸びにとどまりました。同四半期には、日本銀行が長い間待ち望まれていた量的緩和策を打ち出しましたが、同期間の唯一の驚きは、世界がユーロ圏にほとんど注意を払わなくなったことだったと思います。3月にはキプロスの財政・金融危機が表面化し、5月には欧州中央銀行(ECB)が10か月ぶりに政策金利を引き下げことに世界は大きな関心を示しませんでした。
代わりにメディアの見出しを飾ったのは、日銀の量的緩和、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和の「縮小」への懸念、中国人民銀行(中央銀行)が中国の景気後退に対して動きを見せなかったことなどでした。世界経済の四半期ベース成長率では第2四半期が2013年では最低になる結果を予想していますが、第3四半期の成長率も低い水準にとどまる見通しです。つまり、関係国の中央銀行と政府には新たな政策を打ち出すことが求められる状況が展開します。2013年の世界経済の成長率は2%を予測していますが、これは2012年の2.1%と大差がありません。2014年に関しては2.7%の成長を予測しています。
アメリカ:成長の足を引っ張る財政問題
アメリカでは非農業部門雇用者数が2013年上半期は月平均20万2000人の増加となりました。年初に連邦政府の歳出の強制削減が発動され、その後も歳出削減が続いている状況を考慮すると、労働市場の堅調な動きはかなり意外な感じがします。歳出削減は行くかの理由からまだ終わっていません。まず、国防予算が2010年第3四半期にピークを付けたあと13%の削減となり、2013年第1四半期だけでも前年比3.2%の大幅削減となりました。2013年下半期もさらに削減される予定です。次に、議会予算局の2013年歳出見通しは強制削減の対象となる歳出がさらに削減されることを示唆しています。以上の理由から、2013年下半期もアメリカの財政的歯止めがマクロ経済に大きな影響を及ぼし、経済成長率は民間部門の業績の伸びを下回る水準に止まることが予想されます。
しかし、歳出削減は悪いことばかりではありません。政府債務は対GDP比で2009年第4四半期につけた過去最高の10.4%から第1四半期には5.7%へと大きく改善しました。さらに、名目GDPと財政赤字額に関する比較的に保守的な予測でも、2013年末には4%を割る水準まで改善することが見込まれています。サクソバンクの今後数四半期に関する予測からも、債務がGDP比で4%を割る可能性が高いと思われます。
アメリカ経済全体について言えば、2013年は大きな変化がない年になると予想しています。しかし、第2四半期の成長の勢いが弱いと判断して、2013年のアメリカの成長率予測を1.6%に下方修正しました。これは市場のコンセンサス予測の1.8%をやや下回り、2012年の2.2%をかなり割る数字です。2014年に関しては、歳出削減の影響が減少すると見ており、高い成長率が期待できるという見通しを変えていません。住宅市場の回復はさらに続き、直接には最終国内需要の中の住宅投資の増加、間接的には住宅価格の上昇という形になって表れてくると見ています。その結果、債務超過から人々が救われ、購買力の増加につながります。
ユーロ圏:巨大タンカーはゆっくり、確実に航路を変更中
ユーロ圏はこの2年間を通してほとんど不況が続いています。2013年第1四半期の工業生産は1.5%のマイナスでした。しかし、四半期ごとの経済指標で見ると、不況が終わりに近づいている暫定的な兆しが出てきました。ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)であれ、欧州委員会景況感(ESI)であれ、経済指標は、1四半期前と比べると明るさを取り戻しています。実際に7月の同号PMIは、景気拡大・縮小の分岐点である50を、2012年の1月以来初めて上回りました。また、緊縮政策(残念ながらその中心は増税ですが)の景気への悪影響も若干薄れつつあり、家計の購買力の伸びの重しが軽くなる可能性があります。
とは言うものの、ユーロ圏が抱える過剰設備と最低でも1900万人を超す失業者の存在を考えると、景気回復は緩やかなものになると見ています。従って、賃金の伸びは期待できず、それが消費の伸びの重しになることが引き続き懸念されます。2014年のユーロ圏の成長率は緩やかな水準にとどまると予想しています。
2013年を通したGDP成長率についてはより暗い見通しをしています。それは、2012年第4四半期に前期比0.6%の大きな減少幅を記録したことから、2013年第1四半期はその後遺症で弱い水準にとどまったからです。2013年のユーロ圏経済はマイナス成長となり、その縮小幅は2012年のマイナス0.5%からさらに拡大してマイナス0.8%になると予想しています。
中国:成長率維持に苦闘
中国経済は2013年に入り、世界貿易の伸びが止まったことに加えて、政府の景気刺激策が期待外れに終わっていることから、減速しています。実際に、李克強首相をトップとする中国国務院(内閣)も中国人民銀行(中央銀行)のいずれも、景気後退を食い止めるために大きな施策を講じていません。経済成長率は2013年第1四半期が前期比1.6%、第2四半期が1.7%と、いずれも2011年と2012年の平均を下回っています。前年同期比で見ると、第1四半期が7.7%でしたが、第2四半期には中国指導部が目標と掲げる7.5%に低下しました。
2013年下半期の見通しはやや明るいものですが、それは構造的な理由と景気循環によるものです。中国の経済成長はここ数年、外需と民間総資本形成(投資)に支えられてきましたが、世界貿易が現在は低迷しています。欧米の消費の伸びが相対的に弱いために、2013年下半期の外需の大幅な伸びはあまり期待できません。さらに、中国では過剰投資が続いていますが、世界2位の経済が先進国経済にスムーズに移行するためには今後10年の間に投資を安定水準までに大幅に減少させる必要があります。それには時間がかかり、国内に軋轢を生じないで実現することは明らかに困難だと思われます。中国は世界経済がリーマン・ショックで不況に陥って以来、レバレッジに大きく依存して成長を維持しききました。その結果、2012年までの5年間で56%だった負債の対GDP比は現在210%に激増しています。以上の要素を勘案すると、中国の成長率は次の10年間に年平均で約5%まで徐々に低下すると予測しています。
しかし、短期的に見ると、2013年の中国の成長率は前年を超える可能性があり、下半期は若干の前年比プラスが予想されます。その可能性は、中国製品の最大の輸出先であるユーロ圏の成長率が下半期にサクソバンクが予想する前期比ベースでマイナス0.1%より高い結果になれば、特に強まります。さらに、中国の新指導部は、大規模な景気刺激策を導入しない場合でも、規模の小さな刺激策を打ち出すことが予想されます。6月後半に、地方都市発展計画に似た計画が発表になりましたが、例えばそれには鉄道網の整備が含まれていました。経済活性化には上手なやり方ですが、現在の中国ではそうした施策が特に必要とされているという事情も背景にあるようです。このような小規模な景気浮揚策や政府も成長鈍化を懸念している事実を考えると、2013年と2014年の中国の成長率がそれぞれ7.3%と7.8%とかなり高い水準にとどまることが予想されます。しかし、2009年後半と2011年に記録した高い成長率には遠く及びません。