【サクソバンク】2013 年第 3 四半期マーケット・インサイト ~株式市場編

不安材料は消えた
アメリカでは、雇用統計の改善と政府負債の対GDP(国内総生産)比の急速な減少から、量的緩和の縮小が始まろうとしています。第2四半期には、FRB(連邦準備理事会)が量的緩和の縮小を口にしただけで株価が急落する場面が見られましたが、第3四半期も同様の事象が発生するのでしょうか。

 じわじわと迫りくる量的緩和の縮小は金融政策の相対的な引き締めを意味しますが、FRBの金融政策が依然として緩和的である事実を忘れてはいけません。FRBの利上げ局面を振り返ってみると、利上げ発表当初から3ヶ月間、株式市場は反落する傾向にありました。しかしながら、量的緩和の縮小が同様の事象を引き起こすと断言することはできません。株式市場は、アメリカ経済がトレンドに沿った成長過程に入っていないため、量的緩和の縮小が緩やかなものとなることをすでに織り込んでいます。私は世界の株式市場が当時のショックから立ち直り、現在は割安であると考えています。今年9月のドイツ総選挙やアメリカの債務上限問題、さらにヨーロッパ諸国の国債の信用低下の問題など、主に政治にまつわる不安材料が懸念されますが、株式市場は世界経済の回復傾向を織り込み続けていく展開になると予想しています。

 全体的に見ると、世界の株式市場は歴史的に見て割安な水準にありますが、数年かけて徐々に平均値に回帰していくと予想しています。先進諸国の株価指数から想定される配当利回りは3.4%と史上最高水準で推移しています。それが続くという前提で予測すると、世界の株価は向こう1年間値上り傾向を強める可能性があります。現在はインフレ圧力が後退する中で経済成長の可能性が高まっている環境下にあり、株式は最も魅力的な資産の1つとなっています。

 サクソバンクの先進国株式市場ランキングモデル(バリューファクターとモメンタムファクターを用いています)によると、オランダ、ドイツ、フランスの株価が最も割安となっています。一方、ニュージーランド、オーストラリア、スイスの株価についてはネガティブとなっています。このランキングは相対的な傾向を示していますので、株価が値上り・値下がりのいずれの方向に動いても、ランキングの上位3市場の上昇率が下位3市場を上回ると予想しています。

 株式市場に存在するノイズを除去して、リスキーな局面なのかそうでないのかを判定する指標として、社債スプレッドが役にたちます。現在は103ベーシスポイント(1.03%)と、量的緩和の縮小を織り込んで拡大していますが、ひとまず収束したように見受けられます。現在の水準は、第3四半期に株式市場が小幅反落することを反映しています。
アメリカ:好調な理由
アメリカの株式について見てみましょう。5月17日には1年後の予想EPS(1株当り純利益)が14.8倍と、2010年3月以来の高水準に達しました。さらに、S&P500は史上最高値に近いところで推移しています。そのため、アメリカの株式市場が過熱気味であると考えるのは当然だと思います。しかしながら、FRBが四半期ごとに発表する「トービンのQレシオ」(実質株価純資産倍率)では、まだバブル状態とは言えません。

さまざまな要因がアメリカの株式市場を押し上げています。住宅市場は、住宅ローン金利の上昇で弱含む局面があったものの、改善に向かっています。石油・ガスの生産と自動車販売も増加しています(自動車販売は通常の水準まで伸びれば、2013年の販売が18%増になると予想しています)。全体のインフレ圧力は引き続き低下傾向にあります。

 上述のとおり、アメリカ経済とS&P500の先行きは明るいといえるのですが、この第3四半期に限っていえば、アメリカの負債上限問題、ドイツの総選挙、あるいはポルトガルなどユーロ圏周縁国の国債の信用問題などを理由に若干の景気後退が想定されます。

 アメリカ政府の債務問題による景気への悪影響が今年の下半期に薄らぎ、民間部門の業績がさらに伸びれば、2013年末にかけて株価の上昇があり得ると予想しています。2013年末のS&P500の予測値は1750ドルです。その前提は、12カ月先の予想EPSは117.0へと1.7%の上昇、1年先の予想PER(株価収益率)は15倍です。後者については景気循環の流れと現時点での株価予測から見ると特別に高い値だとは考えていません。ただし、世界経済の状況によっては予想PERが15倍に達するのは、2013年ではなく2014年となる可能性があります。
ヨーロッパ:ドラギの「魔法の杖」
2013年下半期のヨーロッパの株式市場について、私たちは適切なバリュエーションと良好な株価動向を背景に、相対的に最も投資対象に適していると考えています。特にオランダ、ドイツ、フランス、アイルランド、ノルウェー、ベルギーは注目しています。

 ECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁が「ユーロ存続に必要なあらゆる措置を講じる」と宣言して以来、ユーロ圏の国債利回りと信用スプレッドが低下する一方で株価が上昇しました。さらに、景況感指数にも改善が見られます。ユーロ圏の金融機関は最近数年間で中核的自己資本(Tier1資本)を積み増しており、金融システムは一応安定を取り戻しています。金融機関がユーロ圏のアキレス腱であることに変わりはありませんが、6四半期連続のマイナス圏内にあったユーロコイン指数はゼロに近づいています。7月のユーロ圏PMI(購買担当者景気指数)も上方修正されたので、ユーロコイン指数がプラスに転じる可能性が出てきました。そのことは2013年後半にはユーロ圏の成長率がプラスに転じる可能性を示唆しています。

 サクソバンクのユーロ圏の成長予測は、2014年がプラス1%、2015年はプラス1.3%です。株価については、1年先の予想PERが12.6倍とやや低い水準にあることから、ヨーロッパの株式市場の向こう1年の見通しは相対的に「ポジティブ」と判断しています。

 ヨーロッパ産業界で業績が最も悪い分野はエネルギーと素材産業です。原因として世界的な需要の減少と過剰生産が挙げられています。素材産業の場合は、生産拠点を構えるアフリカ諸国で頻発するストライキと賃上げ要求が株価を押し下げています。エネルギー株と素材株については、2013年下半期にヨーロッパの景気が上向けば、「コントラリアン(逆張り)投資」の対象として注目されることが予想されます。市場のコンセンサスでは、エネルギー株と素材株の値上がり率が10~20%となっています。これは、証券会社のアナリストが現在のバリュエーションは長期的な株価見通しを反映していないと判断していることを示しており、私たちも同様の見解を持っています。
日本:アベノミクスふうに言えば
2013年第2四半期を迎えた時点では、日本株を「ロング(買い持ち)」にすることを躊躇しました。それは他の先進国の株価と比較して日本株が大幅に割高な状態となっていたためです。株価の上昇率は予想を超え、日経平均は5月22日には第2四半期の終値としては最高値となる1万5627円(同四半期内の上昇率:26.1%)まで高騰しました。

 ところが5月23日には一転して、日経平均は当該営業日の最高値から9.2%も急落して引けました。その引き金となったのは、HSBCが発表した中国製造業PMIが予想を下回ったことです。さらに、急激な値下がりで信用取引をしていた投資家が証拠金不足とって投げ売りに走ったことと、利益確定の売りが重なりました。また、その後2週間で日経平均は約20%も大幅に値下がり、第2四半期の上昇がほぼ吹き飛んでしまいました。

 問題は、アベノミクスへの期待を反映して高騰した日本株が持続的に値上りするかどうかです。円安で輸出が2012年11月以来16.5%の増加となるとともに、消費者態度指数は2007年以来の高水準になりました。6月の東京地区百貨店の売上高が前年同期比9.4%増と、大震災の影響を除くと1990年以来の最大の伸びを記録しました。アベノミクスと日本銀行の新金融政策による景気浮揚策が現在までのところ功を奏していることは確かです。

 日経平均に関する市場のコンセンサス予測は、2015年度は2013年当初比で24.4%の上昇となっていますが、これは日本企業の業績向上に対する期待の高まりを反映したものです。2013年の成長見通しは、2012年12月時点のコンセンサス予測値だった0.7%が1.8%へと大幅に上方修正されました。2014年の見通しも同様に1%から1.4%へと上方修正されています。いずれも安倍政権が進める経済政策への信頼の高まりを反映したものと言えます。

 日本の経済政策を主要20カ国が受け入れたことや、IMF(国際通貨基金)のお墨付きを得ていることを考慮すると、株式市場の上昇が持続することが予想されます。さらに、7月の参院選挙で安倍首相が率いる自民党が圧勝して、数年ぶりに安定した政権運営が実現しました。日本の明るい将来のための布石はこれでそろったように見受けられます。

 上述のとおり、日本経済のファンダメンタルズは改善していますが、日経平均は2015年度の予想PERが16.3倍と先進国の中では最も高い水準で推移しています。同時に株価動向は他の先進国の株式市場と比較すると鈍化傾向が見受けられます。その結果、サクソバンクの先進国株式市場ランキングモデルでは最も敬遠したい株式市場となっています。
さらなる「なぎ」状態
荒れ模様となった第2四半期の株式市場でしたが、第3四半期はずっと落ち着いた動きに終始すると予想しています。政治的余波は別として、世界の株式市場はアメリカの量的緩和策の終わりを既に織り込んでいます。

第2四半期の世界の株式市場は勢いよくスタートを切りましたが、最後は痛手を負いました。打ちのめされるというほどではありませんでしたが。第3四半期については、量的緩和が株式市場の中心テーマにはなることはないと思われます。それに匹敵する新しい材料の出現を待ちましょう。