乱高下の乗り切り方・一案「乱世に利あり」

パフォーマンスを上げる3つのポイント
日経平均は5月23日に2007年12月以来の高値15942.60をつけたが、同日に大商いの超大陰線で急落した。以降は薄商いのなか、荒い値動きが続いている。

私は、世界的にカネ余りが続く中、債券市場から流出した資金も加わって、いずれ株式の大相場が来ると見ている。とはいえ、短期的に買い過ぎれば調整されるのが習いで、このところの値動きはむしろ健全な相場だといえる。相場は長期的な視野の投資資金と、短期的な売買の投機資金との綱引きで、常に上げ下げを繰り返すものなのだ。そういったことを理解していると、方向が見えにくい相場でも、それなりのパフォーマンスが上がるようになってくる。

相場の道は険しく遠い。私自身が道半ばながら、あえて後進に私なりのアドバイスを贈るとすれば、パフォーマンスを上げるポイントは3つある。

1、方向性を持つ
2、エントリーするタイミングを計る
3、確実に利食う

この3つだ。私はプロとして長く為替や債券を売買してきたが、その頃のポイントと、上の3つのポイントは違う。プロのようにディーリング・ルームで行う売買と、今の私のように1日1、2回ほどしか値動きをチェックしない売買とは、自ずからポイントが違ってくるものだ。

投資助言を行った時期の想定パフォーマンス
現在、私は自身の資金を為替と株式で運用しているが、2010年5月第2週から2012年12月末まで、投資顧問会社として自社で開発したエスチャートスクリーナーを用いて、日本株の売買助言を行った。2011年3月には大震災が起き、2012年6月にはTOPIXが29年来の安値となる692.18をつけた。政局も不安定で、同期間の日経平均は下のチャートのように乱高下した。
参照:同期間の日経平均推移
エスチャートスクリーナーとは、株式市場の全上場銘柄を対象に、観測期間中に出来高急増があった銘柄を検索するもので、エントリーのタイミングを捉えるのに適している。観測期間の長短、出来高急増の程度により絞り込んだ銘柄を、流動性(売買金額)の大きな順に提示するものだ。売買助言は取引の前日に、仕込み、手仕舞いはすべて寄値、損切りは参考価格の指値にて行った。
参照:想定パフォーマンス
上段のグラフは助言期間137週間のトレード総計297回(完結売買)の実現損益率を単純に合算したものに、2012年12月28日時点での保有12銘柄の評価損益率を合算したものを合わせたパーセント表示だ。配当、貸株料、手数料、損切り時のスリッページ等は反映していない。また、銘柄による売買金額の差異も考慮せず、等金額を投資した場合という想定上のパフォーマンスとなっている。下段左のグラフは、ショート100回(売って買い)、ロング197回(買って売り)の実現損益と、評価損益の貢献度で、右は勝率だ。

297回の売買損益は合算で+350.1%。保有銘柄の評価損-173.0%を差し引くと、ネットの実現益が+177.1%となった。あくまで想定上のものだが、年率+67.2%となる。最初から最後まで参加してくれた人から2012年末に頂いた「御礼のメール」では、投資実績の実現益が評価損の2倍だったとのことなので、私が計算した想定上のパフォーマンスを、実際に上げた人がいたことになる。少しでもお役に立つことができて幸いだった。

また、上段のグラフの落ち込んだ部分は2011年3月11日の翌営業日の寄値で、当時の保有ロング銘柄がすべて損切りとなった時の落ち込みだ。通常のポートフォリオでは、どんな危機の場合にでも全売りのようなことは行わない。損切り指値オーダーの欠点は、パニックになっていなくても、事実上、全売りなどというパニック的な行動につながることだ。その点を反省して、以降はショート銘柄やファンダメンタルズに自信の持てない銘柄を除き、機械的な損切り指値オーダーは助言しないこととした。

また、パニック的に全売りすると、反発時に買い急ぎすることにもなる。年末時の最終的な保有銘柄はロングばかりで12、うち5銘柄は震災後の反発時に買った主要輸出銘柄などで、合わせた評価損は約130%だった。損切りとは、損の拡大を防ぐために行うものだ。すでに拡大してしまった評価損は、本当に弱気にならない限りは切ることができない。

大震災時の機械的な損切りオーダーすべてがついた時点では、保有銘柄ゼロ。実現損が-60.4%だった。つまり、そこからの実現益は+410%となる。パフォーマンスが急激に上昇したのは、機械的な損切り指値を止めてからだ。損切り指値を入れ続けていたショートのパフォーマンスは+11.9%と、ほぼゼロだった。

実際の運用を想定して、保有銘柄数は常時12~17の間に留めた。ナンピン、買い乗せ、売り乗せなどは行わなかった。

乱世に利あり
私の最初の著書は1990年に出版された。その頃からの読者の方々で、もしかするとご記憶にある方がいるかもしれないが、私は「損切りの大切さ」と「いかに利食うか」が、資金運用における2大テーマだと常々解説してきた。

損切りとは、損の拡大を防ぐために行うものだ。そして、いったん損切ったなら、再挑戦し続けなければならない。そうでなければ、損が損のままで終わる。プロ時代の私は、常に相場に張り付いていたので、再挑戦は極端な場合、損切った直後にでも出来た。

損切りが大切なことは今も変わらない。損切りができなくて、市場から消えていったプロの数は、枚挙に暇がないほど多い。しかし、ほぼ機械的な損切りは、1日に1、2回しか値動きをチェックできないような環境では、上記の想定パフォーマンスの3月11日以前、以降ではショートの成績のように、ほぼゼロとなることが分かった。少なくとも、上記の助言期間や、今年の5月下旬以降のように上下に振れて、トレンドの見えない相場ではそうなる可能性が高い。

今のような相場環境で、1日に1、2回しか値動きをチェックできないような人に対するアドバイスは、先ほど挙げた3つのポイントだ。

1、方向性を持つ
2、エントリーするタイミングを計る
3、確実に利食う

1、方向性を持つ:
大震災後にパフォーマンスが急上昇したのは、ロングポジションが貢献したからだ。もっとも、相場は乱高下し、2012年6月にはTOPIXが最安値をつけたので、この時期の「方向性を持つ」ことの貢献度はそれほど高くないかも知れない。私はこれから株式の大相場が来ると見ているので、「方向性を持つ」ことはむしろ今後により大きな意味を持つだろう。

2、エントリーするタイミングを計る:
たった5銘柄で130%もの評価損を抱えたのは、エントリーするタイミングを間違えたからだ。それでもこれら主要輸出銘柄は、その後の円安で急騰するので、続けていれば大変なパフォーマンスになっていた。ここでも1の「方向性を持つ」意味が大きかったことになる。

3、確実に利食う:
297回の売買損益は合算で+350.1%、保有12銘柄の評価損-173.0%、が意味するところは、この中に損切りが多く含まれているにしても、小さな利益を積み重ねたということだ。

私はプロでいた頃から、常に方向性のある売買を行っている。ポジションに利が乗ってきたなら、できるだけ利益を伸ばそうと心掛けてきた。閉じると、その時点ではポジションがゼロとなり、その後の展開が取れなくなったからだ。それは為替や債券が、基本的に単一商品の売買で、基本的にドルの上げ下げ、金利の上げ下げに連動して動くからだ。

しかし、株式ではフルポジションを維持したままで、銘柄入れ替えで利食うことができる。しばらく上げてきた銘柄と、ここから上げそうな銘柄とを比べる時、つまるところは上げ下げのリスクが同じなら、実現益を確保しようということになる。その時、エスチャートスクリーナーを用いれば銘柄探しが容易になるので、1つの銘柄に入れ込み過ぎることなく、銘柄入替回転ができるのだ。

エスチャートの宣伝ばかりしているようで心苦しいが、もともと自分の運用を便利にするために開発したツールなので、自分としてはお裾分けのつもりなのだ。どう受け取って頂いても構わない。

限られた資金を運用し、リスクを限定しながら、上昇相場を取りに行くには、ロングポジションを維持したままで、銘柄入れ替えという利食いを行うことが効果的だ。リスクが限定なのは、そういった利益が当初の運用資金の1割になれば、残るリスクは9割。半分になれば半分。運用資金を超えれば、事実上、リスクゼロで上昇相場を取りに行けるからだ。

こういった運用手法で私が留意しているのは、売買に支障がないだけの流動性があることと、銘柄の財務内容だ。業績が悪くてもタイミングさえ良ければ株価は上がるが、潰れてしまっては堪らないからだ。また、財務の良い会社は、自社株買いを行ったり、TOBがかかったりして、思わぬ利益につながることも何度か経験した。

米連銀が早ければ9月にも量的緩和を縮小させるのではとの懸念で、世界の金融市場は動揺している。とはいえ、緩和そのものが終わるのはまだまだ先だ。通貨の大量供給による量的緩和は、通貨価値の下落を生む。モノに対して下落すればインフレ。他通貨に対して下落すれば円安。株や債券、不動産に対して下落すれば資産インフレとなる。それが、雇用拡大、所得増に結び付くまでには時間がかかる。何もしなければ、所得や預貯金はインフレと増税、社会保障費負担増などで目減りだけする。

私は、世界的にカネ余りが続く中、債券市場から流出した資金も加わって、いずれ株式の大相場が来ると見ている。それで株式をフルポジションでロングにしているが、上げ下げの中で銘柄を入れ替え、少しずつ利益を積み上げている。乱世にも利があるのだ。参考にして頂ければ幸いだ。