消費増税と経済対策で、株価は上昇?

消費増税と経済対策で、株価は上昇?
消費増税と減税+景気対策の組み合わせは、個人から企業への所得移転を意味している。攻撃は最大の防御なり。個人が自らの資産を守るには、企業とリスクを共にすればいい。株を買うのだ。
来年4月から消費税率を8%に引き上げ
消費税率の引き上げが決定された。政府は8兆円を上回る増税による景気の腰折れを懸念し、減税2兆円を含む総額5兆円規模の経済対策を固めた。ここで、5兆円規模の経済対策が有効かどうかを問うならば、増税という景気の腰折れ懸念を排除するべきだったとの意見がある。増税と減税の組み合わせといった、手間暇をかけるより、増税せずとも、景気が上向けば増収になるし、景気が上向かないのなら、そもそも増税は避けるべきだからだ。

なぜ、そんな手間暇をかけるのかは、誰の仕事を増やすのかを鑑みれば、簡単に答えがでる。また、増税+減税は相殺ではなく、資金の移動という観点から見れば、その真意が見えてくる。そこで初めて、その経済効果を検討することができるのだ。

結論から述べると、増税の準備段階から仕事が増えたのは「官」だ。そして、消費増税により「民」から資金を吸い上げ、手にした資金を「官」の判断で配分する。すなわち、増税+減税は、「官」の仕事と裁量権を増やすこととなる。そうしてみれば、その経済効果を検討するには、「民」よりも「官」の方がビジネス・マインドを持ち、経済運営が上手いかどうかを問えばいいことになる。

私は官はインフラの整備と、必要最小限の規制、監督に徹する方が、経済成長にはプラスだと考えている。官が介入すると、例えば、消費税の税率変更が個々の企業に与える損得や、駆け込み需要とその反動のように、歪みが生じることになる。また、減税や公共投資でも、個々の企業に損得がでる。こういった「歪み」は、投機的には大きなビジネスチャンスではあるが、先の長い成長にはむしろ阻害要因となることが多い。
大きな政府の効果と弊害
「官」の仕事と裁量権を増やすということは、「大きな政府」を目指すということだ。どの政府も構造的に大きくなろうとするものだ。裁量権がなければ行政が行えないからだ。ここで、大きな政府はどういうものかを振り返ってみよう。

20世紀で最も大きな裁量権を持った政府は、ソビエト連邦だったかと思う。ソ連政府は、国民生活の細部にまで裁量権を持っていた。産児制限はなかったが、言論の自由はもとより、移動の自由や、職業選択の自由も限られていた。

比較的少数の人々に与えられた大きな裁量権は、軍備や宇宙開発を含む大きな予算を必要とする公共事業を効率的に行える利点がある。また、用地の確保や労働力の確保に悩むこともない。そのため世界の2強となるには効率的だった。

このことは、事業適地に住んでいた人々は強制的に移住させられ、あるいは僻地への労働に何百万人も駆り出されることも意味していた。そして、競争力維持のために、国民の生活水準は低く抑えられた。今でいうブラック企業のような形で、経済成長を達成していたのだ。

とはいえ、大きな裁量権の最も大きな弊害は、決定権の偏在に伴う贈収賄など腐敗につながることだ。

21世紀になっても、世界の大きな政府は例外なく腐敗に悩んでいる。どこかの段階で腐敗を食い止めないと、政府そのものが浸食されて崩壊する。効果的な情報統制が効かない現在では、そのスピードが速い。大きすぎる政府は、その自重に耐え切れずに自ずから崩壊する可能性があるというのが、歴史が教えてくれることなのだ。
それでも株価は上昇する?
アベノミクスは「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢からなっている。

そして、4本目の矢として「東京オリンピック」が浮上してきた。3つ目の成長戦略には規制緩和が欠かせないとの意見が多いが、過去最大の予算請求や、増税+減税といった「大きな政府」指向は、本来の意味の、規制緩和の対極にある。その意味では、「官」の指導と、民の打たれ強さ、したたかさに期待するしかないだろう。

私は官はインフラの整備と、必要最小限の規制、監督に徹する方が、経済成長にはプラスだと考えているが、経済成長イコール株価上昇ではない。極端に言えば、個人が困窮しても、企業が発展すれば株価にはプラスだ。個人相手の消費税率を引き上げても、法人減税を行えば、株価は上げ得るのだ。

「大胆な金融政策」である異次元緩和は、通貨の大量供給により通貨安を生む。日本円が外貨に対して安くなれば円安。モノに対して安くなればインフレ。株式や債券、不動産などに対して安くなれば資産インフレだ。現状では、これらすべてに対して円は安くなっている。直接的な緩和効果は既に出ているのだ。

それでは、安倍首相が消費税率引き上げを表明した当日発表の指標から、その経済効果を見てみよう。

「8月の完全失業率は4.1%で、前月に比べ0.3ポイント上昇した。悪化は6カ月ぶり。完全失業者数は272万人で、21万人増。就業者数は6300万人で3万人減少した。

8月の有効求人倍率は前月比0.01ポイント上昇の0.95倍と、6カ月連続で改善した。リーマン・ショック前の2008年5月の0.95倍に並ぶ水準で、4カ月連続で0.9倍台となった。」

「9月の短観は、大企業製造業でプラス12となった。前回6月調査のプラス4から8ポイント上昇し、3四半期連続で改善。2007年12月調査のプラス19以来の高水準となり、2008年9月のリーマン・ショック前の水準を回復した。大企業非製造業DIはプラス14と、前回のプラス12から2ポイント改善し、2007年12月調査以来の高水準を維持した。大企業全産業設備投資は前年度比5.1%増と、前回の5.5%増から低下した。

中小企業では製造業が5ポイント改善のマイナス9、非製造業が3ポイント改善のマイナス1だった。」

「8月の従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比0.6%減の27万1913円だった。2カ月連続の減少だった。

基本給や家族手当などの所定内給与は0.4%減の24万1131円だった。賃金水準の低いパートタイム労働者の割合が増えたことで15カ月連続で減少した。特別給与は9.4%減の1万1992円。残業代などの所定外給与は3.1%増の1万8790円だった。

総労働時間は0.4%減の143.6時間。前年に比べて土曜日の日数が1日多く、平日の日数が1日少なかったことが響いた。常用雇用は0.8%増。このうちパートタイム労働者は2.2%増だった。」

「8月の2人以上の世帯の実質消費支出は前月比0.5%減少、前年比1.6%減少し、1世帯当たり28万4646円だった。前年同月を下回るのは2カ月ぶり。サラリーマン世帯の1世帯当たり消費支出は31万2622円で、前年同月比0.5%減少した。前年同月を下回るのは2カ月連続。」

これらの指標が象徴的に示しているのは、アベノミクスで恩恵を受けているのは法人であり、個人への恩恵は未だ至らずだ。ここに、個人消費増税+法人減税が加わるのだから、この傾向がまだ続く可能性がある。
今の自分にやれること
政策による「歪み」は、投機的には大きなビジネスチャンスではあるが、先の長い成長にはむしろ阻害要因となることが多い、と書いた。こう書くとネガティブだが、順序を入れ替えて、「歪み」は、先の長い成長にはむしろ阻害要因となることが多いが、投機的には大きなビジネスチャンスだとすれば、一転ポジティブになる。

私は現役時代、リスクテイカーという部署にいて、ディーリングなどで目先の利益を追求していた。世の不条理や、不公平、不公正に憤ることがあっても、それはそれ、目先は何が上がるのか、下がるのかを追及するのだ。それも、最長でも1カ月という目先だ。それができないと生き残れない。憤りが負け犬の遠吠えになってしまう。

では、政策や景気指標に見る、個人から企業への資金の流れに乗るには、どうすればいいのだろう。企業が豊かになって、従業員に還元し、雇用を増やすのを待ち続けるのも1つの方法だ。だが、目先の今できる対応は、企業の利益の分け前に直接的に預かることだ。株式を買えばいい。

昨年来からの日本株上昇の立役者は米国をコアとする海外勢だ。その背景は量的緩和によるカネ余りと、緩和の狙いである景気浮揚にある。日本人は総じて売り続けているが、それでも保有株式の値上がり益で個人の金融資産は増えている。では、日本の事業法人はどうだろう? 事業法人の株式・出資金資産は昨年末から急増している。(画像参照)

これを「企業はズルい」と感じていては、負け犬の遠吠えとなる。株式市場は素晴らしいシステムだ。あなたが企業とリスクを共有する覚悟を決めるだけで、リスクに応じたリターンが得られるシステムだ。上場企業はあなたが株主になることを拒否できない。そのリスクは数千円から始めることができる。リスクは投資運用に慣れてから増やせばいいのだ。