米国債のデフォルトは避けられる

米国債のデフォルトは避けられる
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10/16 文言一部追加
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米連銀のゴールは決まっている。雇用市場の目に見えた改善だ。財政の崖、米国債のテクニカル・デフォルト、景気の腰折れ、寄り道すればするほど、ゴールに至るまでのカネ余りが続く。少なくとも、バーナンキ現議長はそう言明し、イエレン次期議長も踏襲する見込みだ。つまり、株式の業績相場へ向けて、金融相場がどれだけ続くかの問題かと思う。米連銀の前代未聞の量的緩和は、株式の前代未聞の大相場の暗示なのだ。

日銀の異次元緩和も同様だ。増税、米国債のデフォルト、円安一服、景気の腰折れ、寄り道すればするほど、ゴールに至るまでのカネ余りが続く。つまり、こちらも近い将来の円安と、日本株高の異次元大相場の暗示かと思う。
米国初のデフォルトはどう起こるか
米連銀が9月18日に量的緩和の継続を決めた時、市場は予想外だと驚いた。しかし、その2週間後に政府機関が閉鎖されたことを鑑みると、連銀の行動は当然だったように思えてくる。財政予算枯渇、債務上限到達と、スケジュールは予め分かっていたのだから、金融当局が債務上限引き上げ確認前に緩和縮小を決めるなどは、リスク管理上、あり得ないほどの確率でしかなかったのだ。むしろ、市場関係者が浅はかだった。

米国債がデフォルトに至る今後のスケジュールについては、10月4日の日本語版ロイターの記事がよくまとめてくれていると思うので、読まれた方もいるとは思うが、全文を引用する。

(全文引用)
[ワシントン 4日 ロイター] - 米議会が債務上限引き上げで合意しなければ、米債務は17日にも16兆7000億ドルの上限に到達する見通し。財務省の日々の収支がどうなるのか正確には分からないため、デフォルト(債務不履行)がいつ、どのように発生するのか予測するのは難しい。

しかし、財務省の過去の同時期の銀行との取引明細書を見れば、今後どのぐらいのペースで資金が枯渇していくのか推測することは可能。以下、財務省の2012年10─11月の取引明細書を基にデフォルト前後に予想される展開をまとめた。

<10月17日>
財務省は借り入れを上限以下に抑えるための手段を使い果たし、債券の新規発行が一切できなくなる。この日は67億5000万ドルの税収が見込まれるが、社会保障関連で109億ドルの支出がある。こうした収支の結果、最終的な手元資金は275億ドル程度になる見通しだ。

<10月18─29日>
この時期、財務省の手元資金は急激に減少する。支出1ドルに対して収入70セントとなり、差額を賄うための新規債券発行もできない。

22日には収入が支出を35億ドル上回る見通しで、状況は一時的に好転する。ただそれも長くは続かず、24日には再び資金繰りが厳しくなる。財務省はこの日、軍事関連の下請け業者への支払いが18億ドル、メディケア(高齢者医療保険)に基づく医師・病院への支払いが22億ドル、社会保障関連で111億ドルの支払いが見込まれている。これに対して、税収・その他の収入はわずか96億ドルと見込まれる。

この時点で、米債券への信頼感が失われる可能性がある。政府はもはや債券を発行することはできないが、償還を迎えた債券を借り換えることは可能。投資家は毎週、1000億ドルの米債券をキャッシュアウトする機会があるが、再投資を選択することが多い。デフォルトへの警戒感から再投資が敬遠されれば、財務省の資金繰りは一挙に崩壊する。

<10月30日>
デフォルト発生。政府は70億ドルの支払いが履行できない状況に陥る。

財務省は、どの支払いを履行するか選択することはできないとしている。同様の事態に直面した2011年、財務省はすべての支払いを履行するだけの資金を確保するまで支払いを実施しない計画を立てたとされる。

そのような措置を今回もとった場合、学校向けの6億8000万ドル、福祉関連の5億5300万ドル、防衛関連の9億7200万ドルの支払いが履行されないことになる。

政府を主要顧客とする企業が受ける打撃は大きい。

デフォルトが続くに伴い支払い遅延が長期化し、数日間で数十億ドルの経済損失となる。

<10月31日>
今年のハロウィーンは、60億ドルの国債利払い日でもある。

利払いができなければ、米国債投資にはリスクがないという前提が揺らぐ。これまで確実に償還されてきたことから、世界で最も低いレベルに抑えられてきた金利は上昇することがほぼ確実。株式市場は急落し、消費者の財布のひもは固くなり、景気は一段と悪化する。

この日から財務省は厳しい決断を下し始めることになる。中国の債券保有者に支払うか、それともアフガニスタンに駐留する軍に資金を提供するのか。オバマ政権は優先順位は付けられないとしているが、アナリストは、政権が少なくとも優先順位付けを試みるとみている。

この分析に協力してくれたシンクタンク、超党派政策センターのアナリスト、ブライアン・コリンズ氏は「期日に利払いできないのは、他の支払いができないことよりも深刻な事態」と指摘した。

<11月1日>
この日をもって、米政府は未踏の領域に入る。

理論上、政府はいつまでも債券保有者が損失を被らない状態にしておくことが可能。利払いをしても余りある税収があり、財務省は他の債務と別のシステムを通じて債券保有者に支払いができるからだ。

ただそれは、債券以外の支払いがより遅れることを意味する。米軍は賃借料を払えず、年金生活者は日々の買い物にも困る可能性がある。

一方、もし財務省がハロウィーンの利払いを履行せず、政権与党と野党の対立が解消されない場合、米国の信用力低下につながる。米ドル、アジアでの銀行融資、イリノイ州の農作物保険コストなど、あらゆる金融商品の価値に疑問符が付く。

財務省は3日に公表した報告書で「デフォルトすれば前代未聞で壊滅的な打撃となる可能性がある」とし、「負の波及効果が世界に広がる可能性がある」と指摘した。

[以上、ロイター4日記事引用]
デフォルトは避けられる
「理論上、政府はいつまでも債券保有者が損失を被らない状態にしておくことが可能。利払いをしても余りある税収があり、財務省は他の債務と別のシステムを通じて債券保有者に支払いができるからだ」とあるように、デフォルトを避けることは可能だ。

このことは一方で、債券以外の支払いがより遅れることを意味する。一例を挙げると、イランなどに対する経済制裁が、制裁の執行、制裁逃れ取締りの両面から滞る。当事国にとっては有難いが、米国の国威が「張子の虎」状態となる。

一部の政府機関が閉鎖されたことで、米国の国威は既に低下した。「自由の女神」が見れらなくなったことを、日本のテレビが海外からの観光客にインタビューしていた。中国からの観光客だという若い女性は、「こんなこと中国では考えられない」と不満そうにしながらも、「だって、中国ではなんでも満場一致だから」と笑って言った。「自由の女神」を遠景に、決められない議会制民主主義国家と、なんでも満場一致の一党独裁国家との対比は秀逸だった。

米国の国威の低下ならば、シリア問題でも見られた。いや、イラク、アフガニスタンから、リビアなどアラブの春を通じても、一貫して下げ続けている。そんなことを国威の低下と呼ぶならばだ。

一方で、世界の上場企業の株式時価総額は、9月末時点で1社で世界の株式市場全体の1%近くを占める首位のアップルの4331億ドルから9位まで米国勢が占めた。次いで10位にスイスの医薬品大手ロシュが入った。先進国がトップ10を独占するのは、年末ベースで遡ると2005年以来となる。

ファクトセットの集計によるベスト10は、アップル、エクソン・モービル、バークシャー・ハサウェイ、グーグル、マイクロソフト、ジョンソン&ジョンソン、ジェネラル・エレクトリック、ウォルマート・ストアーズ、シェブロン、ロシュだった。

また、2013年半ばまでの1年間に新たにミリオネアーに加わった181万人のうち、168万人がアメリカ人だった。これで米国には1322万人のミリオネアーがいることになる。株高、住宅価格の回復など、広範囲にわたる資産価値の上昇が貢献した。増加数の2位はフランス、3位ドイツ、4位イタリアと、ユーロ圏が続いた。クレジット・スイスが報告した。

国名 2012 2013 増加数(千人)
USA 11,534 13,216 1,682
France 1,924 2,211 287
Germany 1,514 1,735 221
Italy 1,323 1,449 127
UK 1,412 1,529 117
Sweden 406 506 100
China 1,033 1,123 90
Spain 355 402 47
Canada 948 993 46
Belgium 231 269 38
World 29,867 31,680 1,814

世界のミリオネアーのうち、米国が42%、欧州が39%を占めた。また、トップ1%が98兆7000億ドルを所有し、世界の富の41%近くを占めた。これはボトム68%(32億人)を合わせた富の13倍にも相当する。

資産が500万ドルから1000万ドルのミリオネアーは全世界で200万人以上、5000万ドル以上は9万8700人、1億ドル以上は3万3900人となった。

減少数では日本がトップだった。30年来で初めての減少で、世界のミリオネアーに占める比率が8.4%と1割を割り込んだ。減少率では33%にもなる。

国名 2012 2013 減少数(千人)
Japan 3,964 2,655 -1,309
Brazil 233 221 -12
Argentina 32 27 -5
S.Africa 47 43 -5
Russia 88 84 -4
Egypt 25 22 -3
World 29,867 31,680 1,814

北米の家計資産は2013年半ばまでの1年間で12%増えて78兆9000億ドルとなり、2005年以来の世界一に返り咲いた。米国の住宅価格回復や株価上昇が要因だ。欧州は7.7%増の76兆3000億ドルだった。アジア太平洋では3.7%減の73兆9000億ドル。日本の家計資産が円安に伴い20.5%減ったことが響いた。

世界全体の家計資産は4.9%増の241兆ドル余りとなっており、今後5年間でさらに39%増えて334兆ドルに達する見込み。

日本の家計資産は円安に伴い20.5%減少した。こう書かれると、日本は随分貧しくなったように聞こえる。実際のところは、保有株式数こそ減少しているが、残存保有株式の上昇により、金融資産は円建てでは増えている。

為替レートは面白い。これまでの日本は円高により実感のない豊かさだった。20年ほど所得が減り続け、資産も増えないなかで、円高によりドル建てでは豊かになってきたのだ。

実感がないとはいえ、国際社会では真実で、輸出のコストは高く、輸入や海外旅行のコストは安かった。円は世界一高い通貨となっていたので、輸出のコストは世界一となり、コスト削減のために雇用は不安定になり、給与が下がり続けた。日本の観光地は有名だが、割高のために外貨の獲得もままならなかった。国際的な豊かさの陰で、国内はどんどん貧しくなっていたのだ。おかげで、安いはずの輸入や海外旅行も、通貨高を反映するほどには伸びなかった。

今、円安により日本の家庭は国際社会では前年比で20%も貧しくなったが、消費活動は上向きだ。海外からの観光客も増えている。ドル建てでは貧しくても、円建ての実感では徐々に上向きだ。為替レートは面白い。

日本のことはともかく、米国が仮にデフォルトしたにしても、それはテクニカル・デフォルトで、米国そのものが凋落したわけではない。それでも、私は他のどんな支払いよりも、米国債の元利金支払いを優先するかと思う。つまり、17日も、それ以降も、デフォルトはないかと思う。あまりに期日が迫っているので、そう断言するのはリスクが大きいが、それほど国債のデフォルトは深刻なことなのだ。

国債がデフォルトすれば、国債の元利金を当てにしていた他の支払いなどすべてが滞る。場合によっては、法人や個人の黒字破産が起きてしまう。そして、それは連鎖する可能性がある。世界一の残高を誇る、それほど信用され資産運用の中核となっている米国債がデフォルトすれば、それこそ何が起きるか分からない。一時的な大混乱は避けられないかと思う。
それでも株式市場にはフレンドリー
バーナンキ連銀議長は「財政の崖への対応が行われなかった場合、私がこれまで述べてきたように、われわれのツールは大きな財政の衝撃による影響を相殺するほど十分強力ではないため、そうした事態に備えた対策を検討する必要がある」と述べている。

このことで推測されるのは、仮に米国債がデフォルトになっても、連銀の機能が停止することはなく、むしろより強力な量的緩和が行われる可能性すらあるということだ。つまり、カネ余りは続く。あるいは、更に多くのカネが余ることになる。

米国債がデフォルトになれば、米国債を資産運用の中核としていた比率が下がる。いったん市場にはキャッシュが溢れることになる。のみならず、米連銀は更にキャッシュを供給する可能性がある。更に大量のカネ余りが続くのだ。

私はそのカネがどこに行くのかと考えている。コアの比率が下がるとすれば、分散の度合いが高まるかと思う。そして、株式投資は本質的にリスク分散なのだ。デフォルト・ショックで、一時的には株式の急落はあるだろうが、そのまま株式市場が下降トレンド入りするとは思えない。むしろ、大量のカネ余りを最も多く吸収する可能性すらある。

私などが想定するように、デフォルトには至らず、政府機関の閉鎖が景気後退に結び付くようなことがあると、米連銀の量的緩和はより長く継続されることになるかと思う。次期連銀議長に指名されたイエレン副議長は、バーナンキ現議長の緩和政策を踏襲する可能性が高い。つまり、雇用市場の目に見えた改善が見られるまでは、カネ余りが続くのだ。収益増、業績拡大、雇用拡大と続く、株式フレンドリーな環境は変わらない。

ブルームバーグのまとめた資料によれば、政府機関の閉鎖は、株式市場の買いのタイミングだ。1976年以来、政府機関が閉鎖された事例では、その後12カ月間でS&P500株指数は平均で11%上昇した。

中央銀行の政策には、比較的達成可能なことと、非常に困難なこととがある。リスクを受け入れるなら、自国通貨を発行する量的緩和は前者だが、外貨がからむ自国通貨の防衛は困難だ。米連銀の本腰の量的緩和には逆らわない方がいいかと思う。

米連銀のゴールは決まっている。雇用市場の目に見えた改善だ。財政の崖、米国債のテクニカル・デフォルト、景気の腰折れ、寄り道すればするほど、ゴールに至るまでのカネ余りが続く。少なくとも、バーナンキ現議長はそう言明し、イエレン次期議長も踏襲する見込みだ。ゴール前での脱落はそのまま破綻を意味するので、極めて可能性が低い。未曽有の緩和のリスクは、資産バブルを含めた、ハイパーインフレの方向かと思う。相場ではリスクとリターンは同義だ。資産バブルをリスクと捉えるか、リターンのチャンスと捉えるかは投資家次第だ。

つまり、株式の業績相場へ向けて、金融相場がどれだけ続くかの問題かと思う。米連銀の前代未聞の量的緩和は、株式の前代未聞の大相場の暗示なのだ。

日銀の異次元緩和も同様だ。増税、米国債のデフォルト、円安一服、景気の腰折れ、寄り道すればするほど、ゴールに至るまでのカネ余りが続く。つまり、こちらも円安と、日本株高の異次元大相場の暗示だと見ている。