貯蓄から投資へ:NISAの概要と、活用法

貯蓄から投資へ
NISAは比較的少額な資金ながら、株式などの長期投資での運用を促す制度だ。各業態の意向を反映した玉虫色の制度で、投資家にとっては中途半端なものとはなったが、非課税枠を有効利用しない手はない。

長期保有でも潰れる可能性が低く、高配当でそれなりの値上がり益が期待できる株式なら、NISAには打ってつけの銘柄かと思う。
NISAとは
NISAの概要を復習しておく。2014年1月からNISA(ニーサ)と呼ばれる少額投資非課税制度がスタートする。株式や投資信託などから得られた配当や譲渡益は、所得税、地方税合わせて20%の課税対象となるが(10%の軽減課税の特例措置は2013年12月末で終了する)、NISAでは毎年100万円を上限とする新規購入分を対象に、その配当や譲渡益を最長5年間、非課税にする制度だ。

制度対象者:  20歳以上の日本国内居住者
非課税対象: 上場株式、外国上場株式、公募株式投資信託、外国籍公募株式投資信託、ETF、REITなどの配当や譲渡益
非課税投資枠: 新規投資額で年間100万円が上限(最大500万円)
非課税期間: 最長5年間(買った年から数えて5年目の年末まで)
※期間終了後、新たな非課税枠への移行による継続保有が可能
投資可能期間: 平成26年~平成35年(10年間)
口座開設数: 1人につき1口座(口座は4年間は移動できない)

新規投資金額は年間100万円が上限だが、非課税となる配当や譲渡益に上限額はない。非課税期間が終了する時点で、一定の手続きの下、非課税期間が終了する年の翌年の投資枠を利用して、NISA口座で保有し続けるロールオーバーを最大限活用すれば、以下の表のように最長で14年間(2014年~27年)にわたって、非課税枠を享受できる。
画像:NISAのイメージ

NISAを利用するには、銀行や証券会社にNISA口座の開設が必要だ。口座開設の申込みは、この10月から既に始まっている。分別管理なので、投資家の資産の保護ということに関しては、銀行、証券会社、同じ条件下で安全だといえる。

非課税枠の利用には、4年ごとに税務署が交付する「非課税適用確認書」が必要で、申請手続きは、口座を開設したい金融機関で行う。口座移動が4年間できないのはこのためだと見ていい。

非課税の適用を受けるために、NISA口座で保有する上場株式等を売却した場合の譲渡益についての手続きは必要ない。配当については、配当の受取方法として、「配当を当該金融機関の口座で受領する方法(株式数比例配分方式)」を選択している必要がある。なお、譲渡益・配当ともに、非課税の適用を受けるために、確定申告を行う必要はない。

非課税期間が終了すると、NISA口座で保有していた上場株式等は、自動的に他の口座(特定口座等)に移管され、移管後に受け取る譲渡益や配当は、課税の対象となる。この場合、移管された上場株式等の取得価額は、移管された時の価格となる。

要注意点は、

1、金融機関によって購入できる商品が異なる(株式は証券会社のみ)。銀行で口座開設すれば、投資信託は買えるが、株式は買えない。証券会社が有利なのは否めないが、売買の手数料を収益源とする証券会社は、長期保有が前提のNISA口座では、それほど儲けられるわけでもない。

2、既に保有している上場株式などは対象外。NISA口座への移管はできない。

3、非課税枠未使用分の翌年への繰り越し、売却した非課税枠の再利用はできない。つまり、換金したら非課税はそこで終わり。他銘柄や投資信託への乗り換えはできない。年間の非課税枠を超える投資はできない。

4、他の口座との損益通算・損失の繰越控除はできない。(課税口座では投資損失は3年間繰り越しが認められている)

5、NISA口座での保有銘柄は信用の担保にできない。

などかと思う。
量的緩和で起きること
黒田日銀総裁は先週開かれた全国信用組合大会で、「量的・質的金融緩和の効果はしっかりとあらわれてきており、金融市場や経済・物価には前向きの動きが広がっている」とし、「予想物価上昇率が上昇しているので、実質金利が低下、民間需要を刺激している」との見方を示した。金融市場ではこの間、「株高や円高修正の動きが顕著になったほか、日銀による巨額の国債買い入れによって長期金利が強力に抑制されている」と語ったようだ。

また、「家計・企業の両部門で所得から支出へという前向きな循環メカニズムが働く下で、景気は緩やかに回復している」とし、「生鮮食品除く消費者物価指数が6月にプラス転換した後も伸び率を高めており、個人消費が底堅く推移する下で、幅広い品目に改善の動きが見られるようになっている」、「2%の物価安定目標の実現を目指し、必要な時点まで緩和政策継続する」と述べた。

大量の通貨供給で間違いなく起きることは、その通貨の価値が下がることだ。ところが、価値とは相対的なもので、何に対して安くなるかは分からない。通貨安を反対から見ればインフレだが、何がインフレになるかは分からない。

はっきりしているのは、通貨安はその通貨での資産を持つ者にはネガティブで、負債を持つ者にはポジティブなことだ。貸し借りした時の通貨価値よりも、返済時の通貨価値が低いからだ。つまり、国債の発行者には有利で、保有者には不利となる。

大量の通貨供給のよる円安で、ドル建てで見た日本の個人の金融資産の2割が失われた。もっとも、円を国内だけで使うならば問題はない。そこでの問題はインフレ率を見ればいい。つまり、日銀の金融緩和により、円建て金融資産の価値は少なくとも2%減価する。消費税率引き上げを加味すれば、金融資産の価値は更に低くなる。これは今後、間違いなく起きることだ。

ここで、金融資産の減少を防ぐには、2%のインフレ率を超えるリターンが望める資産を持てばよいことになる。もっとも、未曾有の金融緩和に警鐘を鳴らす人々はハイパーインフレを危惧しているので、2%のリターンでは心許ないかもしれない。増税もある。そう考えると、円建て債券など確定利付き商品や、預金では、資産の減価を食い止めることはできない。数パーセントの減価など関係ないような資産家ならば問題ないともいえるが、数パーセントの減価が生活を脅かす人ほど、真剣にリターンを求める必要がでてきたのだ。

金融緩和の意図は、雇用拡大を伴うような景気拡大だ。通貨安をつくれば、何かの価格は上がる。低利の資金とインフレ期待が景気拡大に結び付く可能性は無きにしも非ずだ。だが、そのためには、企業がその気にならないと駄目だ。

一方、通貨安をつくれば、何かの価格は上がる。ここまでは間違いがない。その時、株式や不動産などの資産価値が上がれば、資産効果で景気拡大に結び付き、雇用拡大、給与増につながるかもしれない。そこまで待ってもいいが、資産価値の上昇をそのまま享受してもいいのだ。

先週の木曜日、金曜日と連日で最高値を更新したS&P500株指数などの実例が示しているように、量的緩和が株高に結び付く可能性は極めて高い。
貯蓄から投資へ
NISAは諸官庁や金融機関の各業態の意向を反映した玉虫色の制度で、当局、業者、投資家のすべてにとって中途半端なものに見える。制度の狙いは、インフレ政策を遂行中の政府が、諸外国に比べて大きく貯蓄に偏った家計の金融資産を、少しでも株式に振り向けようとするものだ。
画像2:家計に占める現金・預金の国際比較

投資家にとっては、新規投資上限100万円で、再投資不可という使い勝っての悪いものとなった。投機は駄目、長期投資のみ、しかし、貯蓄商品を脅かさない金額でということだろう。あるいは、数パーセントの減価が生活を脅かす人への、天から降ろされたせめてもの蜘蛛の糸とも考えられる。

一方で、非課税となる配当や譲渡益に上限額がないのは大きなメリットだ。高配当を続けながら、値上がり期待の持てる銘柄なら楽しみが増える。
参照(関連リンク1):ヤフー・ファイナンス配当利回りランキング

スタートが来年、最大のメリットを享受するには、最長14年間保有ということなので、現時点で固有銘柄の推奨は差し控えたい。ここでの注意点は財務内容かと思う。長く持てる銘柄を探すことが肝要だ。投機とは別勘定で、積極利用したいものだ。