インターネットイニシアティブ 鈴木幸一代表取締役社長インタビュー

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インターネットは社会のすべてを変える


インターネットイニシアティブ
代表取締役社長
鈴木幸一(すずき・こういち)


1946年、神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、72年、日本能率協会入社。82年に日本アプライドリサーチ研究所代表取締役就任。92年、IIJ設立に参画し、94年4月から同社代表取締役。酒、タバコ、音楽、読書を愛するわが国ネット業界の重鎮。

 

インターネット黎明期に誕生し、高い技術力によって着実に実績を積み上げてきたインターネットイニシアティブ。今回はこのIT先駆企業を率いる鈴木幸一社長にビジョンをうかがった。


──御社の事業と沿革についてご説明ください


 当社はネットワークを利用したニーズのすべてに応えていく企業として、インターネット接続からシステムのアウトソーシングサービス、システムインテグレーションに至るまで信頼性と付加価値の高いサービスを提供しています。

 インターネット・プロバイダー業界においては、日本最大級の大容量バックボーンネットワークを構築し、信頼性の高い安定した高速インターネット接続サービスを提供しています。またオンデマンド型プラットフォームサービスをベースにして、お客様のビジネスに最適なシステムを提案し、設計・開発・構築・運用保守までのトータルサービスも展開しています。

 当社は1992年にインターネットの商用化を目的として誕生しました。それ以来、ネットワーク技術の分野では常にイニシアティブを取り続け、日本のインターネット業界をリードしてきました。日本のインターネットの歴史は当社の歴史であるといっても過言ではなく、日本にはまだ存在していなかったインターネットの事業をゼロから自分たちの手で作り上げてきたという自負があります。

 当社のサービスは官公庁や大手・中堅企業を中心に約6500社に導入され、企業の基幹ネットワークや大規模ポータルサイトなど、多くのビジネスのインフラを支えています。また通信事業者やCATV事業者の多くは当社のバックボーンに接続しています。ネットワークを利用するニーズのすべてにワンストップで応えているのです。


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──まさにインターネット業界の先駆者ですね


 創業当時、インターネットはアメリカでは普及していましたが、日本ではほとんど知られていませんでした。そうした中、日本でも誰もが手軽に使える情報通信基盤を提供したい、という思いを持った技術者が集まって、マーケットを創出してきました。当時はそれこそ会社が梁山泊みたいな状態で、不眠不休みたいな仕事をしていたことが思い起こされます。

 インターネット接続サービスは2000年頃に価格競争が激化しましたが、当社はこれに追随せず、アウトソーシングやネットワークの構築・運用・保守を複合的に提供する「トータル・ネットワーク・ソリューション・サービス」へとビジネスモデルを転換し、成長してきました。

 当然ながら、業態はインフラの変化によって変わるもの。今は情報と通信が融合する時代になってきました。インターネットの世界でも、また違った展開になると考えています。そのために適切な手を打ち、技術者を成長させることが必要となってくるでしょう。将来を見据えてそのための準備をしていくということが常に必要になってきます。

 ただ、当社は今でも〝神田の町工場〟といわれるほど、意外と昔ながらの経営スタイルを取っている部分もあります。気長に若い技術者を育て、育った才能こそが最大の経営資源。こんな考えが経営の基本となっています。


──現在、世はクラウド時代といわれていますが


 私は、スティーブ・ジョブズこそ、実は最初のネット世代の経営者といえるのではないかと思うんです。OSではなく、ネットありきのパソコンという思考です。将来、ネットワーク技術が進歩することによって、スマートフォンのような端末が、パソコンにとって代わるということが、彼には前からみえていました。

 でも私の個人的な意見を言えば、クラウドという言葉は輝いて聞こえますが、これはある意味、デフレやコストカットという概念を伴っているということです。アセットレス~共有~コストカットという流れにならざるを得ない。所有するのではなくシェアするという考え方ですから。ただ、そういう本質を持ちながらも、おそらく時代の要請として、クラウドは発展していく。

 そしてクラウド時代のネットワーク社会では技術革新も恐ろしく早く、世界的な競争も激しくなるでしょう。これは逆に言えば、誰もが世界のプラットフォームになれる可能性があるということ。そのために必要なのは国際化です。だから、今後はより積極的に、欧米やアジアにパートナーを求めていかなくてはならないでしょう。

 当社のクラウド時代に向けての具体的な取り組みを挙げれば、国内向けクラウドサービスでは「IIJ GIO(ジオ)」の進展があります。海外では3月に「IIJ GIO USサービス」の提供を開始し、案件を順調に獲得しています。

 またこれも3月から、中国向けクラウド・サービス提供に向けてチャイナ・テレコムと戦略的提携を締結しました。ちなみに日経BP社の「第4回クラウドランキング」では3部門でベストサービス賞を受賞しています。


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──それでは最後に、鈴木社長にとってインターネットとは?


 インターネットは社会の全てを変えてしまうもの。私は当社を設立した20年も前から言っていますが、その状況が現在、目の前で展開され始めた感があります。

 でも、これは実はまだ序章に過ぎないと思っているんです。インターネットが社会を本格的に変えていくのはこれからなのです。そうした社会的な変化を前にして、IIJは今までと同様にこれからも、常に時代のイニシアティブを取れる会社であり続けたいと考えています。


【取材メモ】


 「早稲田の文学部出身でどうしてインターネットの世界に」とうかがったところ「文学部といっても専門は線形文法だったから抵抗感はなかったね」と鈴木社長。日本のインターネット業界の草分け、重鎮でありながら気さくに取材を受けていただきました。

 端々に感じられたのは仕事とインターネットへの愛情と熱意。「本当に良く働いた」という言葉に実感がこもっています。お酒、タバコ、ゴルフを愛するのと同様に、インターネットを愛しておられるのでしょう。

 毎年上野で開催される「東京・春・音楽祭」の実行委員長を務めているのも熱意の賜物です。著書、「文明漂論」の帯には「不安で理不尽な時代だから勇気と野心を持とうじゃないか」という言葉。俄然、この先のIIJへの期待感が高まりました。



[ 会社概要 ]
社名:インターネットイニシアティブ
市場:東証1部
コード:3774
上場年月日:2005年12月2日
設立:1992年12月3日
決算月:3月
☆連結業績(2012年3月期)
営業収益●973億1500万円
営業利益●63億5300万円
税引き前当期純利益●59億7600万円
通期純利益●36億4100万円
☆トピックス
わが国のネット接続の草分け。法人向けのシステム構築や情報セキュリティに定評。クラウド時代に即した松江データセンターが注目を集めている。


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