東日本復興で明日の世界をリードする日本のモデルを作ろう


東日本大震災、復興に対する提言
東日本復興で明日の世界をリードする日本のモデルを作ろう



震災復興を日本変革のモデルに、第三の開国の実現を。東日本経済繁栄の鍵はグローバル分業での地位獲得と自給経済・生活圏の組み合わせをもつ多層分業構造の建設にある。そのためには強い権限を持った地域政府を創立し、資源投入優遇と規制・制度のしがらみの排除により、(経済)合理性を徹底する必要がある。その過程では、域内資源の有効活用とキャッシュフローを金融資産に換える創造的金融方式の確立が望まれる。また福島原発事故をわが国エネルギー政策の抜本的再構築の契機にしなければならない。その方向は分散型・再生可能エネルギーへの長期転換である。東電の処理や原発の扱いも、長期戦略の枠の中で考えるべきである。復興に当たっては「円安=賃金上昇」と「資産高、株高」が復興原資となりえる。震災をデフレ脱却の契機とするマクロ経済政策が望まれる。


第一章 復興と改革の方向、震災を転機に変えよ
(1)歴史的課題、世界的課題
(2)日本の何が問題か
(3)日本が目指すべき方向と東日本復興


第二章 東日本復興で分散型・ネットワーク型国土・国民経済の建設の雛形を
(1)多層分業設計に基づく、産業雇用配置
(2)金融の整備
(3)改革主体の形成


第三章 産業と国民生活の背骨、エネルギー戦略の大転換
(1)エネルギーの発展段階と原子力の限界
(2)エネルギー戦略の方向、分散電源、再生可能エネルギーへ
(3)市場経済をベースとし、日本の優位性を生かすエネルギー改革を
(4)東電の処理・・・・保証債務を電力事業から遮断せよ


第四章 復興原資に隠れた埋蔵金「円安=賃金上昇」と「資産高、株高」を使え
(1)円安とデフレ脱却が復興のエンジンになる
(2)資産価格上昇を震災復興の原資に



第一章 復興と改革の方向、震災を転機に変えよ



「黒船」は百家争鳴の議論を一気に収斂させた。「大震災」は日本改革の方向性「第三の開国」にむけ、一気に国民合意を形成させ改革を推進するものとなる可能性がある。震災が無かったとしても、現状の政治、経済、生活のフレームワークが20年30年続くことは困難であった。進展するグローバリゼーション・インターネット革命と取り残される地方、高齢化する農業・漁業、過疎、原子力依存のエネルギー体制等々、震災を機に持続可能な環境を作ることが求められる。


⇒世界はフラット化、開放化、民主化、公正化に向かっている、日本は第三の開国によりその先頭に
⇒震災の復興は、そのような明日の日本の原型作り、拠点作りに
⇒東日本の地に「日本が世界に誇る幸せの形」「繁栄(生産性上昇)の形」をつくろう
⇒それにしては、課題の多い日本、日本の何が変わるべきか


(1)歴史的課題、世界的課題


輪郭を現しつつある「世界共和国(Global Commonwealth)」のかたち


日本はどのような国でありたいか、今求められる理念と制度のフレームワークは何か、キーワードは経済民主主義とフラット・ネットワーク化、グローバル化であろう。今世界は大きく変わろうとしている。あえて概念的に言えば、アメリカによる覇権的世界統治から世界共和国へのシフトである。アメリカは世界の覇権国から「世界共和国(Global Commonwealth)」のリーダーへと変質しようとしている。徐々に実態を形作りつつある「世界共和国(Global Commonwealth)」 の理念作りに、各国が競争して案を提示しプレゼンスを主張している。ことにアメリカの変化が顕著である。良くも悪くも米国価値観を押し付けようとしていると受け取られたブッシュ前大統領のアメリカから、オバマ大統領のアメリカへの転換である。オバマ大統領は初の黒人大統領であるだけではなく、核廃絶の呼びかけ、自制的リビア攻撃、イスラエルに対する1967年以降の占領地返還要求など、著しく国際世論に配慮した政策にシフトしつつある。


なぜアメリカが変質しようとしているか、3つの要因が指摘される。第一は米国経済の相対的地盤沈下・新興国の発言力の高まり、第二に米国の価値観と制度の世界普及が鮮明になったこと、第三に米国が世界新時代の潮流であるフラット化・分散化・開放化の技術変化、制度変化を主導していること、である。つまり米国は「世界共和国(Global Commonwealth)」の実現により国益を貫徹しようとしているのである。それでは「世界共和国(Global Commonwealth)」の理念として共有されつつある事柄とはどのようなものか。①民主主義、人権擁護、②市場経済、資本主義、③インターネット環境への対応、適用、フラット化、④地球環境の保全、⑤Global Governance の発揮(世界各国の夜警国家化、治安権力化)などが骨格となるアジェンダではないか。各国政府は「世界共和国(Global Commonwealth)」の理念遂行を、分担して担う主体となりつつある。今世界各国は「幸せの形作り」で競争している、と考えられるのではないか。


日本の「第三の開国」の意義


こうした世界環境の中で、「第三の開国」と呼ばれる日本の転換が迫られている。「第三の開国」とは、世界の中での日本のポジショニングの再定義である。明治維新で実現した第一の開国は列強の世界分割、帝国主義時代への対応であった。自らを世界分割の勝者たらしめるための、「富国強兵」が政策の軸となった。第二次大戦敗戦によって実現した第二の開国とは、パックスアメリカーナ、米国の覇権的世界統治への対応であった。「軽武装町人国家」に象徴される経済偏重時代であった。そして今求められる第三の開国とは、「世界共和国(Global Commonwealth)」Global citizen ship への対応ということになろう。日本は「世界共和国(Global Commonwealth)」の時代に繁栄し尊敬される国として存在し続けることができるか、が問われている。そのカギは「日本が世界の人々が求める幸せのモデル」を提供できるかどうかである。


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(2)日本の何が問題か


露呈した日本の弱点


「世界共和国(Global Commonwealth)」の時代の到来を考える時、震災があっても無くても日本は変わらなければならなかった。震災は日本の新時代に適応できない弱点を曝け出した。最も深刻な日本の問題点は、(経済)合理性がほとんど働いていない、と言うことであろう。人々の営々たる努力が、豊かな生活や明るい明日に繋がっていないあり様では、世界の共感を得ることは不可能である。日本には報われない努力と不当な利得が共存している。例えば日本の企業労働者は生産性を上昇させてきたのに給料は全く上がってこなかった。企業は利益を増加させているのに株価は長期下落から脱したとは言えない。政府の赤字が増えれば増えるほど政府の借金のコスト(金利)が低下する。同一労働同一賃金の原則が全く働かない(例えばごみ収集や給食労働者の顕著な官民格差、元請と下請けの給与格差など)。共同体志向で内と外の著しい差別(正規・非正規の格差)が存在している。Intelligence や調査情報に対する軽視がはなはだしく、論理的な政策立案・企業戦略・投資戦略の策定ができず、決定的な誤りを冒すことが頻発している。


これらは日本社会が原生的ゲマインシャフト(gemeinschaft=共同体)であり目的合理的なゲセルシャフト(gesellshcaft=利益社会) 化していないことと関連がある。 (経済)合理性の欠如が著しい無駄をつくり、資源配分歪ませ生活の質を劣化させている。不平等な所得配分、生産者に薄く財政や年金依存者に厚い報酬、老前の勤労期間より老後の不労期間が長い人生(前期高齢者の知的資源が浪費されている)、民間金融からの資本の継続的流出、長期投資(教育・研究開発・新規ビジネスモデルの開発)のサボタージュ、起業困難と不能企業の延命、資産家の日本脱出、勤労意欲と出世意欲の低下、Japanese Dreamの喪失、模範の喪失、規範の喪失などである。


そうした構造を背景に不適切な思想と政策が展開されている。場当たりで主体性ない政策(継続性や先例、他国例依存の責任取らぬ政策、意思決定)、問題解決と危機管理能力の著しい欠如は今回震災でも見せ付けられた。これでは「世界共和国(Global Commonwealth)」において、主導的役割を果たすことはできない。


(3)日本が目指すべき方向と東日本復興


震災復興で日本改革のモデルを


日本国の再定義を震災復興の過程で実現して行く(新生日本の模範を作る)こととは、「世界共和国(Global Commonwealth)」で尊敬され、繁栄できる国とは何か、「日本が提供できる世界の人々が求める幸せのモデルとは何か」の追求でなければならない。その第一は民主主義・人権・資本主義市場経済という世界共通の価値観の確立と主張である。ことに(経済)合理性の貫徹が求められる。第二に日本固有の優位性の再確認と維持(技術・品質・チームプレー・伝統重視)が求められる。第三にアジアでの存在感(最大の民主主義国・環境・技術・民度・自然・歴史)に対する配慮が必要である。


震災復興に際しては、上述の日本の欠陥(行政制約・規制・慣行)をスキップすることにより、東日本が「世界共和国(Global Commonwealth)」の中で位置づけられる必要がある。東日本復興は、(経済)合理性の徹底と言う、世界基準に沿って遂行されなければならない。日本と言うより東日本が世界に如何に役立つか、シリコンバレー、スイス、シンガポール、香港、ドバイ、など世界各地域がそれぞれの独自性を有利に活用して「地球共和国Global Commonwealth」に参加しているように、東日本が自給経済圏として、世界にかかわって行かなければなるまい。つまり地方分権というより地域国家の創設といった大胆な構想が必要ではないか。



第二章 東日本復興で分散型・ネットワーク型国土・国民経済の建設の雛形を



⇒「東日本の幸せ作り」は資源投入優遇と規制・制度のしがらみのスキップで
⇒グローバル分業での地位獲得と自給経済・生活圏の組み合わせを
⇒域内での無駄の有効活用、人と金、土地、資源
⇒創造的金融を、キャッシュフローを金融資産に、親切の貯金箱を
⇒強力な地域政府の創設を、首長は公選、徹底した地方・地域分権を


(1)多層分業設計に基づく、産業雇用配置を


グローバル分業のための産業集積を


東日本を過疎、少子高齢の辺境から、成長の拠点に変換しなければならない。そのためには第一に自立した地域経済圏の確立が必要である。産業、物流、金融、社会保障、その推進主体となる復興院と著しく自由度を増した地方・地域政府の創設が必須である。第二に多層の分業構造を前提とした経済・産業設計をする必要がある。多層分業構造とは、下の表に示すように、地域がグローバル分業、日本国内分業を担う(世界や日本全体を顧客とする産業・企業を持つ)ことで外から所得を取り込むとともに、多くの要素を地域内で自給できると言う、バランスの取れた域内産業構造を意味する。



グローバル分業に参加するという観点からは、東日本の地に世界に敵う産業集積を築き上げる必要がある。まず既存のハイテク素材・部品・装置を軸としたグローバルハイテク生産の拠点、サプライチェーンの核のという位置づけを強化する必要がある。また近年勃興しつつある自動車・機械産業の集積も強化するべきである。サプライチェーンの漏出を回避するための優先的政策配慮が緊要である。製造業に加えて観光業(アジアの観光拠点)や一次産業もグローバル分業の対象となりえる。農林水産業を東日本でハイテク化・高付加価値化し、農産物のブランドづくりをするべきである。青森りんご、山形さくらんぼ・ラフランス等の成功例を広げ、アジアに販路を拡大する余地があるのではないか。TPPの参加によるグローバル基準に即した農業改革と国際競争力の強化が必要であろう。


また震災復興を促進する観点から、新たな産業・雇用基盤を政策によって付与することも有効であろう。東日本に国家プロジェクトとして資源投入を行い首都機能分散移転、文化教育センターを建設することなどが考えられる。首都移転案としては国会を阿武隈山系か那須山系に移すこと、東大の阿武隈移転(塩崎元内閣官房長官)、東北大学の産学協同の技術開発センターとしての拡充、例えばシリコンバレーにおけるスタンフォード大学のような形態に育てる、などの可能性が考えられる。


自給経済・生活圏に必須の分散型インフラ整備


グローバル分業や日本国内分業の拠点建設とともに、被災地を主体に民度の高い自給経済・生活圏の創設、地域、都市新規開発も緊要である。そのための資源として、地域にある無駄(有効に活用されていない)な資金、土地、人の有効活用が必要である。そうした資源を適切にマッチングさせる市場の創設が期待される。そのためには後述する地域クレジットの創設や、最先端のインターネットファシリティーを導入することが有用であろう。地域資源の有効活用の仕組みとしては、復興街づくり会社による雇用確保、復旧した設備の売却益による資金確保(5.11日経新聞大西隆氏)、などの提案が示されている。過疎による行政やサービスのコスト高を回避するためには、ある程度の人口集中を実現するコンパクトシティの創設などの創意が求められる。


多層分業構造設計に見合う、供給力体制としてのインフラの整備(エネルギー・交通・通信・金融・行政サービス)は、国家プロジェクトとして国が制度設計と所要資金調達の道筋をつけるべきである。交通面でのグローバルアクセス、分散エネルギー体制スマートシティ、スマートグリッドの実験は特に望まれる。例えば自然エネルギーは、大規模発電所に比べて極めて小規模かつ短期的に投資ができる。太陽光発電工事は町の工務店や電気屋さんでできる。他方地域金融は預貸率が低く地域の投資先がない。そこで地域のエネルギー事業に信用保証協会の保証をつければ、地域金融から数兆円単位の資金を回す仕組みができる。


規制と既得権益をクリアする自立権力を


新機軸導入に際して、規制と既得権益をクリアする必要がある。その第一は土地利用制度の改革である。八田達夫氏(大阪大学招聘教授)と、吉田修平氏(政策研究大学院大学客員教授)は「土地の集約化による有効利用を妨げる規制、所有権を迂回する仕組み、つまり所有権変換」や「定期借地権による土地集約」を提案している。「被災した地主たちが各自の土地を借地人(地方自治体や第三セクター、企業)に、定期借地権を活用して例えば50年貸すと、借地人は集約化された土地に集合住宅を建設できる。被災した地主たちは、地代の受け取りに代えて集合住宅の区分所有権を取得できるので、無償で建て替えができることになる。」また「現在の農地法では株式会社は農地を保有できず、農地集約化の障害となっている」として、「農地法の制約」のクリアを提案している。(5.10日経新聞)。


同様に伊藤隆敏氏(東京大学教授)、伊藤元重氏(東京大学教授)は「復旧を断念する海岸沿いの地域の土地を買い上げ、移転先候補地の確保、区画整理、容積率緩和、など土地や建物に関する詳細な規制を適用除外するため、震災特区を活用すべき、土地売買や土地交換に関する税制を弾力的に運用する必要がある。」と主張している。(5.23日経新聞)


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(2)金融の整備


将来キャッシュフローを裏づけとする証券金融の創設を


被災復旧、原発補償は公的資金で賄うべきであり、まずは国債発行で手当てすべきである。増税は復旧・成長実現の後にするべきである。復興原資の確保にはいわゆる財政埋蔵金の活用も考えられる。しかしより重要な復興原資には民間金融が充当されるべきである。震災を機に日本型の直接金融、証券ファイナンスの雛形を追及するべきではないか。例えば東北の遊休資本、銀行や信連などに眠っている預金を投資ファンドに誘導することなど、民間主体の金融循環の確立が望まれる。そのカギは、企業や家計などの経済主体が将来生み出すと予想されるキャッシュフローを金融資産化し、その流通市場を整備することである。キャッシュフロー資産の売却により資本確保が可能となり、投資が促進されることとなる。東電の送電部門、被災農地・漁場、住宅、工場など生産設備、土地所有権、漁業権などがその対象となるだろう。


こうした金融の確立のために、政策による収益ビジネスモデルの揺籃、投資家の勧誘、企業収益化と金融のリターン化の支援、所有権を整理し売却し、復興投資や新規ビジネスの原資とするスキーム、市場機能を軸とした制度政策体系づくりが望まれる。復興資金ファイナンスとして、公営企業の将来収益を担保としたレベニュー債、民間のプライベートエクイティとしての東北復興ファンド、企業創生ファンドなども考えられる。日銀と政府資金の寄与でコストが引き下げられる等の制度整備が例えば、東北復興自由金融市場の創設が可能となる。それは海外からの投資招聘に役立つだろう。


太陽電池の普及に当たっては、ドイツで成功した太陽光発電電力の長期固定価格買い取り制(FIT、Feed in Tariff)の活用が有効であろう。 FITは設備を設置する主体に対して長期にわたるキャッシュフローを保証するので、直ちに金融資産として証券化でき資金調達が可能となる。地域の遊休資本が投資に転換するきっかけになるかもしれない。


前述の地域の資源マッチングにあたっては、地域通貨(クレジット)の創設が有用であろう。いわば「親切の貯金箱」(いわば親切ポイントの積み立て、流通)である、これをインターネットを活用することでより広範に活用できる。


漁業の再興のためには漁業権の開放が有効である、との主張がある。小松正行氏(政策研究大学院大学教授)は、「東北は日本の漁業生産の15%、水産加工・冷凍冷蔵業では15から30%、漁業者は3.6万人で全国の15%を占めていたが、震災により壊滅に近い被害を受けた。近代的資源管理制度を導入し、乱獲防止により価格下落防止と資源確保を図る一方、高齢化する漁業(60歳以上が50%)、後継者不足を解消するために、漁業権の開放をすすめ新規参入を促すべきである、ワカメ、カキ、ホタテ養殖を含む漁業権が売買可能になれば、被災地への民間資金の投入が可能になる」として、企業化による自立を求めている(日経新聞5.24)。 養殖カキの所有権販売や漁業者による起業などの事例が報道されている。


(3)改革主体の形成


地域政府の創設を、首長は公選で


世界に通用する地域開発を遂行するためには、規制・慣行など(経済)合理性を損なっているしがらみを突き破る強いリーダーシップが必要である。その核となる地域地方政府は首長を公選し、地域分権、地域自治のモデルを作らなければならない。地方議会と選挙制度改革、改革特区の創設など多くの可能性を検討するべきである。既得権益(合理性を阻害する最大勢力)、の打破、教育の変革とグローバル人材の育成なども必要である。新理念の担い手としての新政党、地域政党の創設、インターネットを基盤とした新しいメディアの創生も必須であろう。日本人を糾合する新しい旗印がやがて憲法の改正、ネット時代に不可避の直接民主制の導入となって国政改革に結びつくことが望まれる。



第三章 産業と国民生活の背骨、エネルギー戦略の大転換



⇒短期的電力供給は原発とLNG火力で
⇒集中大量電源から分散型スマートエネルギーシステムへ
⇒原発から再生可能エネルギーへの長期転換を
⇒「世界的熱効率向上競争」に勝てる供給主体の確立を
⇒東電をゾンビ(「第二のチッソ」)にするな
⇒原発を国営に


(1)エネルギーの発展段階と原子力の限界


集中・大規模発電から分散小規模発電へ


人類の経済発展は生産性上昇とともに実現してきたが、その推進力となったのはエネルギー革命である。人力・家畜・水車・風車といった一時エネルギーの時代から、1800年代以降の化石燃料革命により、現代の石油・電力文明が発展した。この石化革命の限界が見え、エネルギー戦略が転換点を迎えつつある。将来的には再生可能エネルギー、分散電源へのシフト、が趨勢となりつつある。分散革命は情報・金融ですでにおきたことであるが、今後エネルギー分野で進展すると見られる。集中・大規模発電から分散小規模発電へという流れは、エネルギー需要構造の変化、つまり「産業主体から民生主体へ、エネルギー多消費産業から省エネ産業へ」、という需要シフトとも符合している。情報通信の世界では大型コンピュータと固定電話の集中型から、パソコンと携帯電話の分散型に発展することで、様々な機器需要とサービスが花開き、雇用も生まれた。エネルギー分野でも類似したことがおきる、と考えられる。分散電源のモデルの確立は自給的経済・生活圏作りの中核になるだろう。


原発国策の背景と高コスト性


石化燃料から再生可能エネルギーへの移行における過渡期のクリーンエネルギー源として注目を集めていた原子力で、福島原発事故により、その安全性の瑕疵が浮上した。事故が起きてみてはじめて原子力発電が実は高コストであったこと、不可欠の国策として推進されてきたこと(核兵器開発能力維持という政治要因と不可分の核技術)、が明らかとなりつつある。それ故に、経済合理性や安全性の客観的検証が十分なされないままに、「原発推進」「原発反対」の二者択一の不毛な議論が展開されてきた。


植田和弘氏(京都大学教授)は「原子力に偏重する計画が作られた理由の一つは、原子力発電の経済性にあったが、原発の発電コストは過小評価されていた。放射性廃棄物処理などバックエンド(後処理)の不確実性が十分考慮されていないし、原発のための巨額の財政支出が発電コストに組み込まれていなかった。立命館大学の大島堅一健一教授の「再生可能エネルギーの政治経済学」によれば、財政支出も含めて発電に要する総費用を計算すると、原子力発電は高価な電源になる。原子力発電の経済性は国家によってつくられた経済性と言わざるを得ない。特定の発電を支援する財政支出は、様々な発電技術の実用化の可能性が出てきているにもかかわらず、電源相互間の競争をゆがめていると言う問題もある」(5.19日経新聞)、と主張している。政府や電気事業連合会による公式コスト比較では原子力がもっとも安価な電源とされている。電気事業連合会によると水力10.2円/kwh 、LNG火力 7.0円、石炭火力7.2円、石油火力12.2円 に対して原子力7.3円となっている。しかし大島教授は1970年から2007年までの有価証券報告書を使って10電力会社合計の実績コストを算出し、原子力が最も高コストであることを発見した(大島氏による実績試算では水力3.98円、火力9.90円、原子力10.68円、揚水を含む原子力12.23円 )。しかし大島氏の試算にも、原子力に投入されている財政コストや、後世に残される廃棄物処理コスト、原発事故の補償費用は含まれていない。しかも原発は他電源に比して圧倒的に固定費が大きいため、稼働率と設備耐用年数により、コストは劇的に変化する。電事連の公表原発コスト7.3円の前提は耐用年数は16年と法定耐用年数によっているが、稼働率は80%と現状のほぼ2倍となっている。それらを修正すれば原発コストが著しく上昇することは明白である。


加えて今やキッシンジャー元国務長官、ペリー元国防長官も核軍縮、核廃絶を訴える時代となり、オバマ大統領は2009年、プラハで核廃絶にむけての米国の包括的構想を表明した。核によるポーカーゲームの時代は終りつつある。核に頼らない平和が展望される時代、核保有をしていても利用できないことは明白な時代にあって、明白に利用できない核兵器は軍事戦略上無意味となる。原子力は軍事的にも経済的にも再検討されるべき時期に至りつつある。


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(2)エネルギー戦略の方向、分散電源、再生可能エネルギーへ


分散電源化で熱効率の向上を


長期的観点からは再生可能エネルギーへの転換が不可避である。そうすれば年間17兆円(GDP比3%強)の石化燃料輸入コストを削減できる。とは言え、石油価格の急騰、CO2排出削減の中で、今まで大きく依存してきた原発に当分頼らざるを得ない。しかしつなぎとしての天然ガスも大いに注目される。天然ガスは石炭に比べてCO2の排出量が40%も低い上、最近の米国で展開されているシェールガス革命(頁岩中に含まれる天然ガスの採取が技術革新で可能となり天然ガスの可採埋蔵量が急増し天然ガス価格が急落、資源限界は当分消えた)により、「低炭素社会への懸け橋」との期待が高まっている。


幸い天然ガス発電は、熱効率が高く分散電源に適している。この際コジェネ(熱電併給)の導入により熱効率を一気に高めるべきではないか。熱効率を比較すると、LNG火力50%、石油火力40%、原子力30%となっている。また自動車ではガソリンエンジン32%、ディーゼル46%、電気自動車70%となっている。


石井彰氏(石油天然ガス・金属鉱物資源機構特別顧問)はコジェネの効果を次のように説明している。「日本では、消費している全エネルギー量の45%を発電に投入しているにもかかわらず、発電時に熱エネルギーの約60%を喪失し、化石燃料が本来持っているエネルギー量(熱量)の約40%しか電気になっていない。さらに送変電時のロスにより最終エネルギー消費に占める電力の比率は25%にしかならない。この無駄を減らし有効利用することが、既存技術で、しかも低コストで可能である。・・・・例えば既存の石炭火力を新型のガス複合発電機に切り替えれば、発電効率は一挙に5割向上しCO2排出量は約6割も減少する。また、従来の需要地から離れた臨海部の大型発電所に換えて、燃料電池を利用した分散型電源を商業ビル、ホテル、学校、病院、マンションなどに設置すれば、これまで無駄に捨てられていた廃熱も温水や暖房に有効利用でき、エネルギーの有効利用率は最大で90%程度となる。」(5.24.11エコノミスト)


(3)市場経済をベースとし、日本の優位性を生かすエネルギー改革を


エネルギー政策確立の国民的議論を


エネルギー政策の根本的転換は不可避であり、それに向けた国民の合意形成が必要である。徹底した情報公開の下で日本国民全員が当事者意識を持ってエネルギー問題を議論し、方向を決めることが望ましい。それは国民教育的な意味でも、国民が自分の将来に責任を持つと言う点でも、きわめて大きな意味がある。次いでエネルギー統括の司令塔を作るべきである。原子力委員会、資源エネルギー庁、総合エネルギー調査会という既存のエネルギー政策機関をすべて解体、新しいエネルギー政策機関として総合エネルギー戦略会議を内閣府の下に設けて、その下に環境エネルギー省をつくるべきと言う提案がなされている。


菅首相は「エネルギー基本計画を白紙に」戻し「原発事故調査委員会」を発足させると発表した。さらには「発送電分離」について検討することを示唆した。また5月のドービルG8のサミットにあたっては「2020年代の遅くない時期までに再生可能エネルギーを20%まで高める」と国際公約した。その方向性は間違ってはいないが、国民のより深い理解と支持、コミットメントを得る努力が必要である。それなしには改革は不可能である。


市場経済の基盤にたつ電力改革を


電力改革に当たっては市場競争の導入が不可欠である。平田育夫氏(日本経済新聞コラムニスト)は以下のように主張している。「日本の電力料金は韓国や中国の2倍以上と高い。・・・東レは今年初め、韓国に炭素繊維の量産工場を作ると発表した。電気代の安さは、大きな魅力。」「これまでの電力自由化で発電事業への新規参入、工場や商店への小売解禁などが実現し、電力会社の送電網を使い小売などを手がける特定電気機市場者(PPS)といった新規事業者が誕生した。ところが、仏造って魂入れずで、10電力の支配はほとんど変わらない。電力の全国販売量のうち新規事業者が担うのは、3%弱。送配電網の使用料が新規事業者の販売価格の2割と(高いため)。・・・大手電力会社間の競争も無いに等しい。・・・競争を促すカギは送配電網を多くの事業者がつかいやすくすること。切り札は発電部門と送配電部門を分ける発送電分離。経産省は10年ほど前、これを目指したが、電力会社の猛反対で断念した。英国ではサッチャー政権が1990年にイングランド・ウェールズ地域の国営電力会社を3つの発電会社と1つの送電会社に分割・民営化し発電を自由化した。小売では12の配電局を民営にし新規参入も認めた。・・・電気代の半分を占める発電部門で競争が進めば、コスト削減の効果は大きい。・・・発電に参入する企業が増えれば、大手が事故の時にも停電を避けられる。風力・太陽光発電も、送配電を安く使えるようになれば利用しやすくなる。」(5.16日経新聞)


日本が再生可能エネルギー革命の先頭に→新たな生産性革命


日本でもスマートグリッドの実験は、部分的には進んでいる。第一生命は関東、東北の保有ビル100棟を対象に、使用電力量をリアルタイムで把握し、使用量の限界に達すると必要性の低い順に供給を止めるシステムを稼動させたと報道された(5.18日経産業)。発電と消費の状況を瞬時に捉え、適切な配電を行い、需給を管理する仕組み、スマートグリッドの導入は電力の効率化をもたらす。日本には世界で最も関連技術、関連企業が集積している。日本が再生可能エネルギー革命の先頭に立つことで生産性革命が期待できるのみならず、関連技術は日本の一大産業をもたらすだろう。環境、エネルギー関連はいずれも複合技術ゆえ、日本型総合企業に優位性がある。また素材技術、半導体技術、重電技術、通信技術、システム技術など、膨大な技術の裾野をもち、その全てを一国内で賄えるのは日本だけと言っても過言ではない。WHを買収し原発を事業計画の柱として位置づけてきた東芝は、スイスの世界最大手のスマートメーター企業ランディス・ギア(シェア32%)を買収し、再生可能エネルギーへのシフトを鮮明にしている。分散電源関連では、マイクロガスタービンや燃料電池、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などの普及が展望される。


仮にエネルギー革命により化石燃料の輸入が不要になれば、年間で20兆円のコストが節約できる。それを割引き率3%として資本還元すれば660兆円となる。つまりエネルギー転換投資には最大で660兆円という巨額の経済価値があるといえるのである。故に税制、金融面での促進、誘導制度の創設が望まれる。


(4)東電の処理・・・・保証債務を電力事業から遮断せよ


解決はプラグマティズム(実利主義)で


今回の事故の第一義的原因が想定外の天災であること、そもそも原発はコスト論議を超えた国策としてスタートしたこと、の二点から法と道理に基づいた、満点の解決策は無い。どのような政策にも、欠陥、批判、不満が残るのはやむをえない。正しい回答はプラグマティズム(実利主義)の観点から下されるべきである。つまり望ましい結果をもたらす解決策を誘導するべきである。そして望ましい解決策とは、東電(または東電の後継企業)が歴史的な重大な使命、日本に産業の血液である電力を供給し続ける使命、再生可能エネルギーと分散型電源ネットワークを軸とするエネルギー革命の推進主体になることである。


その観点から最悪の選択は、東電が存続しかつ無制限の補償義務を負担し続けることである。コストは電力料金として課され、新規投資は抑制され、エネルギー革命は大きく足止めされる。東電を補償支払いのためにのみに存続する「チッソ」のような企業にしてはならない。


原子力は国営に


東電解体と第二東電の創設、東電送電部門の売却益の活用、は検討に値する方策であろう。すでに東電株式時価総額は3.6兆円から0.63兆円へと3兆円下落、10電力合計では5兆円減少しており(3.11から5.17までの2ヶ月強で)、株主は予想される賠償などのコスト増をすでに織り込んでいる。つまり補償、賠償金の支払いや原発処理などの追加コストを存続会社に残しこれから生まれるキャッシュフローを享受する第二東電を創設すれば、そこで3兆相当の資金調達が可能となる。いずれにせよどうすれば東電がエネルギー革命とスマートグリッド建設の推進者になれるのか、が問われる。


その際異常なコスト負担が明らかとなった原発は東電のみならず、国有化することが望ましい。民間電力企業が国策としての原子力発電コストを払い続けることには、無理がある。原発民営維持の現行システムは、電力会社が(経済)合理性を追求することを困難にし、ひいては望ましいエネルギー改革推進の足かせになってきたのではないか。


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第四章 復興原資に隠れた埋蔵金 、「円安=賃金上昇」と「資産高、株高」を使え



⇒震災復興の成否のカギは「デフレ脱却」のマクロ環境の下でおこなうこと
⇒「デフレ脱却」のマクロ環境の下では「円安=賃金上昇」と「資産高、株高」が復興原資となりえる


(1)円安とデフレ脱却が復興のエンジンになる


円安転換でデフレは終る


震災は日本に20年間続いたデフレを終わらせる、引き金になる可能性が強い。その第一の要因は需給ギャップの縮小、リフレ政策の本格化である。16~25兆円の災害被害の復旧には大型の財政出動は必須である。また、緊急の流動性供給も待ったなしである。平時では小出しであったリフレ政策が本腰を入れて行われなければならない。震災の復旧は予想されたとおり急ピッチで進み、秋口には震災前の生産水準に戻ることはほぼ確実である。


第二に震災によって誘導された意外性のあるG7による協調介入は、長期円高トレンドを転換させるものとなるだろう。過去G7の協調介入は5回あったがいずれも協調介入は為替の長期トレンドの転換点となっている。今回も介入はファンダメンタルズに合致しているので、成功する可能性が高い。日本が震災で更なる金融緩和を迫られているのに対して、米国や欧州は金融緩和政策の出口が検討され始め、金利差の拡大が視野に入っている。


円高の終焉は日本の「失われた20年」を終わらせるだろう。1990年代円は購買力平価の2倍という異常な過大評価となり、日本企業のコストを一気に国際水準の2倍に押し上げた。日本の労働者の賃金も国際比較で2倍となったために、企業は雇用削減、正社員から非正規雇用へのシフト、生産の海外移転など劇的なコスト引き下げを迫られた。その結果企業競争力は維持されたが、労働賃金がその犠牲となり、日本を長期デフレに陥れた。同様に2008年以降、リスク回避から円が突出して買われたが、それにより日本は再びデフレに陥り、日本株の極端な不振をもたらした。しかし円安になれば日本の賃金は割安になるので、引き上げの余地が出てくる。円安はグローバル企業の収益をV字型で押し上げると言う効果もある。


(2)資産価格上昇を震災復興の原資に


日本のデフレ=市場価格が本来の価値を著しく下回っている状態


日本には過去20年間の潤沢な蓄え(いわば埋蔵金)があり、震災がそれを発揮する契機になると考えられる。過去20年間の蓄えとは、円高とデフレである。円高とデフレは日本の賃金、株や不動産などの資産価格において本来価値(Value)からかけ離れた低市場価格(Price)を形成せしめた。価値と市場価格の差額は蓄えと言え、いずれ賃金上昇、株高となって戻ってくる。適切なリフレ政策が実施され、賃金と資産価格が本来の価値を取り戻せば賃金上昇と株高が起こり、日本経済を長期停滞から救出するだろう。それは格好の震災復興原資になる。


円高阻止は日銀の掌中に、日銀は量的緩和拡大へ


どうすれば円高とデフレを終らせることができるかは、FRBが見事な処方箋を示してくれた。ゼロ金利でも効かない時には量的金融緩和を続ければいいのである。昨年末からのQE2によりFRBのバランスシートは大きく増加し、株高とドル安が米国のデフレ圧力を著しく減殺した。日銀もFRBに追従する姿勢を見せている。白川日銀総裁は「必要な場合には適切な措置を講じる」と語り、西村副総裁は量的緩和の拡大(資産買取を10兆円から15兆円に増額)を提案した(4月28日政策決定会合で)。円高阻止でG7の合意が得られている以上、円安誘導に何の問題もないはずである。この日銀の姿勢は円の天井感の形成に、大いに役立つ。世界的にはドル安が続いたとしても、対円では80ドル/円を超える円高はあり得ない、(あったとしてもごく一時的)と考えられるのである。


値下がり準備金」が超過利潤に


FRBが示したように、量的金融緩和は株価など資産価格に対しても大きな影響を及ぼす。日本の株式益回りは7%、長期金利は1%、差し引き6%のプレミアムがある。このプレミアムは歴史的にも諸外国との比較でも極端に大きく、日本株の割安さ(価値と価格とのギャップ)を示している。この6%のプレミアムは「値下がり準備金」と考えられるのではないか。過去20年間で株価は3分の1に下落した。それは年率5%のペースであり、投資家は5%の値下がりを織り込んだ価格を求めていると考えられる。しかしこれ以上の値下がりが無いところまで株価が低下したとすると、この5%の「値下がり準備金」は投資に対する超過利潤となる。


株高が経済好循環の起点に


FRBの経験に習い日銀が(資産購入を増額して)株価のフロアを設定すれば、5%の超過利潤を求めて投資家が日本株に殺到するだろう。同様の事情は不動産価格にも共通する。東京の不動産のスプレッド(投資利回り-ー長期金利)は世界最高であり、日本の不動産の割安さを示している。


過去20年間で日本から1500兆円前後の株式、不動産時価が消えた。毎年100兆円弱、GDPの20%近い富が減少して来たわけであるから、深刻な負の資産効果を経済に与えた。極端なリスク回避が行われ、国民の金融所得の減少は内需に深刻な影響を及ぼし続けた。しかし現在の資産価格は、妥当な水準よりも大幅に下がっている。それは言わば「マイナスのバブル」であり、今回の震災によって本腰を入れたリフレ政策が打ち出されれば、資産デフレが資産インフレに転換する可能性が高まる。それはこれまでとは逆に年間50~100兆円レベルという膨大な資産効果をもたらす。


「マイナスのバブル」是正に当局もコミットせよ


リーマンショックは大不況を招くことなく収束した。そのカギとなったのは総予算7000億ドルのTARP(Troubled Asset s Relief Program)の成功である。実際に支出された額は4110億ドルであるが、その6割を占める銀行支援プログラムは、返済と売却益等で既に黒字(回収超過)となっている。今残っている残高の大半はAIGとGM、クライスラーの自動車2社の株式であり、それらも赤字は回避できると推測されるので、結局巨額の財政支援はコストゼロ(または若干のプラス)で終ることとなる。この成功の要因は資産価格の上昇である。売りたたかれ、価値(Fair value)に比べて著しく割安となった市場価格(Price)に当局が介入し、その後の価格上昇で経済と金融が安定化したばかりか、支援プログラムに利益をもたらしたのである。2008年末時点での米国の社債大暴落、住宅ローン債権暴落が価値を反映したものでないことは、その後市場価格が回復していることから明らかであろう。


資産価格が「マイナスのバブル」化している(市場価格が価値を大きく下回っている)ことは、市場が恐怖心に冒され正常に機能していないことの現れであるが、当局の果敢な対応により、価格是正と経済と金融回復が同時になされたと言えるのである。これはそのまま現在の日本に当てはまる。日本は政策しだいで賃金上昇と株高を実現できる好機にある、と言える。これこそ「失われた20年」に蓄えた日本の貯蓄である。空前の国難の今、それを使わない手は無い。