上昇する海運市況と新興国投資

新興国株式と米国株指数
先週末発表された11月米雇用統計などで、米国経済の底堅い回復が改めて示された(12月9日レポート参照)。2013年半ば以降の世界経済は米国を中心とした先進国地域の回復が牽引し、それが株式などのリスク資産を押し上げる構図が強まっている。
一方好調な先進国と比べて、中国など新興国経済はなかなか安定せず、新興国の株式市場は相対的に冴えない。7月初旬までの株式などの調整が大きすぎた反動で、9月まで新興国の株式や通貨は大きく反転した。その後は、10月になって中国における短期金利上昇などが嫌気され、新興国の株式市場は伸び悩み気味である(グラフ参照)。先進各国の金融緩和を続ける姿勢が投資家心理を安定させる一方、経済政策が不安定な新興国に対する不確実性が意識された面があるのかもしれない。
バルチック海運指数の動向について
米国や日本経済が牽引する形で世界経済の復調が起きているなら、新興国経済へも恩恵が及ぶ面がある。その兆しが、最近増えているように感じられる。例えば、海運市況の需給動向を反映するバルチック海運指数は、11月末から大きく上昇し、直近高値の10月中旬の水準を超えてきた(グラフ参照)。同指数は短期的な要因で大きく動くので、参考指標の一つだが興味深い動きである。

この海運市況の上昇が、先進国と新興地域の間での貿易取引の活発化を示しているなら、先進国の景気回復が新興国に波及しつつあることを意味する。
中国輸出金額の推移からわかること
この兆候は、中国の11月分の貿易統計でも現れており、11月の中国の輸出金額は前年比+12.7%と大きく伸びた(グラフ参照)。地域別にみると、米国向け同+17.7%、欧州向けが同+18.4%と特に高い伸びなった。単月の中国の貿易統計はフレが大きいことを割り引く必要があるが、先進国の国内需要の復調が、新興国にも及び始めている可能性を示唆している。
もちろん、不安定な政治動向や、インフレ抑制に配慮する政策運営に起因するリスクが中国などの新興国には依然ある。ただ、先進国の経済回復が、新興国経済の減速を和らげ経済安定をもたらしつつあるとすれば、これまで見放されてきた新興地域に対して投資妙味がでてくるだろう。米国を中心に先進国の株高の勢いが強まる中で、世界経済回復を前提とするなら、新興国を含めてリスク資産の投資対象を広げる視点が必要かもしれない。