アキュセラ・インク 窪田 良CEOインタビュー

「失明の克服」へ治療薬開発
眼科領域の世界トップ企業目指す

「地球規模で役に立つ薬を作りたい」―― 米国を拠点に事業展開するアキュセラ・窪田良CEO
アキュセラ・インク
(東証マザーズ・4589)

CEO
窪田良(くぼた・りょう)
 

今年2月13日、東証マザーズ(外国株)にバイオベンチャー企業が新規上場した。米国シアトルに本社を置く「Acucela Inc(アキュセラ・インク、4589)」がその会社だ。同社の目指す目標とは「失明を克服する新薬の開発」。「日本人による貢献を世界に示したい」と語る窪田良・会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)に同社の戦略を聞いた。
 

──アキュセラの事業内容を教えてください

「当社の基本的なミッションは、失明を克服する新薬の開発だ。飲み薬による失明の防止を目指しており、この新薬ができれば世界は変わる。医療の大きなブレークスルーとなると考えている」
「具体的に、いま力を入れているのは、加齢黄斑変性に対する経口治療薬である〝エミクススタト〟の開発などだ。加齢黄斑変性とは、欧米で失明原因の1位となっている目の病気。その9割を占めるドライ型に対する治療薬がいまはない。残り1割のウエット型は目への注射による治療薬があるが、患者の負担は大きい」

──エミクススタトの開発状況は

「現在、第3相臨床試験(フェーズ3)の段階にある。一般的には新薬の開発の可能性は3万分の1とも言われる。それが、フェーズ3の段階となると新薬の上市の可能性は2分の1になる。特に、エミクススタトは、米食品医薬品局(FDA)の優先審査対象品目の指定も受けている。業績は安定的な黒字を確保していくことで、今後も株主価値を棄損しない形で事業を進めていきたい」

──飲み薬に焦点を当てた理由はなぜですか

「日本だけではなく米国だけでもない、地球規模で役に立つ薬を作りたいという想いがすごくある。だから、最初から飲み薬でいこうと決めていた。注射では使える人が限られるが、飲み薬ならどこにも運んでいける。得られるインパクトははるかに大きい。日本人は社会に貢献する有益な存在であるということを示したい」
「飲み薬での開発は難しいという発想もあるだろう。しかし、網膜というのは脳の一種。脳の病気であるアルツハイマーに飲み薬があるように、目の病気を飲み薬で治すというのは、自然な選択だと思う。眼科医は目のことだけに関心が向かったりする場合が多いが、これは違和感のない発想だと思う。この仮説が正しいことを証明したい」

──本社を置く米国ではなく日本に株式上場した理由は

「米国という場所を使いベスト&ブライテストを集める大リーグのようなチームを作り、日本のおカネやパートナーの協力を得てビジネスを進めてきた。こういうビジネスモデルがあることを日本で知ってもらいたいという気持ちはあった」
「米国は人材の流動性が高く、優秀な人材も大企業を目指すばかりではなく、興味があればベンチャー企業など小さな会社に行く。ハーバード・ビジネス・スクールでもトップの3分の1は起業し、真ん中の3分の1は起業する人についていき、残りの3分の1が大企業やコンサルタント会社にいくと言われている。何もないところに価値を見出す人が最も社会的に尊敬される。当社も、日本や米国だけでなく世界のために、失明の防止薬の開発を行うという、ミッションを掲げている。アキュセラの目標は、まずは新薬を上市することだが、先行きは眼科領域での世界一の会社を目指したいと考えている」

──日本の現状はどうみていますか

「日本でも震災以降、ソーシャルアントレプレナー(社会的課題の解決に取り組む起業家)を含め、飛び出そうとする人は増えているようだ。実際に起業する人は米国でも多くはない。しかし、誰にもチャンスはあるし、やってみたらうまくいくということはある。多くの日本人が、世界に出て切磋琢磨してほしいと思う」

◆アキュセラ・インク会社概要
2002年創業のバイオベンチャー企業。眼科医や米ワシントン大学での助教授を務めた窪田良氏が米シアトルで設立した。眼科領域に特化し失明疾患の撲滅を目指している。今年2月に東証マザーズに6年ぶりの外国企業による上場を果たした。大塚製薬と共同開発契約を結び、SBIグループが大株主となっている。新薬の開発から販売までを手掛ける垂直統合型のスペシャリティ・ファーマを目指している。