欧米VSロシアの対立=外為どっとコム総研 神田卓也

欧米VSロシアの対立
昨日発表された米2月小売売上高は前月比+0.3%と3カ月ぶりに増加に転じた。7日の2月雇用統計に続きまずまずの内容となった事から、過去数ヶ月続いた悪天候による米経済の抑圧は一巡したと見られる。これまでの抑圧の反動を伴った今後の伸びに期待を持たせる内容と言って良いだろう。

そうした米景気雪解けへの期待にもかかわらず、昨日のドル/円は、NY市場で101円台半ばまで下落して今月4日以来の安値を付けた。
その背景は、ウクライナ情勢への懸念が高まった事にある。昨日、ドイツのメルケル首相が「ウクライナ問題でロシアが軌道修正しなければ、『甚大な政治的・経済的損害』を被る恐れがある」と警告したのに続き、米国のケリー国務長官も「クリミアで住民投票が行われれば、欧米は17日にもロシアに対して『重大な措置』を講じる」とした。

市場は、欧米諸国対ロシアの対立構図が鮮明となった事を強いリスクと認識した格好であり、16日にクリミア自治共和国で実施予定の(ロシア編入の是非を問う)住民投票が、その対立をさらに深める可能性が極めて高い事を嫌気しているようだ。
仮に、欧米の制裁が発動される事になれば、孤立したロシアがウクライナへの侵攻に突き進むという懸念も浮上する。
本日行われる米露外相会談が不調に終われば、市場はリスク回避姿勢をもう一段強める事になりかねず、ドル/円は下値警戒ムードが続くだろう。

ただ、ドル/円にとって本筋の材料はウクライナ情勢ではなく米国景気である事は明白だ。また、ロシアが過去に行ったアフガニスタン侵攻やグルジア侵攻によって米国景気が失速した痕跡は認められない。
だとすれば、米国景気に改善期待が高まる中にあっては米長期金利の低下は限定的と見られ、ドル/円の下落もまた限定的と見る。

短期的には、ウクライナ情勢への懸念がドル/円を下押す可能性があるが、超長期的な先高感を殺ぐ事はないだろう。したがって、ドル/円が年初来安値(100.754円)を割り込む公算は小さいと見ており、101円台前半は押し目買いのチャンスだと考えている。