不透明感が高まったものの、投資環境のさらなる悪化も考えにくい

不透明感が高まったものの、投資環境のさらなる悪化も考えにくい
~世界市場の底抜けは回避できようが、明るさが表れるまで時間がかかろう~


 世界市場の低迷が続いており、投資家にも動きが乏しい。12 月に入っての主要市場の動向を、月次見通し資料「花の一里塚」12 月号(12/1 付)で見込んでいた、今月中の予想レンジ下限(日経平均8300 円、日本10 年国債利回り0.95%、米ドル76 円、ユーロ102 円、豪ドル76 円)と比べると、日経平均が一時下限を下回り、ユーロも101 円台での推移が続いている。他の相場も下限に近い位置で動いている。


 月初時点で見込んでいた状況に比べると、予想以上に市場の不安心理が強く、欧州諸国の財政問題に対する取り組みも、何をやったかではなく、何をやらなかったか、という点ばかりに焦点が集まっている。このため、米国の株式市場においても、足元米国のマクロ経済指標の強さがほぼ無視される形で、欧州金融不安から金融株中心に売り物が嵩んでいる。こうした欧米市場の動揺は、欧米投資家による新興国株売りとなって、新興諸国の市場にも波乱を引き起こしている。


 このような不安にとらわれた世界市場といった状況は、残念ながら不透明感を一気に解消しそうなイベントに乏しいため、来年初になっても続く可能性が強まってしまった。たとえば米国経済の底固さなどが好材料として前面に出て、世界市場に明るさが見えるまでには、時間がかかるものと考えざるを得ないだろう。


 とは言うものの、たとえば今年10 月上旬や11 月下旬の動向と比べると、パニック色は薄い。株式市場の中でも、米国(ニューヨークダウ工業株やNASDAQなどの主要株価指数)(図1)やブラジル(ボベスパ指数)(図2)は、10 月上旬→11 月下旬→現時点での安値と、下値切り上げ型の動きをみせている。欧州株式市場でも、経済状況が堅調なドイツ(DAX指数)(図3)だけではなく、あれだけ財政問題が騒がれたイタリア(FTSE MIB指数)(図4)ですら、9月中旬→11 月下旬→現時点と、下値切り上げ型だ。(一方、日本を含めたアジア株には、外国人売りにより値を崩している物が多い。)(図6、7、8)


 外国為替の対円相場でも、主要通貨においては直近が今年の最安値とはなっていない(ユーロは10/4 の100.76 円が最安値で、きわどいが)。特に豪ドルは、前述の米国やブラジルの株価の動きと極めて似た、底値切り上げ型の値動きを示している(図5)。


 投資環境も、既にテーブルに乗った悪材料以上のものが押し寄せるとは見込みにくく、世界市場は明るさが広がるまでに時間はかかっても、逆に底抜けするような可能性も低いと考えられるだろう。


 以下、最近の動きなどについて、地域別に簡単に述べてみたい。


1.北朝鮮の金正日氏死去~当面は奇妙な安定とみるが、中長期的には東アジア情勢は混乱の可能性


 12/19(月)に、北朝鮮の金正日氏の死亡が公式発表された。北朝鮮の政情が混乱し、収拾不能になることに対しては、中国は極めて警戒している(大量の難民が中国に押し寄せる可能性や、政情不安が自国に波及するおそれから)ため、体制崩壊が生じないよう、食料等の支援を行なうと考えられる。このため、すぐに北朝鮮の体制が揺らぐことはないだろう。


 市場もこうした見方を共有しているようで、本日(12/20、火)の韓国総合株価指数の引値は1793.06 と、金正日氏死去が報じられる直前の水準(1793~1800 近辺)までほぼ戻している。韓国ウォン相場も、対米ドルや対円で死去報道前の水準を超えてきており、短期的な影響は完全に終息したと言える。


 こうした奇妙な(あるいは不気味な)安定が当面は続くと予想されるものの、中長期的には予断を許さない。後継者の金正恩氏の政権基盤は、後継者に指名されてからの期間が短く(約2年)十分な権力の移行が行なわれていないため、脆弱であると言われている。最終的には、チュニジアから始まりリビアやエジプトに波及した「ジャスミン革命」「アラブの春」と同様、北朝鮮に民主的な政権が誕生する、という楽観的な絵は描けなくはない。しかし少なくともそこに至る過程で、激烈な権力争いないし内戦、国内の不満を外に向けるための自暴自棄な軍事行動など、東アジア地区に緊張を引き起こす展開となる可能性は高い。


 とは言うものの、挑発行為以上の軍事行為(韓国や日本を実際に大規模攻撃するなど)は、その後米軍などによる攻撃の可能性を高め、北朝鮮政権にとって完全に自殺行為となるため、東アジアの緊張が強まるとしても、散発的な挑発行為の範囲にとどまろう(そもそも北朝鮮の基本的な外交政策は、核兵器をちらつかせながら、食糧支援等の実益を他国から引き出すことにある)。とすれば、たとえば日本の株価等の動向を左右するような、日本経済・企業収益などへの実体的な悪影響はほとんどないだろう。


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 一方で、北朝鮮問題が日本に与える実態面での影響を横に置いて、東アジア情勢を懸念した外国人投資家により、日本株の売りが嵩む局面はあるだろう(持続的、長期的なものではなく、一時的な動きに止まると考えるが)。


 この時為替相場については、対主要通貨で円安が起こるのが「道理」であると考える。しかし過去に北朝鮮が軍事行動を引き起こした時も、しばしば対主要通貨での円高が生じたことが実際にあった。こうした局面では、「韓国から日本に資金が逃避しているため円高だ」(これは、ウォン安円高の説明にはなるが、円高米ドル安等の説明にはならない)などの無理やりな理屈が押し付けられていたが、東日本大震災直後も含めて、日本にとって困ることが起こると、円高でさらに窮地に追いやられるような相場展開となったことが多いのも事実である。


 こうした、日本株は外国人売りで下落するが、円は安くならない、という局面が(短期的であるにせよ)生じることはありうるので、注意を要する。


2.欧州情勢については「魔法」が出ることはないが、着実にことは進んでいる


 引き続き、「欧州財政懸念」が囁かれている。直近の政策対応の動向では、最終的に欧州の財政悪化国への支援融資に用いられる可能性が高い、IMF(国際通貨基金)への各国からの資金拠出について、ユーロ圏諸国から1500 億ユーロ、非ユーロ圏諸国から500億ユーロが計画され、それが12/19(月)の欧州諸国の電話会合で決するものと予想していた。


 結局は、ユーロ圏諸国は予定通り1500 億ユーロを拠出し、欧州の非ユーロ諸国の中ではチェコ、デンマーク、ポーランド、スウェーデンの4カ国も協力することと決まったが、英国が関与を拒否したため、月曜日の欧米株価が下落する要因となった。


 このように市場は悲観的な反応を見せたが、IMFを使う仕組み全体がとん挫するわけではなく、英国の関与分(100 億ユーロ)が欠けるに過ぎない。また、12/19(月)付のフランスの経済紙レゼコーのインタビューで、ブンデスバンク(ECB~欧州中央銀行~傘下のドイツの中央銀行)のバイトマン総裁は、欧州各国の中央銀行は「IMF向けの融資拡大を支持する用意がある」と述べている。


 また、月曜日の欧米株価下落のもう1つの理由として、ECBのドラギ総裁が、欧州各国の国債の買い入れ増額について、後向きな発言を行なった、との報道が挙げられている。しかしECBが買い入れ増額に消極的な姿勢を示したことはこれまでも何度もあるため、新味のある悪材料とは言い難い。加えてECBは、有言実行ならぬ「無言実行」とも言える、着々とした欧州国債の買い入れを継続している(※1)。


 以上を踏まえると、欧州の財政問題を一気に解決するような「魔法」は出ないだろうが、政策対応は徐々に前進していると言えるのである。


 最後に、世界市場の動向の中で、前述したような、下値切り上げ型になっている市場動向のグラフや、逆に相場が崩れてしまっている市場のグラフを、参考のため添付する。





(※1)12/16(金)に終わる1週間では、ECBは欧州諸国の国債を33.6 億ユーロ購入している。これはその前の週の6.35 億ユーロから大幅な増加。5/10 に国債購入プログラムを開始してからの累計購入額は、約2110 億ユーロ。


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