米国とユーロ圏の「恐怖指標」を比べてみる

米国とユーロ圏の「恐怖指標」を比べてみる
~米国は一足早く恐怖から脱却、続いてユーロ圏も~


 これまで当方のレポートで述べてきた通り(※1)、米国における市場動向は、株価指数の動きに代表されるように、昨年10月初めを最悪期として、そこから底値切り上げ型の明るい基調に入ったように見える。この背景には、雇用情勢等の改善といった実態面からの裏付けがある。


 一方、米国市場における恐怖心理がどうなったかを見てみよう。株式市場においては、VIX指数がしばしば「恐怖指数」と呼ばれる。これは、株価指数であるS&P500のオプションの値段を取り、そこから先行きのS&P500指数の予想変動率を逆算したものだ。VIX指数が高いほど、オプションを売買している投資家が、今後の株価の動きが大きく荒れると考えていることを示す。


 また、米国企業の信用不安を測るうえでは、社債と国債の利回り格差(信用スプレッドと呼ばれる)がよく用いられる。


 そこで、米国証券・金融市場における総合的な恐怖の度合いを測るために、VIX指数と信用スプレッドの両方を合成してみた。具体的には、米国恐怖指標=VIX指数×(米10年社債利回り(BBB格)-米10年国債利回り)とした。


 この米国恐怖指標をグラフに描いてみると(図1)、昨年10月3日を恐怖のピークとして、その後は順調に市場の恐怖感が後退していることが推し量れる。これは、ダウ工業株指数の昨年初来最安値が10月3日(10655.30ドル、終値ベース)であったことと、ぴったり一致している。


(図1)


 すなわち米国市場は、いち早く昨年10月以降、恐怖からの脱却を進めていると言えよう。



(※1)たとえば、2011年12月20日付の一隅の花「不透明感が高まったものの、投資環境のさらなる悪化も考えにくい~世界市場の底抜けは回避できようが、明るさが表れるまで時間がかかろう」(2011-038)。


<!--nextpage-->

 一方、依然として周縁国国債に対する不安が根強いと言われるユーロ圏では、恐怖の状況はどうだろうか。現在のユーロ圏の不安の中心は、イタリア、スペイン等大国の財政の状況(実は財政実態そのものより、国債償還を借換債発行で乗り切ることができるか)である。しばしばイタリア10年国債利回りが7%を上回ったかどうかが市場の話題になるので、恐怖を測る一つの指標として、イタリア国債とドイツ国債の利回り格差を取り上げることは意味があるだろう。


 また、ユーロ圏全体に対する恐怖は、通貨ユーロの相場に表れていると考えられる。そこで、ユーロの対米ドル相場を、もう一つの恐怖を測る指標として取り上げよう。


 この2つを合成して、ユーロ圏の恐怖指標を作成してみよう。数値が上がれば上がるほど恐怖感が高まっている、という形に合成するので、ユーロ圏恐怖指標=(伊10年国債利回り-独10年国債利回り)÷ユーロ・米ドル相場とした。


 このユーロ圏の恐怖指標を見ると(図2)、先ほどの米国に比べると、市場の懸念はなかなか後退せず、今年に入っても一段と恐怖感が強まったことが示されている。


(図2)


 しかし今年1月9日をピークとして、市場の恐怖は薄らぎつつあるように見える。今年の欧州株式相場も、1月9日以降上昇基調を継続しているようだ。この明るい動きの背景としては、次の2点が挙げられる。
①ECB(欧州中央銀行)が銀行に潤沢に資金を供給し続けていることが、銀行の資金繰りを改善し、銀行がイタリア・スペイン等の国債入札に応じる意向を後押ししている(※2)。こうしたECBの「作戦」により、欧州諸国は最近国債入札を無事に乗り切り続けている(しかもS&P社の格下げが、ユーロ圏9カ国に対しては1月13日、EFSF(欧州金融安定ファシリティー)に対しては1月16日に行なわれたにもかかわらず、今週の国債やEFSF債の入札も順調)。当初市場は、国債入札の順調さを無視し続けていたが、さすがに無視することが難しくなってきた。
②IMF(国際通貨基金)が、G20諸国にさらなる資金拠出を呼び掛け、ユーロ圏の危機に十分対応できるだけの資金を準備しようとの動きを明らかにした(1月18日の諸報道)。英国は当初はIMFへの資金協力に後向きであったが、オズボーン英財務相は、1月18日の日英財務相会談において、G20がIMFをサポートするなら、英国もIMFに融資を実施する用意がある、と語り、ユーロ圏における安全網拡充の観測が広がっている。


 まだイタリア国債の2月の大量償還(500億ユーロ超)を乗り越えられるのか、等々、手放しの楽観は禁物だが、米国に続いてユーロ圏市場の恐怖も、後退に向かっている可能性があると考えられるだろう。



(※2)とはいうものの、一部論調で散見されるように、ECBが銀行に供給した資金が、そっくりそのまま国債購入に振り向けられている、というのは言い過ぎであろう。銀行は資金の大部分を、自行の財務立て直しなどに充てている(銀行から国債に向かっている資金は一部で、それが他の投資家が入札に積極参加する呼び水になっているにすぎない)と推察される。