2012年は日本株の年だ、「悲観の縛り」を捨てよ

2012年は日本株の年だ、「悲観の縛り」を捨てよ
~再論、米独日に吹くグローバリゼーションの順風~


悲観論のパラダイムを捨て去る時


ギリシャ・ユーロ危機の沈静化がもたらす変化に、市場参加者は目を白黒させている。株価は急ピッチに回復し、NY市場はリーマン・ショック後の最高値を更新した。また2月以降、休みなしの円安が続いている。更に、長らく世界の劣等生であった日本株式が、突出した好パフォーマンス(ドルベースの1年間のパフォーマンスは2012年3月9日時点で19.0%高と世界最高-ウォールストリート・ジャーナル紙)を見せている。いずれも大半の人々にとって想定外の動きであろう。こうした今年に入ってからの市場の動静に対し、多数派は「現在の株高は行き過ぎ、いずれ調整は避けられない」と見ているようである。それはそうだろう、但しそれは従来の世界経済危機のパラダイムで考えるなら、である。しかしパラダイムが変われば正しかったはずの判断が誤りとなるのである。


その時々の市場は大きな論理的枠組み(いわばパラダイム)によって支配されている。そしてある時、そのパラダイムが一変し、以前の論理が通じなくなる。成功体験に基づいて株を買い続ければ、時として訪れる大暴落により、成果の大半を失う。同様に、失敗体験に基づいて投資し続ければ、歴史の進歩に取り残されることは避けられない。「株式益回りが社債利回りの5倍、配当利回りが長期国債利回りの2倍」などという空前異常のバリュエーションは、危機メンタリティーに支配された一時期の現象にすぎない。中長期の市場予測に携わる人は、どのようなパラダイムを想定するか、を先ず決めなければならない。投資の成否はパラダイムの想定の適否に負っている。


図表1-2


急速な資金シフト、債券から株へ


今、世界の金融市場、殊に日本の市場は大きなパラダイムの転換期に差し掛かっていると考えられるが、それは危機メンタリティーからの脱却である。「恐慌の恐怖と隣り合わせ」=「異常に高いリスクプレミアムの時代」が、終わったという判断である。「恐慌の恐怖と隣り合わせ」の時代が終わったのであれば、安全資産からリスク資産への壮大な資金シフトが起き、世界的株高・円安が出現し、この「恐慌の恐怖と隣り合わせ」の期間の最大の被害者であった日本株式は最大の受益者となる。2009年以降、当社ストラテジーブレティンに於いて、一貫して主張してきた日本株式の大復活が開始されつつある、と考える。


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牽引車が新興国から先進国、特に米・独・そして日へ


パラダイムの転換は金融の世界にとどまらない。世界経済の成長構造の転換を示唆している。先進中核国(米・独・日)の復活である。リーマン・ショック以降、新興国でのリスクテイクが過多となる一方、先進国ではリスク回避過剰というコントラストが鮮明になり、たとえば中国ではインフレ加速やバブルの増大など、高すぎる経済拡大のひずみが出始めた。従って中国政府は2012年の経済成長率を7.5%と2004年以来の最低水準まで引き下げた。通貨高、中国向け輸出減速によりブラジルの経済成長率も急鈍化している。他方、先進国、中でも中核の米・独・日は企業の業績回復、家計の貯蓄上昇、資産価格下落など、経済調整が万端であることに加えて、需要と雇用の停滞から金融は超緩和の状態にある。今世界で一番必要な「需要を作る力」を米・独・日は蓄えていると言える。


こうした展開は常識的グローバリゼーション観の修正を求めるものである。グローバリゼーション、つまり国際分業とは通説のように『新興国の飛躍と先進国の停滞』ではなく、双方の発展であるはずである。国際分業において新興国はチープレーバーを提供するが、それのみでは経済は成り立たない。先進国が提供する技術、資本、経営ノウハウ、マーケティングが同様に成長に必須の資源である。従ってグローバリゼーションの恩恵も当然新興国のみならず、先進国においても享受されるべきものである。新興国では労働賃金上昇、生活水準の急上昇が起こっている。他方、先進国ではグローバリゼーションが企業利益を増加させている。リーマン・ショック後、米国の過去最高となる企業利益の急回復、大幅円高下での日本企業の収益の堅調さはグローバリゼーションの賜物である。


先進国の景気は企業利益と株高が起点に


先進国はいかにしてグローバリゼーションの果実を需要に転化するのか。①株高・資産効果、②先進国での知識集約投資、③世界レベルの知能への高給待遇、④先進国の生活レベルアップとそれを支える関連産業(サービス)など、多様な経路での実現が考えられる。それはこれからの挑戦であるが、明白なのは先進国景気拡大のエンジンが企業収益の拡大とその結果としての株高にあると言うことである。


グローバリゼーションのこれまでの展開を振り返ると明確な段階を経てきたことが、明らかとなる。第一段階は、米国の需要爆発と中国の経済離陸(2000年から2007年)。先進国、特に米国への資金集中と低金利により資産価格が上昇しバブル景気が現出され、中国は対米輸出急増により経済離陸を果たした。第二段階はバブル崩壊と新興国需要の急増(2007年から2011年)。米国のバブル崩壊が世界需要を急減させ、中国の財政出動・米国の超金融緩和が打ち出された。資金は新興国へと集中し、新興国の成長加速、バブル化、インフレ化、と推移してきた。そしてこれからは第三段階、先進国への回帰(2012年からの展開)が始まるのではないか。グローバリゼーションの果実の先進国への再配分により、先進国での新たな需要拡大循環に帰結するのではないか。


米国経済は雇用回復、住宅の底入れ、新インターネットビジネスの隆盛などにより持続的拡大の道筋が見えてきた。またドイツは金利低下、史上初めてのマイナス実質金利の下で、投資ブームが起きつつあり、欧州圏内での独り勝ちが鮮明である。


アジアでは、インフレ、バブル、格差拡大などのひずみが中国、韓国で見られる一方、日本経済の相対的優位性が浮上しつつある。2012年日本では、米国景気拡大に加えて、①震災、タイ洪水の後遺症消滅、②金融緩和、円安転換、デフレ鎮静化(その結果としての実質金利の低下)、③震災復興特需、などの景気押し上げ要因が働く。


我々は依然、グローバリゼーションの強い順風を受けているが、主役が転換しつつあることに注意するべきである。主役交代の背景に米・独・日の単位労働コストの長期にわたる抑制があることが重要であるが、その点は別の機会に説明する。


2011年2月10日 39号 米独日に吹くグローバリゼーションの順風