中本パックス 中本高志代表取締社長インタビュー

全天候型のグローバル展開目指す

●中本高志氏
中本パックス 代表取締社長

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 食品包装、IT・工業材、医療関連用途向けなどに、グラビア印刷を軸にラミネート、コーティング事業を展開する中本パックス<7811.T>の株価は、今年3月の東証2部市場への新規上場以降、順調な上昇を続けている。同社の事業内容と今後の経営戦略について、中本高志代表取締役社長に聞いた。

――経営理念として掲げる「人に、環境にやさしい企業をめざして~クリーン&セイフティー」についてお話しください

中本 当社は、グラビア印刷を基軸として、ラミネート加工、コーティング加工および成型加工の技術によりパッケージングのニーズに応えてきました。パッケージには、例えば食品を包んで、長時間・遠距離であっても新鮮で安全なままで消費者にお届けする使命があると同時に、輸送形態の迅速化や、コスト低減を図るという重要な役割を担っています。また、国際的には、新興国の飢餓問題解決に向けて役立つ可能性も秘めています。

 ただ、その一方では石化原料を使用することから、地球温暖化や環境汚染の問題もあるため、プラスチックのリサイクル技術をさまざまに開発・駆使して有効活用することにより、CO2(二酸化炭素)や廃棄物の削減への努力を続けています。また、当社の製造現場でも常にクリーン&セイフティーに配慮しています。

――「グラビア印刷技術」、「コーティング加工技術」について教えてください

中本 パッケージングでは印刷して美しく商品を訴求することが重要です。パッケージではグラビア印刷が主流で、薄いプラスチックフィルムに印刷して差別化を図る戦略をとっています。世界標準では、12~40ミクロンの薄さのフィルムに加工するのがほとんどです。当社もその範囲内の分野が多いものの、そのほかにスマートフォン(スマホ)関連の遮光フィルムや、食品関連のシュリンクフィルムといったより薄い2~10ミクロンの素材や、逆に400~700ミクロンといった、学用品の下敷きのような厚さのものにも印刷できる独自の高い技術力を背景に、参入障壁の高い分野を積極的に開拓しています。

 コーティングというのは、無色・透明な塗材を全面に薄くベタ塗りし、さまざまな機能を付与することです。用途では食品向けは少なく、モバイル機器関連、医療関連など圧倒的に工業用が主流です。この分野でも、ニッチで特殊なものをグローバルに展開していきます。また、印刷だけでなく、ヨーグルトやコンビニ弁当の蓋の成型も手掛けています。さらに、フィルムなど素材開発も推進しており、例えばハム・ソーセージ用パッケージフィルムでは、素材開発にも注力し特許を取得しています。このほか、PET容器のリサイクル(改質)技術や、耐熱食品容器の製造などで豊富な特許を取得しており、世界でもさまざまな展示会に関連商品を出品し高い評価を得ています。

食品包装からリチウムイオン電池部材まで

――食品、IT・工業材、医療・医薬品、建材、生活資材など各用途別の製品動向は?

中本 食品は全売上高のなかでも65%を占める主要部門で、さまざまな食品パッケージの印刷や容器の成型を手掛けています。30年くらい前は95%が食品用途だったものを、“全天候型経営”を目指し、複数の新たな事業の柱を作ろうということで、工業材料、メディカル、日用品など多くの柱を増やしていきました。全体が成長するなかで、食品分野の売上構成比率を50%にすることを目標としていますが、乳製品関係、コンビニ向け各種パッケージ、耐熱電子レンジ用容器などの分野が成長しており、食品向けも今期は前期比15%増程度の売上高の伸びが見込まれるなど成長が継続しています。

 IT・工業材は、スマホ、タブレット端末関連の表面保護フィルム、遮光・反射両面テープ、PET基材両面テープなどモバイル関連の部材が半分近くを占めています。次に多いのは、比較的高採算のリチウムイオン電池関連で、セパレーターの加工を手掛けており、競争は厳しいものの、成長分野として期待しています。さらに、自動車内装用品のヘッドライニング内のフェルトに使用される多層フィルムの需要が、米国などで順調な伸びをみせています。このIT・工業材の売上高構成比率は、将来的には25%くらいまで(前期実績は14%)拡大を目指します。

 医療・医薬は、安定した伸びが期待できる分野で、湿布薬向けの離型フィルムの売上高が70%以上を占めています。湿布用離型紙では、印刷と離型加工を手掛けていますが、医薬品だけに、製造工程でもクリーンな環境が求められ、きれいに剥がせるために高い技術力が必要とされます。さらに、輸液バッグの外側の包装材や口元のシール材も今後成長が期待できるアイテムのひとつです。クリーンな環境でなければ、製造許可が下りない分野であるだけに、そのメリットを生かしてグローバル展開を目指します。

 生活資材は、掃除機などで空気を吸引して使用する布団の圧縮袋関連が中心で、このほかにキッチンやバス、トイレ周りなどをより美しく補修したり機能を増やしたりするための“レディース向けDIY商品”を手掛けています。

“グローバル・ニッチ・コンバーター”を目指す

――今後の海外戦略について教えてください

中本 “グローバル・ニッチ・コンバーター”を目指しています。扱うのはニッチとされる分野ながらも、世界市場を意識して世界の巨大企業が欲しがるような特殊な技術を極める加工企業を目指します。製品自体は先進国で使用されるものが多く、中国で生産している製品は、半数は欧米に輸出されているのが現状です。近い将来での、米国現地生産スタートを念頭に準備を進めています。米国の生産拠点では、自動車向け内装材、リチウムイオン電池用部材、環境にやさしいポリエステルのリサイクル技術による、ポリエステル製の食品向け包装材料の製造が想定されます。

――中期経営計画や東証1部指定に向けての方針は?

中本 連結売上高経常利益率5%以上、連結ROE8%以上を継続できる企業を目指すという中期目標を公表しています。社内での毎年ローリングしながらの中期経営計画はありますが公表はしていません。信用力を増すことで有用な人材を確保することも株式上場の一つの重要なポイントです。新卒については、すぐに採用状況が急改善する効果は出ていませんが、ヘッドハンティングや中途採用については、上場の効果が発揮されてきています。もちろん、極力早いタイミングでの東証1部指定を目指して準備を進めています。

――今後の具体的な株主還元策について

中本 私は自分で投資する場合でも高い配当利回りに魅力を感じています。これだけ金利の安い時代が長期化するなかで、高い配当利回りの魅力は増していると思います。今期については、記念配当も含めると配当性向は40%以上となります。今後とも幅広い投資家層に向けて、当社の事業内容についてご理解いただくようにIR活動を積極化します。

――5年後、10年後に目指す「中本パックス」の姿について

中本 全天候型の経営体制をグローバルに展開することが目標です。欧州、米国、中国に向けて技術のコンバーターとして世界的に市場を構築していきます。また、例えば元の素材に完全にリサイクルすることが可能なポリエステルなどの素材について、地球環境に配慮した技術開発を推進していきます。

(聞き手・冨田康夫)

●中本高志(なかもと・たかし)
1948年生まれ。1971年4月住友スリーエム(現スリーエムジャパン)入社。1975年4月中本パックス入社、1979年管理部次長、1980年管理部担当取締役、1985年常務取締役、1990年専務取締役、1991年代表取締役社長に就任し現在に至る。

●中本パックス株式会社
http://www.npacks.co.jp/