豪ドル安に「誤解」はないか

豪ドル安に「誤解」はないか
豪ドル円は一時76円台と、最近の安値を更新してきました。ただ私は、豪ドル円も、すでに下落局面は行き過ぎた段階に入っており、いつ終わってもおかしくないのではないかと考えています。

豪州は5月に入ってから一気に0.5%の大幅利下げを行いました。これは、事前の一般予想以上の大幅利下げで、マーケットからすると「驚き」だったようです。予想以上に、金融緩和姿勢が強くなっていると受け止めた市場では、追加利下げ観測も広がったようです。
ところで、そんな豪州の政策金利は、失業率と一定の相関関係が続いてきました。そこで、豪州の政策金利と失業率のグラフを重ねてみたのが≪資料1≫です。そんな失業率は、5月に入ってから予想外に良い結果となりました。このため、≪資料1≫を見ると、失業率との関係からすると、豪州の0.5%利下げは「間違い」か、そうでなくとも追加利下げは難しくなったようです。

≪資料1≫

失業率も一回の結果だけではわからないので、今度は別な指標でも確認してみましょう。≪資料2≫は、中国の代表的な景気指標の一つであるPMI指数と豪州の政策金利を重ねたものです。

≪資料2≫

中国と豪州の取引関係が強いことから、豪ドルは中国の景気指標に敏感に反応することがよく知られていますが、確かに、こんなふうにみると、政策金利とも一定の相関関係が続いていることがわかります。
ただ、この≪資料2≫を見ても、5月の大幅利下げは、下げ過ぎのように見えなくありません。そうであるなら、さらなる利下げの可能性は、この≪資料3≫から見ても、難しいということになるのではないでしょうか。

 ≪資料3≫は、ヘッジファンドなどの取引を反映しているCFTC統計の豪ドル・ポジションです。これを見ると、今年の春にかけて、豪ドルが一時88円程度まで大幅高となる中で、豪ドルもかなり「買われ過ぎ」気味になっていたことがわかります。
 世界的に株高となり、リスクオンとされる相場が広がる中で、代表的な高金利通貨である豪ドルは、キャリー取引と呼ばれる運用でも最も買いを集めた可能性があったとみられました。当時の代表的なキャリー取引は、ユーロ売り・豪ドル買いといった見方もあったわけです。

≪資料3≫

 そんな豪ドル最大の魅力ともいえる高金利が、大幅利下げと、さらなる追加利下げ観測も残る中で大いに揺らいだことで、豪ドル買いを見直す動きが急拡大してきたようです。≪資料3≫を見ると、豪ドルのポジションは最近ではほぼニュートラルになりました。では、それでも豪ドル売りが続き、売り越しへ転落ということになるのでしょうか。
 ≪資料3≫は2008年以降の豪ドル・ポジションを見たものですが、その中で売り越しに転落したのは2008年秋から2009年春にかけての局面だけでした。リーマンショック後、いわゆる「100年に一度の危機」と呼ばれた局面です。
 こんなふうにみると、このCFTC統計で豪ドルが売り越しに転落するのは非常に珍しく、「100年に一度の危機」のような特殊な局面だったわけです。その意味では、今回豪ドルが大きく売り越し拡大に向かうかは、「100年に2度目の危機」にあるかかが問われているといった意味になるかもしれません。
 以上のようなことから、私は豪ドル売りがさらに一段と広がるというより、むしろすでに行き過ぎた段階に入っているのではないかと考えているわけです。