TOCOM金先物価格が上場来高値を更新、脱デフレ反映へ

FOMCメンバーからは改めて量的緩和に警戒感が示される
ドル/円相場は、89円水準まで値位置を切り上げる展開になっている。今週半ばには米金利低下圧力などを背景にドル買い・円売りポジションに調整が入ったが、その後は改めて日本銀行の物価目標に対する期待感が強まったこと、米金利が上昇に転じたことを受けて、上値を切り上げている。

政府と日銀が検討している政策提携の共同文書では、物価上昇率目標を「2%」と明記する方針が示された。本日(1月11日)付けの日本経済新聞1面に安倍首相のインタビュー記事が掲載されているが、その達成時期について「長期はあり得ない」として、時期を明記しなくても早期達成を求める考えを示している。加えて、4月8日に任期満了を迎える白川日銀総裁の後任人事については、「2%の物価安定目標、雇用最大化について日銀が決定的な役割を果たす考え方を十分に理解する方」としており、今後は脱デフレ・脱円高に向けて政府と日銀が共同歩調を強めることが予測される。

既にドル高・円安はオーバーシュートとの指摘もあるが、これから政策期待が着実に実行される歩みが継続すれば、2010年上期のレンジ90~95円水準を回復するのは難しくないだろう。22日の日銀・金融政策決定会合に向けて、期待を具体化する動きが、ドル/円相場をサポートする可能性が高い。

一方、10日夜にはセントルイス連銀のブラード総裁が講演を行ったが、現在7.8%の失業率が年末には7%前後となり、来年半ば頃には6.5%まで下がるとの見通しを示している。これは来年半ばにゼロ金利政策解除、今年後半には量的緩和の打ち止め・縮小が想定されることを示唆する内容になる。また、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は、過去最大規模の景気刺激策が金融不安定化とインフレリスクを招くことに警戒感を発している。

両総裁は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を有しており、今年はこのようなタカ派的な見方がFOMC内で勢力を強める流れが確実視される。今月29~30日のFOMCで直ちに政策変更が行われるような環境にはないが、声明文の修正などが行われると、改めて「米金利上昇→ドル高(円安)」と、ドルサイドからドル高・円安が促される可能性があることは認識しておきたい。来週にはベージュブックの発表も控えており、ここで楽観的な経済見通しが示される可能性にも、注意が必要である。

そして、安倍政権の脱デフレ・脱円高戦略が着実に進展する中、10日には東京工業品取引所の金先物価格が上場来高値を更新した。まだ過去最高値には到達していないが、金先物市場の歴史に残る動きであり、マーケットがいよいよ脱デフレシナリオに本腰を入れて対処し始めていることを象徴する動きと考えている。

ドル建て金相場を取り巻く環境は悪化しているが、金融緩和政策が「出口に向かう米国」と「入り口に向かう日本」という対比を考えると、円建て金相場の先行きは楽観視できる。仮にドル建て相場に大きな動きが無くても、93円前後までドル高・円安が進行すれば、東京金価格の5,000円台も現実的なターゲットになる。