光あるところに影がある

商品価格上昇なら、円安は波乱要因に
 輸出産業のメディアに対する力が強いのか、日本では円高悪玉論が根強いが、円安も円高も日本経済・国民にとっては、それぞれ一長一短がある。当然のことながら「光あるところに影がある」。

 日本は、エネルギー・食料の輸入国である。この10年間の資源価格を見ると、リーマンショック時に一時的な落ち込みを見せたものの、基本的には上昇トレンドが継続している。特にエネルギー・食料価格については、価格水準自体が大きく上方に変化している。中国・インドなどの人口大国・新興国の需要増大、世界的な金融緩和に伴う資金流入などが背景だが、日本国内において、この動きが実感しにくかったのは、まさに円高メリットだった。

 1998年8月に147円台、2002年2月には135円台であったドル円も、2011年10月には75円台まで、円高ドル安が進行した流れで、輸出産業のダメージは繰り返し大きく伝えられる一方、輸入産業のメリットが大きく取り上げられることは少なかった。

 今年はこの逆転現象が起きる可能性に注意したい。輸入産業のデメリットが表面化するリスクだ。昨年からの短期的なドル円の上昇もあり、日銀金融政策決定会合を受けて「知ったら終い」で一旦は調整に入るかもしれないが、中長期のトレンド系指標は、軒並み陽転(ドル高示唆)しており、テクニカル面からは押し目は買われやすい地合いだ。

 政府が考えるように通貨マーケットをコントロールできるなら良いが、世界的な金融緩和が続く中、円高も円安もオーバーシュートに動意付くリスクがある点を忘れてはいけない。本邦政府・日銀が通貨市場のトレンドを作れる・コントロールできるなどと傲慢に考えるのなら、いずれこっぴどい仕打ちをマーケットから受けるだろう。通貨市場は、個別株市場とは訳が違う。国内需給だけで語れる市場ではない。円安・株高で長く浮かれ続けていられるほどマーケットは甘くないだろう。足もとの商品価格(エネルギー・食料)は落ち着きを見せているが、穀物の世界在庫率は、昨年の米国の干ばつの影響もあり低水準だ。年が明けても世界各地で異常気象が報告される中、米国では今年も過去最高の高温となるNASA観測も出されている。昨年、不作だったロシアやウクライナによる小麦輸出禁止の可能性も、昨年から何度となく、穀物市場では懸念されている。「アラブの春」のきっかけは小麦価格の高騰であったが、食料価格の上昇は再び、中東・北アフリカ地域の地政学リスクの高まりにも通じよう。そうなればエネルギー価格も上方リスクが高まる。長期的には「シェールガス革命」がエネルギー価格水準を下げる可能性はあるものの、足もとは中東地区での地政学リスクが高まれば価格は上昇せざるを得ない。イランの核開発問題も協議に進展はなく、本日選挙を迎えるイスラエルも右派優勢との見方が強い。

 「円安・株高→給料高」となるには、かなりのタイムラグがあるが、「円安・商品(エネルギー・食料)高→末端価格高」となるのは、それほど時間がかからない。一部のお金持ちを除き、庶民レベルには円安デメリットの方が感じられやすくなるかもしれない。

 商品価格の高騰が円安と共に訪れるリスクが杞憂に終わればよいが、投資家は、円安メリットを享受できるような投資バランスを考えると同時に、仮に行き過ぎた円安や円高が来ても大丈夫なようにヘッジも一部では考えておくことが重要であろう。行き過ぎるのが相場である。