欧州リスク再浮上も、差し迫った危機はなし

円建て金相場は5,000円台乗せを達成
ドル/円相場は2月4日に93.18円まで上値を切り上げるも、足元では92円台前半までの調整局面になっている。スペインとイタリアの政情不安を手掛かりに欧州債務リスクを蒸し返す動きが活発化する中、円に対する買い戻し圧力が強くなっている。

スペインではラホイ首相の不正資金受領問題が急浮上している。ラホイ首相は疑惑を否定しているが、野党幹部は辞任を強く求めており、今後の展開次第では解散・総選挙にまで発展する可能性もある。これは、ラホイ首相の下で強力に推し進められてきた緊縮財政策の継続にも黄信号が灯ることを意味し、スペイン10年債利回りは一時5.5%台に乗せるなど、スペイン売りの動きが活発化している。こうなると、今月24~25日のイタリア総選挙の結果も警戒される所であり、欧州の政局リスクがクローズアップされている。

現段階では特に具体的に差し迫った危機がある訳ではなく、ギリシャのユーロ圏離脱やデフォルト(債務不履行)などが警戒されていた昨年前半とは、全く状況が異なっている。実体経済は必ずしも堅調とは言い難いが、少なくとも景気の底が見えない状況も脱している。ユーロ相場に関してはこれまでの加熱した買い圧力の反動から対ドルと円の双方に対して調整圧力が強まり易いが、本格的なユーロ安トレンドへの展開が促される状況とは考えていない。ユーロ高・円安是正の動きが、ドル/円相場に及ぼす影響は大きくないだろう。

月末のイタリア総選挙まで不安定な地合が続く可能性も否定できないが、欧州債利回り似対する上昇圧力が一服すれば、リスクオンの地合への回帰を判断しても良い。これまで楽観ムード一色の展開が続いてきたことを考慮すれば、適度のポジション調整を促す材料と好意的に評価したい。

1日発表の米1月雇用統計で、非農業部門就業者数が7ヶ月連続で10万人超の増加となり、1月ISM製造業指数が前月の50.2から53.1まで急伸するなど、米経済に対する信認回復の流れにも変化は見られない。米国では、一部の個人消費関連指標に不安定な動きが見られるが、昨年10~12月のマイナス成長からの回復見通しが修正を迫られる環境にはない。

15~16日に20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁を控えて、海外からの円安批判のリスクが警戒される。ただ、麻生財務相は「行き過ぎた円高」を修正する局面に過ぎず、「デフレからの早期脱却を目指すのが目的」の量的緩和政策に対する批判は当たらないとの見方を強調している。日本以外の諸外国も量的緩和政策を採用する中、現段階では外圧による円高プレッシャーは限定されよう。

ユーロ安圧力が一服すれば、ドル高・円安トレンドが修正を迫られる理由は見出せない。欧州債利回りの動向をみて、改めてドル買い・円売りを仕掛ける局面を探るステージになる。

一方、ドル建て金相場は1,650~1,700ドルをコアとしたボックス相場を継続している。1月29~30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文と1月米失業率上昇を受けて、当面の量的緩和政策の継続見通しは確認されている。ただ、実体経済の回復で緩和政策の停止・縮小・出口を巡る議論が活発化し易くなる中、明確な方向性を打ち出しづらくなっている。目先は、このままトレンド形成が困難な状況が続く見通し。

円建て金先物相場は高値が5,010円に達し、改めて上場来高値を更新した。ドル建て相場が方向性を欠く中、円安連動で上値を切り上げる展開が維持されている。足元では再び5,000円の大台を割り込んでいるが、こちらもドル/円相場同様に押し目買いのステージと考えている。